著者
余村 朋樹 施 桂栄 作田 博 彦野 賢
出版者
公益財団法人大原記念労働科学研究所
雑誌
労働科学 (ISSN:0022443X)
巻号頁・発行日
vol.89, no.5, pp.166-173, 2013 (Released:2015-05-25)
参考文献数
16
被引用文献数
1

しばしば繁忙感はヒューマンエラーの一因として指摘される。しかし,繁忙感に影響を与える要因については明らかになっていない。そこで本研究では,組織環境下の従業員の繁忙感に影響を与える要因とその相互関係について明らかにすることを試みた。その結果,繁忙感に影響を与えるのは,主観的業務量,業務の重複度合い,情報量といった業務の発生状況から成る 「業務密度感」 と,業務に対する能力不足感や業務全体の不可視性から構成される 「不能感」 と,グループ内の支援状況から組成される 「低支援性」 であることが示された。さらに,繁忙感に直接的かつ大きく影響を与えるのは 「業務密度感」 で,「不能感」 や 「低支援性」 は 「業務密度感」 を介して繁忙感に影響を与えていることが明らかとなった。 (図2,表6)
著者
施 桂栄
出版者
関東学院大学経済経営学会
雑誌
経済系 = Kanto Gakuin journal of economics and management : 関東学院大学経済経営学会研究論集 (ISSN:02870924)
巻号頁・発行日
vol.273, pp.58-69, 2018-03

本研究では,1990年代に生まれた日本と中国の大学生を対象とし,それぞれの心理的環境(測定項目:孤独感,自尊心,自己開示)と社会的行動(測定項目:対人信頼感,集団主義,向社会行動)について質問紙を用い比較的な調査を行った。日本人大学生152名と中国人大学生236名が本調査に参加した。分析の結果,(1)心理的環境:「孤独感」においては,日中大学生の間に顕著な差が見られなかったが,両方ともやや高かった。「自尊心」と「自己開示」においては,日本人大学生よりも中国人大学生の方が自分の能力や価値を高く評価し,現実的な自己に関する情報を多く提供することが検証された。(2)社会的行動:「対人信頼感」においては,日中大学生の間に顕著な差がなかったが,両方とも低かった。「集団主義」では,中国人大学生が日本人大学生よりも顕著に高かった。中国人が「個人主義的」,日本人が「集団主義的」という従来の主張と異なって逆の結果となっている。また,「向社会的行動」では,日本人大学生と比べ,中国人大学生の方が他者を助ける意欲が強いと見られたが,両方とも評価得点がやや低かった。今後,日中両国の社会や経済,文化など多様な視点からその背景的影響要因を検証することが必要となるだろう。