著者
卯野木 健 林田 敬 河合 佑亮 對東 俊介 安藤 守秀 飯田 有輝 笠井 史人 川崎 達也 神津 玲 近藤 豊 齊藤 正和 櫻本 秀明 佐々木 信幸 佐浦 隆一 中村 謙介 大内 玲 岡本 菜子 岡村 正嗣 栗原 知己 栗山 明 松石 雄二朗 山本 憲督 吉廣 尚大 矢坂 泰介 安部 諒 飯塚 崇仁 井上 拓保 内山 侑紀 遠藤 聡 大倉 和貴 太田 浩平 大塚 貴久 岡田 大輔 小幡 賢吾 片山 雪子 金田 直樹 北山 未央 喜納 俊介 草葉 隆一 桑原 政成 笹沼 直樹 高橋 正浩 髙山 千尋 田代 尚範 立野 淳子 田村 貴彦 田本 光拡 土谷 飛鳥 堤 悠介 長門 直 成田 知大 名和 智裕 野々山 忠芳 花田 匡利 平川 功太郎 牧野 晃子 正木 宏享 松木 良介 松嶋 真哉 松田 航 宮城島 沙織 諸見里 勝 柳 尚弥 山内 康太 山下 遊平 山本 夏啓 劉 啓文 若林 侑起 渡辺 伸一 米倉 寛 中西 信人 高橋 哲也 西田 修 日本集中治療医学会集中治療早期リハビリテーション委員会
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.30, no.Supplement2, pp.S905-S972, 2023 (Released:2023-12-10)

重症患者に対する標準化された質の高いリハビリテーションの提供は,取り組むべき重要課題である。日本集中治療医学会では,2017年に「集中治療における早期リハビリテーション ―根拠に基づくエキスパートコンセンサス―」を発行したが,系統的にエビデンスを評価したものではなく,あくまでも専門家のコンセンサスに基づくものであった。そこで,日本集中治療医学会では,質が高く,かつ,医療従事者が理解しやすく,その意思決定に資することを目的に,システマティックレビューおよびGRADE(grading of recommendations, assessment, development and evaluation)アプローチを用いた診療ガイドラインを作成した。 重症患者に対するリハビリテーションに特化し,かつ,GRADEアプローチを用いた診療ガイドラインとしては,世界初の試みである。本ガイドラインは日本集中治療医学会集中治療早期リハビリテーション委員会を核に,ワーキンググループ,システマティックレビュー班,アカデミックガイドライン推進班から構成された診療ガイドライン作成グループの合計73名からなるメンバーで作成した。リハビリテーションでは多職種連携が非常に重要であることはいうまでもない。本ガイドラインも多職種,かつ多様な専門分野を持つ医師や医療従事者,ICU患者経験者を含む多くのメンバーが作成に寄与した。 本ガイドラインでは,グループメンバーによる議論に基づいて,8領域を注目すべき臨床重要領域とした。その上で,各領域から重要な14の臨床疑問(clinical question, CQ)を作成した。 パブリックコメントの募集を計2回行い,CQに対する回答としては,10のGRADEによる推奨,4つの背景疑問の解説が示された。また,CQごとに情報を視覚的診療フローとして作成し,各CQの位置付けがわかりやすいように配慮した。多職種が関与する重症患者に対するリハビリテーションにおいて,本ガイドラインが活用されることを期待する。
著者
一般社団法人日本集中治療医学会/一般社団法人日本呼吸器学会/ 一般社団法人日本呼吸療法医学会ARDS診療ガイドライン作成委員会
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.295-332, 2022-07-01 (Released:2022-07-22)
参考文献数
7

日本集中治療医学会/日本呼吸器学会/日本呼吸療法医学会ARDS診療ガイドライン作成委員会は,今回,合同で『ARDS診療ガイドライン2021』を作成した。2016年版の診療ガイドラインでは,成人のみを対象とした臨床課題(clinical question: CQ)を取り上げたが,今回は成人の46のCQに加えて小児を対象とした15のCQも作成した。前回と同様,GRADE(Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation)システムを用いた推奨度決定の手法を用いた。また,新たな手法として診断精度のメタ解析およびネットワークメタ解析を用いたシステマティックレビュー(systematic review: SR)も行った。これらにより,より充実した信頼性の高い実用的な診療ガイドラインを作成することができた。
著者
日本集中治療医学会重症患者の栄養管理ガイドライン作成委員会
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.185-281, 2016-03-01 (Released:2016-03-18)
参考文献数
667
被引用文献数
28

本ガイドラインは,2012年10月に発足した日本集中治療医学会重症患者の栄養管理ガイドライン作成委員会が作成した。海外では重症患者を対象とした栄養管理ガイドラインが複数存在するが,本邦には存在しない。そこで,国際ガイドラインでは言及されないが本邦で行われている治療,海外では行われているが本邦には存在しない治療なども考慮し,本邦の臨床に適応した推奨を提示した。各推奨作成にあたって,既存のシステマティックレビューとメタ解析,国際ガイドラインの推奨を流用することが可能かを検討し,必要であればシステマティックレビューを行った。なお,栄養管理が生命予後を左右することから,本ガイドラインの名前に「栄養管理」ではなく「栄養療法」を用いた。本ガイドラインは本邦初の重症患者を対象とした栄養療法ガイドラインであり,臨床の現場で適切に活用されることを期待している。
著者
日本集中治療医学会集中治療における薬剤師のあり方検討委員会
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.244-247, 2020-05-01 (Released:2020-05-01)
参考文献数
24
被引用文献数
1

2007年に厚生労働省より「集中治療室(ICU)における安全管理指針」が公表され, ICUにおける薬剤師の活動に期待が寄せられた。しかし,現状のICUにおける薬剤師の業務は,各医療機関の機能や運営体制,人員配置などにより多彩である。 ICUの患者管理では,多くの薬剤を必要とし,薬物治療も複雑になる。したがって,ICUの薬剤師には,薬学の専門家としての知識やスキルを活用することにより,薬剤師の観点から総合的に患者の薬物治療を評価し,投与計画の立案を行い,効果と副作用をモニタリングすることが求められる。この度,日本集中治療医学会集中治療における薬剤師のあり方検討委員会は,「集中治療室における薬剤師の活動指針」をとりまとめた。本指針は,ICUにおける薬剤師業務の標準化が推進することを目的とし,本内容を参考とすることで,薬剤師がチーム医療の一員としてICUの患者管理に貢献できることを目標としている。
著者
日本集中治療医学会重症患者の栄養管理ガイドライン作成委員会
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.24, no.5, pp.569-591, 2017-09-01 (Released:2017-09-21)
参考文献数
178
被引用文献数
2

日本集中治療医学会の重症患者の栄養管理ガイドライン作成委員会は,総論的なクリニカルクエスチョン(CQ)とその推奨で構成した「日本版重症患者の栄養療法ガイドライン」を2016年3月に発刊した。重症患者では臓器障害や病前合併症の状況に応じて,特殊な急性期栄養療法を要する場合も少なくない。その後,これらの個々の状況における栄養療法を行う際の臨床的補助となることを目的に,病態別のCQの立案とその推奨の作成を行い,「日本版重症患者の栄養療法ガイドライン:病態別栄養療法」を作成した。本ガイドラインで対象とした特殊病態は以下のいずれかの条件に合致するものとした。1)国際ガイドラインでは言及されない治療が本邦で行われている病態(急性膵炎,中枢神経障害),2)国際ガイドラインで言及されている治療が本邦では一般的に行われていない病態(呼吸不全,急性腎障害,急性膵炎),3)国際ガイドラインで対象とされている患者群が本邦の一般的な患者群とは異なる病態(高度肥満),4)一般的な栄養療法を適応できない病態(肝不全),5)本邦の臨床現場で栄養療法の理解に混乱が見られる病態(呼吸不全,急性膵炎)。上記より,本委員会は,呼吸不全,急性腎障害,肝不全,急性膵炎,中枢神経障害,高度肥満の6病態を取り上げ,本邦の臨床に適応したCQを立案し,推奨を策定した。各推奨作成にあたっては,「日本版重症患者の栄養療法ガイドライン」と同様に,既存のシステマティックレビュー(SR)と国際ガイドラインの推奨を検証し,新規のSRおよびメタ解析の必要性を検討した。本ガイドライン作成においては,いずれのCQでも新規のSRを行う必要はなかった。本ガイドラインは,本邦初の重症患者を対象とした栄養療法ガイドラインとして先行刊行した「日本版重症患者の栄養療法ガイドライン」の補遺として捉えていただき,併せて臨床の現場で広く適切に活用されることを期待している。
著者
垣花 泰之 松田 兼一 西村 匡司 日本集中治療医学会専門医制度・審査委員会
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.39, no.7, pp.679-683, 2019-11-15 (Released:2019-12-17)
参考文献数
2
被引用文献数
1

新専門医制度による基本領域専攻医の専門研修が2018年4月に日本専門医機構の下で開始となった.日本集中治療医学会は,麻酔科と救急科の2つの基本領域のサブスペシャルティであり,2021年の開始に向けて準備を進めている.新しい専門医制度では集中治療専門医は麻酔科,救急科のサブスペシャルティとなっているが,決してこれだけの診療科に限定されるべきではなく,今後,他の専門医のサブスペシャルティにもなるべく関連学会や日本専門医機構の理解を求めていく必要がある.
著者
厚生労働科学研究費補助金(新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究事業)「新興・再興感染症のリスク評価と危機管理機能の実装のための研究」分担研究班 日本COVID-19対策ECMOnet(日本集中治療医学会日本呼吸療法医学会日本救急医学会)
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.27, no.6, pp.447-452, 2020-11-01 (Released:2020-11-01)
参考文献数
34
被引用文献数
3

2019年に発生した新型コロナウイルス疾患(coronavirus disease 2019, COVID-19)により急性呼吸不全を呈する重症患者管理の根幹は,呼吸機能低下に対する支持療法としての人工呼吸と体外膜型肺(extracorporeal membrane oxygenation, ECMO)である。COVID-19患者数が増加していることを踏まえ,臨床現場での参考となりうるECMOに関する標準的なケアの概要を,専門家のコンセンサスステートメントとして提案した。ECMO管理のための適応,管理方法および注意点を,資源制約のある場合を含めて記載した。
著者
日本集中治療医学会J-PADガイドライン作成委員会
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.21, no.5, pp.539-579, 2014-09-01 (Released:2014-09-17)
参考文献数
333
被引用文献数
1 33

本ガイドラインは,それまで日本集中治療医学会規格・安全対策委員会(当時)で進行中であった作業を引き継ぐ形で,2013年3月に発足したJ-PADガイドライン作成委員会が作成した,集中治療室における成人重症患者に対する痛み・不穏・せん妄管理のための臨床ガイドラインである。その作成方法は米国で作成された「2013 PAD guidelines」に準じているが,内容は「2013 PAD guidelines」以降の文献の検討をも加えたばかりでなく,人工呼吸管理中以外の患者に対する対応や身体抑制の問題なども含み,さらに,重症患者に対するリハビリテーションに関する内容を独立させて詳述するなど,わが国独自のものも多い。わが国の集中治療領域の臨床現場で,本ガイドラインが適切に活用され,患者アウトカムの改善に寄与することが期待される。
著者
日本集中治療医学会集中治療PT・OT・ST委員会 集中治療に従事する理学療法士等の能力要素検討ワーキンググループ
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.237-254, 2021-05-01 (Released:2021-05-01)
参考文献数
28
被引用文献数
1

要約:日本の集中治療領域で働く理学療法士(physical therapist, PT)のためのミニマムスタンダード(MS)を合意形成することを目的として,集中治療に関して十分な経験を持つPT,医師,および看護師(それぞれ54名,44名,42名)を対象に,修正Delphi法を用いた調査を実施した。調査項目は,集中治療に関する潜在的な知識と技術272項目とし,すべての項目について,集中治療領域で働くPTのMSとして“必須である”,“必須でない”,“わからない”のいずれかで回答するように求めた。3職種のそれぞれにおいて70%以上が“必須である”と回答した項目をMSに合意したとし,PTのみ合意の場合は,MSの予備的項目として合意したと定義した。MSとして合意されたのは141項目,MSの予備的項目として合意されたのは58 項目であった。本調査で合意形成されたMSは,集中治療に関わるPTの質を担保し,チームでの診療を円滑かつ効果的なものにすると考えられる。
著者
日本集中治療医学会倫理委員会
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.210-215, 2017-03-01 (Released:2017-03-16)
被引用文献数
1 2

Do Not Attempt Resuscitation(DNAR)の概念形成から約半世紀を経たが,いまだにその誤解と誤用が大きな問題になっている。日本集中治療医学会倫理委員会は,世界と本邦におけるDNAR指示の歴史と経緯を学び,その考え方を理解・把握して日本集中治療医学会会員諸氏に正しく伝えることを企画した。DNARは心停止時に心肺蘇生を行わない指示であり,ICU入室を含めて酸素投与,栄養・輸液,鎮痛・鎮静薬,抗不整脈薬,昇圧薬,人工呼吸器,血液浄化法など,通常の医療・看護内容に影響を与えてはいけない。倫理委員会は,本報告に基づきDNAR指示が正しい対象に正しい方法で運用されることを期待する。
著者
日本集中治療医学会理事会 日本集中治療医学会レジリエンスの高い医療提供体制構築タスクフォース
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.29, no.5, pp.485-492, 2022-09-01 (Released:2023-02-17)
参考文献数
21
被引用文献数
1

我が国の集中治療医療提供体制を強靭化するために,以下の6つの項目について提言する。①有事の際に速やかに集中治療医療提供体制を確立できるように,診療報酬や人員配置の取り決めを事前に計画し,ICU使用状況のモニタリングデータに基づいた集中治療医療提供体制の弾力的な運用を行う。それには国家・行政による的確かつ迅速な対応と専門家との連携が必須である。②国家の危機管理として,集中治療医療の担い手の分布および整備の実態を把握することは,極めて重要であり,集中治療科を診療科として認め,政府による医療施設調査の対象科とすべきである。③平時より質の高い集中治療医療を提供し,有事における医療崩壊を防ぐためには,集中治療科専門医を国が認める専門医として計画的に養成することが重要である。また,いざという時の予備役として,平時には一般診療科医として働きながらも,一定レベルの人工呼吸管理などを含む重症患者管理を行うことができる医師を養成するシステム(認定制度など)の確立が必要である。④看護師および臨床工学技士の育成・認定プログラムを制定し,急激な集中治療医療の需要増加に備えるべきである。⑤集中治療科医による集中治療医療提供を効率的に行うため,平時より広域集中治療搬送システムとIT技術を駆使した遠隔ICUによる診療支援を推進する。⑥集中治療医療は,救急・周術期管理・重症病態の管理など守備範囲が広く,集中治療医療提供体制の充実と維持は,医療提供体制全般に関わる問題である。「集中治療医療対策室」を独立した組織として厚生労働省内に設置し,集中治療医療提供体制を充実させるための,ハコ・ヒト・モノに関わる様々な問題に対応し,計画的な整備を行っていく必要がある。
著者
日本集中治療医学会小児集中治療委員会日本小児集中治療連絡協議会COVID-19 ワーキンググループ 日本集中治療医学会小児集中治療委員会
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.177-180, 2022-03-01 (Released:2022-03-15)
参考文献数
11

日本集中治療医学会小児集中治療委員会日本小児集中治療連絡協議会COVID-19ワーキンググループは,新型コロナウイルスの国内流行のいわゆる第5波で,その初期の段階で20 歳未満の患者数が増加していることを把握した。小児科学会との協力体制のもと,小児重症・中等症例発生状況をまとめた。登録症例数は46例。COVID-19肺炎は20例であり,その他の入室理由が過半数を占めた。また,重症症例の診療体制について整理した。
著者
日本集中治療医学会PICS対策・生活の質改善検討委員会
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.165-176, 2022-03-01 (Released:2022-03-15)
参考文献数
12
被引用文献数
2

【目的】Post-intensive care syndrome(PICS)対策としてのICU退室後のフォローアップに関する実態を明らかにする。【方法】2021年5月7~31日に日本集中治療医学会会員が勤務するICUを対象とし,インターネット上での調査を実施した。【結果】110ユニットのICU のうち,75.5%でPICSという用語や疾患概念が周知・使用され,89.1%で早期リハビリテーションが実施されていたが,55.5%でPICSに関する評価が実施されていなかった。ICU退室先の部署への訪問,PICS外来,退院後の医療機関などへの病院からのPICSに関する情報提供の実施率は,それぞれ32.7%,3.6%,19.1%であった。これらの実施の主な障壁として,マンパワーやPICSに関する知識,組織の理解,診療報酬があった。【結論】ICU退室後のフォローアップの実施率の低さが明らかになった。実施の推進のためには,ICUはもとより,あらゆる医療機能へのPICSに関する啓発強化,エビデンス蓄積の上,診療報酬の評価などを通した医療資源の確保が必要である。
著者
日本集中治療医学会危機管理委員会
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.191-201, 2023-05-01 (Released:2023-05-01)
参考文献数
4

多発する自然災害や新型コロナウイルス感染症の流行により,多数の重症患者が同時に発生する危険性が高まっている。日本集中治療医学会の危機管理委員会は,ICUの災害対応の指針とするべく「災害時の集中治療室 日頃の準備から発災後まで─ICU対応ガイダンス」を2020年に発刊した。しかし,本邦のICUでの災害準備体制や,実際の多数患者発生時の対応状況は明らかでない。今回我々は,本邦のICUでの災害に対する準備状況や,東京オリンピック・パラリンピック期間中の新型コロナウイルス感染症による多数患者発生時に全国のICU が行った対応を調査するために,アンケート調査を行った。その結果,災害準備としての,段階的なサージ・キャパシティの設定,ICU拡張や複数ICUの統合運用の計画,災害時のICU 入退室基準の設定,ICU以外の職員の応援体制の確立など,多くの項目で不十分である現状が明らかになった。さらに,多数患者発生時の,ICU拡張や統合運用,入退室基準の変更などの施行率は低く,柔軟な対応の難しさと,事前準備の重要性が改めて示唆された。
著者
日本集中治療医学会臨床倫理委員会
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.231-243, 2020-05-01 (Released:2020-05-01)
参考文献数
5
被引用文献数
1

日本集中治療医学会(以下,本会)臨床倫理委員会は,本会の正会員のうち看護師免許を有する者を対象に,集中治療領域においてDo Not Resuscitate(Do Not Attempt Resuscitation)〔以下,DNR(DNAR)〕の正しい理解と治療の開始・不開始,差し控え,中止の状況や,看護師の意識が2016年の調査結果1)と比較して,どのように変化したかを明らかにするためにアンケート調査を実施した。DNR(DNAR)の教育を受けたと回答した割合は,2016年の調査結果より有意に増加した。また,教育を受けた場所で最も多かったのは,学会主催のセミナーであった。DNR(DNAR)指示により,心停止時の心肺蘇生以外に侵襲の高い生命維持装置などの治療の終了や差し控えが行われている現状や,本来の対象以外にDNR(DNAR)が拡大解釈され誤用されている現状に変化はなかった。DNR(DNAR)の判断に,複数の医師と医師以外の医療従事者で行うと回答した割合は増加した。さらに,本調査では3学会合同「救急・集中治療における終末期医療に関するガイドライン」2)と厚生労働省の「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」3)を読んだと回答した者のうち,使用した経験を有したのは3,4割であった。また,本会より「Do Not Attempt Resuscitation(DNAR)指示のあり方についての勧告」4)が発表されたが,未だ臨床現場において混乱が生じている。したがって,本会臨床倫理委員会は,DNR(DNAR)の正しい知識と理解を得るため,繰り返し教育の機会を設ける必要性がある。
著者
日本集中治療医学会感染管理委員会
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.60-67, 2021-01-01 (Released:2021-01-01)
参考文献数
21
被引用文献数
1

重症患者や腎代替療法を取り扱うICUにおける抗菌薬適正使用は特に重要であり,抗菌薬適正使用支援(antimicrobial stewardship, AS)活動の推進が要求される。ICUにおいては,一般病棟とは別に抗菌薬使用状況調査が必要であり,AS活動の指標となるベンチマークの設定も望まれるが,日本においてそのような報告はない。そこで,多施設のICUにおける2017および2018年度の注射用抗菌薬の使用日数(days of therapy, DOT)による調査とAS活動に関するアンケート調査を実施した。参加施設は48ユニット(43施設)で,DOTs/100患者日は98.8,中央値97.5[四分位範囲(interquartile range, IQR)76.5〜114.3]であった。各抗菌薬別使用量は,カルバペネム系薬は中央値14.7(IQR 11.0〜19.5),タゾバクタム/ピペラシリン9.2(IQR 5.5〜12.5),抗methicillin-resistant Staphylococcus aureus(MRSA)薬8.3(IQR 6.4〜13.3)であった。ASチームのICUへの介入は,ほぼ毎日が41.7%,介入タイミングは抗菌薬投与開始後が62.5%であり,改善の余地がある。本調査で得たデータは,日本のICUにおけるベンチマークとして活用できると考える。
著者
日本集中治療医学会小児集中治療委員会
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.217-225, 2019-05-01 (Released:2019-05-01)
参考文献数
22
被引用文献数
3 3

【目的】わが国における小児集中治療室(PICU)の整備状況を明らかにすること。【方法】日本集中治療医学会小児集中治療委員会は,何らかの特定集中治療室管理料を算定し,専ら小児集中治療を行っている集中治療室を対象として,2013年度より年次施設調査を実施した。調査項目は,病床数,算定している特定集中治療室管理料,専従医数,入室症例数,予測死亡率,実死亡率,治療内容などとした。【結果】2017年度は,対象のPICU全28ユニットから回答があった。総病床数280床,総年間入室症例数10,941例,実死亡率平均1.6%,22ユニットに専従医が配置されていた。2013年度から2017年度までに総病床数は増加傾向にあった。【考察】わが国の重症小児患者発生予測数から検討すると,PICU病床数は不足している。今後はPICU施設整備のあり方について検討するとともに,診療の質や専従医の有用性を評価する必要がある。
著者
日本集中治療医学会看護師将来計画委員会
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.477-486, 2021-09-01 (Released:2021-09-01)
参考文献数
9

要約:安全で質の高い医療を提供するプロセスに,認定看護師や専門看護師,特定行為研修修了者の活動が寄与していると考えるが,具体的な活動内容は明らかでない。そこで,集中治療部門に勤務する認定看護師,専門看護師の活動内容,特定行為研修修了者の取得行為についてweb調査を実施した。分析対象は265名であった。認定看護師,専門看護師の役割発揮においては「過大侵襲を受け重篤な状態にある患者の回復促進のための包括的ケア」の実践,「対応が困難な重症患者の家族ケアに関する相談」,「重篤な患者の回復に向けたケアに関する多職種間の調整」,「患者の意思確認が困難な状況での家族の代理意思決定における倫理調整」などの活動が明らかになった。特定行為研修修了者は35名で,呼吸器関連3区分と「循環動態に係る薬剤投与関連」,栄養・水分管理に係る2区分の取得が多かった。203名が,呼吸ケアサポートチーム,院内迅速対応システムなどの多職種チーム活動へ参画していた。
著者
日本集中治療医学会早期リハビリテーション検討委員会
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.255-303, 2017-03-01 (Released:2017-03-16)
参考文献数
295
被引用文献数
39

近年,集中治療領域での早期リハビリテーションが注目されているが,わが国の集中治療領域で行われている早期リハビリテーションは経験的に行われていることが多く,その内容や体制は施設により大きな違いがある。早期リハビリテーションへの期待が高まり,今後より高度急性期の病床機能の明確化が進む中で,集中治療領域での早期リハビリテーションの確立や標準化は喫緊の課題である。この度,日本集中治療医学会の早期リハビリテーション検討委員会では,「集中治療における早期リハビリテーション ~根拠に基づくエキスパートコンセンサス~」を作成した。このエキスパートコンセンサスでは,早期リハビリテーションの定義や早期リハビリテーションの効果,さらには早期リハビリテーションの禁忌や開始基準・中止基準,早期リハビリテーションの体制について解説する。
著者
日本集中治療医学会 ICU機能評価委員会 平成20年度厚生労働科学研究班
出版者
The Japanese Society of Intensive Care Medicine
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.283-294, 2011
被引用文献数
3

【目的】診断群分類(diagnosis procedure combination, DPC)に基づく包括評価下でのICU機能評価の方法を検討する基礎資料として,人員配置あるいは運営方針の違いが患者転帰に与える影響を明らかにする。【方法】厚生労働科学研究「包括払い方式が医療経済及び医療提供体制に及ぼす影響に関する研究」班(松田研究班)に日本集中治療医学会ICU機能評価委員会が協力し,2008年に実施したICU調査で収集した情報を分析した。重症度予後評価にはAcute Physiology and Chronic Health Evaluation(APACHE)II scoring systemを用いた。分割患者群間の比較には標準化死亡比(standardized mortality ratio, SMR)を用いた。また,分割患者群間の平均予測死亡率に差を認めない場合には,観察された死亡率を比較した。【結果】ICU病床数は,2~67床(中央値:8床,四分位範囲:6~12床)で,病院間に大きな差を認めた。専任・専従医が入退室を決定しているICUでは,在室日数が有意に短かった(3.53±3.35日vs. 4.07±5.47日,<I>P</I><0.001)。専任・専従医が平日の20時にICU内に「いる」ICUと「いない」ICUを,SMRで比較すると「いない」ICUが低く,観察した死亡率で比較すると,「いる」ICUで死亡の危険が有意に高かった(odds比:1.394,信頼区間:1.078~1.803, chi-squared: 6.16,<I>P</I>=0.013)。専任・専従医が人工呼吸器の設定と離脱の方針を決定しているICUの死亡率は,それ以外のICUと比較して低い傾向を認めた(odds比:0.849,信頼区間:0.596~1.209, chi-squared: 0.665, <I>P</I>=0.415)。臨床工学技士と認定看護師の配置は患者転帰に良い影響を及ぼす傾向を認めた。本学会認定専門医あるいは本学会認定施設が患者予後に与える影響は明らかにできなかった。【結論】専任・専従医の配置は,ICU在室日数を短縮する。専任・専従医が人工呼吸器の設定や離脱の方針を決定することは患者転帰を改善する。集中ケア認定看護師,臨床工学技士の配置は患者転帰を改善する傾向を示した。