著者
中村 庄八 藤本 光一郎 中山 俊雄 方違 重治
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.122, no.8, pp.397-412, 2016-08-15 (Released:2016-09-02)
参考文献数
42

群馬県北西部の吾妻地域は日本海拡大時に形成された関東北部のリフト帯の縁辺部に位置し,中新世から現在に至る断続的な火山活動で特徴づけられている.日本海拡大以降の本州中央部の地質構造形成や火成活動を考えるうえで重要な地域と考えられる.本見学コースの吾妻川中・上流域では,中新世にはバイモーダルな海底火山活動が中心だが,鮮新世以降陸上の環境となって安山岩質からデイサイト質の火山活動が主体となった.しかし,地層の連続性が乏しく層理も明瞭でなく,変質作用を広汎に受けていることによって進まなかった地層の分布や層序の解明は近年になってようやく前進するに至った.また,本地域は長年にわたって議論されてきた八ッ場ダム建設地を含み,応用地質的にも興味深い地域である.本巡検においては,開析された火山体を構成する塊状の溶岩や火山砕屑岩を特徴づける鮮新世の八ッ場層と同時期ないしその一連の火山活動に関連した岩脈・貫入岩体および酸性変質帯を,また,前期更新世に新たに活動を開始した菅峰火山を構成する火山岩,さらに,後期更新世に浅間火山の活動により流下した応桑岩屑なだれ堆積物,草津白根火山の熱水活動により形成された殺生河原の変質帯の見学を行う.
著者
安藤 一男 方違 重治
出版者
The Tohoku Geographical Association
雑誌
季刊地理学 (ISSN:09167889)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.231-246, 1997-12-01 (Released:2010-04-30)
参考文献数
21
被引用文献数
6 8

ボーリングコアの珪藻分析, 14C年代測定および柱状図の解析結果に基づいて, 荒川低地上流域の古環境変遷を復元し, 縄文海進期の内湾最拡大期における海岸線付近の地形環境について検討した。本地域において最終氷期最盛期頃, 埋没立川段丘面を切り込んで谷幅2.5~3.5kmの埋没谷が形成され, その後, BGを基底として淡水成堆積物の形成が進行した。8,600y. B. P. を過ぎる頃から, 当地域は内湾化し海岸線が最も奥部に達したのは8,300y. B. P. 頃である。しぼらくこの状態が続いた後, 徐々に内湾の埋積が進み, 6,300~5,500y. B. P. 頃には当地域の陸化は完了した。珪藻遺骸群集に基づいて求められた内湾最拡大期の海岸線は, 荒川低地左岸の大宮台地側では台地に刻まれた支谷へ深く入り込んで位置していたのに対し, 右岸の武蔵野台地側では, 流入する入間川, 小畔川, 越辺川の影響により淡水域が広く分布することにより海岸線は低地中央付近に位置していた。このことは大宮台地の平方貝塚群がヤマトシジミ, カキ, ハイガイ, ハマグリを産出するのに対し, 武蔵野台地の小仙波貝塚は主淡であることとも調和的である。