著者
日本集中治療医学会J-PADガイドライン検討委員会
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.150-158, 2020-03-01 (Released:2020-03-01)
参考文献数
5
被引用文献数
1 1

「日本版・集中治療室における成人重症患者に対する痛み・不穏・せん妄管理のための臨床ガイドライン(2014年)」公表後のわが国の集中治療領域における痛み・不穏・せん妄管理の現状を明らかにすることを目的として,2016年1月に日本集中治療医学会会員を対象にアンケート調査を実施し,今回,2019年3月に2回目の実態調査を実施した。調査の結果,ガイドラインの認知度・活用度は高かったが,同職種内での周知度は低迷していた。ガイドラインの推奨項目については,実施率の増加が確認できたが,さらに周知度や遵守率を高めるため,ガイドラインの周知活動の継続,組織内でガイドラインの教育・普及を推進できる人材への支援活動の充実が今後の課題である。
著者
日本集中治療医学会集中治療CE検討委員会
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.139-148, 2019-03-01 (Released:2019-03-01)
参考文献数
3
被引用文献数
1 1

2014年の診療報酬改定以降,集中治療室(ICU)に関わる臨床工学技士(clinical engineer, CE)が増加している。そこで,CEのICUにおける業務成果を把握するため,医師・看護師からCEの評価を受ける形式で調査を行った。血液浄化・体外循環・人工呼吸の生命維持管理装置を安全に迅速に実施すること,医療機器のトラブル対応・インシデント発生軽減・不安軽減にどの程度CEが貢献しているか,CEの業務に満足しているかを調査した。その結果,CEがICUに常駐する・夜勤を行うなど,ICUに長く関わるほど貢献度・満足度ともに高く評価された。このことによりCEがより深くICU業務に関わることが,ICUにおける治療の質の向上や安全確保に成果を上げることにつながると考える。
著者
日本集中治療医学会JRC蘇生ガイドライン2015 ALS部門作業部会
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.151-183, 2017-03-01 (Released:2017-03-16)
被引用文献数
3

成人心拍再開後の集中治療および予後評価における改訂の要点(学会担当分)を示す。心拍再開後の集中治療【呼吸管理】酸素化に関して,低酸素症の回避を推奨し,高酸素症の回避を提案する。また,心拍再開(return of spontaneous circulation, ROSC)後,動脈血酸素飽和度または動脈血酸素分圧が確実に測定されるまでは100%吸入酸素濃度の使用を提案する。PaCO2に関してバンドル治療の一部としてPaCO2を生理的な正常範囲内に維持することを提案する。【循環管理】バンドル治療の一部として循環管理の目標(例:平均血圧,収縮期血圧)設定を考慮することを提案する。【体温管理療法】ROSC後に刺激に反応がない場合は,体温管理療法の施行を推奨/提案し,体温管理療法を行わないことには反対する。体温管理療法は,初期ECG(electrocardiogram)波形が電気ショック適応の院外心停止に対しては推奨し,初期ECG波形が電気ショック非適応の院外心停止および全ての初期ECG波形の院内心停止に対しては提案する。体温管理療法施行時には,32~36℃の間で目標体温を設定し,その温度で一定に維持することを推奨する。体温管理療法を施行する場合は,維持期間を少なくとも24時間とすることを提案する。ROSC直後,急速な大量冷却輸液による病院前冷却をルーチンには行わないことを推奨する。体温管理療法終了後も昏睡状態が遷延している場合は発熱を防止し治療することを提案する。【てんかん発作の管理】てんかん発作の予防をルーチンには行わないことを提案する。てんかん発作の治療を推奨する。【血糖管理】標準的血糖管理プロトコルを変更せず適応することを提案する。 予後評価【低体温による体温管理療法が施行されたROSC後昏睡患者の予後評価】ROSC後72時間以前に臨床所見のみで予後を評価しないよう提案する。鎮静や筋弛緩の残存が疑われる場合は,臨床所見を継続して観察することを提案する。 それにより予後評価の偽陽性を最小化することができる。単一の検査または所見のみを信用することなく,多元的な検査(臨床所見,神経生理学的な手法,イメージング,あるいは血液マーカー)を,予後評価のため使用することを提案する。予後不良を評価するには,ROSCから少なくとも72時間以後において,両側対光反射消失,もしくは両側の瞳孔および角膜反射消失を使用することを推奨する。予後不良を評価するためにROSCから少なくとも72時間後に計測された短潜時体性感覚誘発電位(short latency somatosensory evoked potential, SSEP)のN20波の両側消失を使用することを推奨する。予後不良を評価するために,BIS(bispectral index)の使用を避けるように推奨する。【体温管理療法を施行していないROSC後昏睡患者の予後評価】ROSC後72時間以降における対光反射消失を予後不良の評価に用いることを推奨する。ROSC後から72時間以内でのSSEP N20波の両側消失を,予後不良の評価に用いることを推奨する。
著者
日本集中治療医学会社会保険対策委員会
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.431-434, 2013-07-01 (Released:2013-08-09)
参考文献数
5
被引用文献数
1 2

日本集中治療医学会社会保険対策委員会は,診断群分類に基づく診療報酬支払制度における関連データを用いてICUの収入と原価を算出比較し,現在の診療報酬制度の下では基本的に原価割れ状態にあることを明らかにしてきた。今回,生命維持装置(人工呼吸器,血液浄化装置)の使用の有無ならびにICU在室日数に着目して比較検討した。その結果,本邦では特定集中治療室入室患者の約9割が7日以内に退室し,在室日数が長いほど支出超過が増大すると共に,生命維持装置を用いた診療の有無がICU収支の原価割れに大きく影響していることが判明した。今後は本邦における特定集中治療室の層別化に加え,診療プロセスの視点を含めたより適正な診療報酬体系を構築する必要がある。
著者
日本集中治療医学会危機管理委員会
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.119-125, 2011-01-01 (Released:2011-07-20)
参考文献数
2
被引用文献数
1 2

各施設の集中治療室における災害に対する対応について,調査を行った(2009年8月時点)。その結果,以下の点が明らかとなった。(1)停電,水,ガスなどのライフラインの備えは,多くの施設で取られている。(2)地震などに備えた医療機器の固定設置,蘇生用具の準備もなされている。(3)災害時の指揮命令系統は,ほとんどの施設でマニュアル化されている。しかし,周知徹底されているかは不明である。(4)ICUに特化したマニュアルを作成している施設は少なく,また,災害訓練を行っている施設は半分に満たない。(5)インフルエンザ・パンデミックなどの危機的感染症に対しては,今後,対策を練るべく議論する必要があると思われた。
著者
日本集中治療医学会倫理委員会
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.216-226, 2017-03-01 (Released:2017-03-16)
被引用文献数
1

生命維持治療に関する医師による指示書(Physician Orders for Life-sustaining Treatment, POLST)は,事前指示の長い実践経験の延長上に米国で提唱された概念であり,指示内容に心停止時に心肺蘇生をしないDo Not Attempt Resuscitation(DNAR)を包含している。日本集中治療医学会倫理委員会は,DNAR指示の誤解と誤用が多い本邦においてPOLSTに基づくDNAR指示が可能かについて検討を加えた。POLST運用基盤は本邦では脆弱であり,急性期医療領域で合意形成がないPOLSTを検証なく導入し運用することに危惧がある。DNAR指示の正しい理解と運用が先決案件であり,現時点でPOLST(DNAR指示を含む)の使用は推奨できないと結論した。
著者
日本集中治療医学会Sepsis Registry委員会
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.329-334, 2013-04-01 (Released:2013-05-14)
参考文献数
2
被引用文献数
2 6

日本集中治療医学会Sepsis Registry委員会は,日本集中治療医学会認定集中治療専門医研修施設に重症敗血症および敗血症性ショックに罹患した患者の登録を依頼し,第1回Sepsis Registry調査として,2007年10月1日より12月31日までの調査期間に47施設からのエントリーを得た。登録症例総数は305例であり,そのうち基本情報の整った解析可能な症例で,重症敗血症および敗血症性ショックと評価できた266例を抽出した。登録症例として,内科領域より66例,外科領域より58例,救急領域として142例がエントリーされ,平均年齢は67歳,男女比率は170例/96例だった。主な感染部位は,腹腔内感染症が85例,カテーテルを含む血流感染症が42例,尿路感染症が22例,軟部組織感染症が27例だった。重症敗血症および敗血症性ショックを惹起した起炎菌は上位から,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌41例,Esherichia coli 36例,Klebsiella pneumoniae 28例,Pseudomonas aeruginosa 28例,メチシリン感受性黄色ブドウ球菌24例であり,初期起炎菌としての真菌検出例はCandida albicans 4例とCandida non-albicans 6例だった。ICU入室日のAcute Physiology and Chronic Health Evaluation(APACHE)IIスコアとSequential Organ Failure Assessment(SOFA)スコア(平均±標準偏差)は20.3±9.9と8.5±4.7であり,急性期disseminated intravascular coagulation(DIC)診断基準に準じたDICを126例(47.4%)に認め,このICU死亡率は77例(61.1%)だった。敗血症性ショック145例(54.5%)のうち,early goal-directed therapy(EGDT)が施行されたものは42.1%だったが,ICU死亡率は非EGDT達成群の42.9%に比較してEGDT達成群で26.2%と有意に低かった。また,経腸栄養の併用は101例(38%)に認められ,APACHEIIスコアは非経腸栄養群の19.5±4.7と経腸栄養群の21.8±9.9に差を認めなかったが,経腸栄養によりICU死亡率が35.1%から23.7%へ,院内死亡率が43.0%から28.7%へ有意に低下していた。今回解析された266例の重症敗血症および敗血症性ショック全体の治療成績は,ICU死亡率30.8%,28日死亡率36.4%,院内死亡率37.6%だった。以上のように,第1回Sepsis Registry調査では,重症敗血症および敗血症性ショックにおける経腸栄養,および敗血症性ショックにおけるEGDT施行と生命予後改善の関連が示唆された。
著者
日本集中治療医学会集中治療の労働力調査プロジェクトワーキンググループ 日本集中治療医学会専門医制度委員会
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.205-212, 2014-03-01 (Released:2014-03-19)
参考文献数
10

【目的】集中治療専門医試験受験者において合否と関連ある要因を探索する。【方法】専門医試験(2008~2012年)の343人の出願書類から,受験者の合否・性別・年齢・所属(施設と部門)・他学会の専門医資格・研修分野と期間の情報を収集し,多重ロジスティック回帰分析により合否に関連する要因を探索した。【結果】試験合格率は90.2%で,合格者は男性91.8%,平均39.2(SD 6.2)歳,大学病院勤務53.8%,所属(集中治療27.1%,麻酔31.0%,救急32.3%),麻酔専門医43.0%,平均研修期間5.2年(集中治療1.9年,麻酔1.0年,救急2.0年)であった。合格オッズは研修した分野(集中治療・麻酔・救急)やその期間とは関連していなかった。外科系研修期間(OR=0.08,P=0.01)と外科系専門医資格(OR=0.12,P<0.01)は合格を遠ざける有意な因子であった。