著者
菊池 里奈 藤井 克幸 上林 悠人 塚畑 宏大 佐藤 愛実 早瀬 彩乃 小宮山 典寛
出版者
一般社団法人 日本獣医麻酔外科学会
雑誌
日本獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:21896623)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.29-35, 2020 (Released:2020-11-02)
参考文献数
14

ネコの尿管閉塞に対する療として、SUB(Subcutaneous ureteral bypass)はスタンダードな治療手段であるが、その多くがX線透視下で実施されている。我々はSUBの設置を、超音波ガイド下および術中単純X線撮影(非透視下)で行っており、今回はその13症例の治療成績、合併症、予後について検討した。その結果、超音波ガイド下におけるSUB設置においても腎数値は従来の報告と同様に改善し、臨床症状も改善した。合併症に関しては、今回の検討では従来の報告に比較すると、術後感染率がやや高かったが、長期的な予後は良好であり、超音波ガイド下でのSUB設置はネコの尿管閉塞に対する有効な一手段と考えられた。また、SUBのカテーテル閉塞防止に関する検討として、食餌内容変化と尿比重の関連を検討したが、症例数が少なく今回は明らかな結果は得られず、更なる検討が必要と考えられた。
著者
早瀬 彩乃 木村 祐哉 伊藤 直之
出版者
獣医疫学会
雑誌
獣医疫学雑誌 (ISSN:13432583)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.47-52, 2019-07-20 (Released:2020-01-10)
参考文献数
15
被引用文献数
1

獣医療従事者や獣医学生は過度なストレス状態におかれることが多く,メンタルヘルスの懸念が大きいと言われている。本調査は全国の獣医学生を対象としてウェブを介して行い,国際的なスクリーニングツールであるK6により,対象となった348名中89名(25.6%)が不安・気分障害と判定された。また,在学中の精神科受診歴,依存症,自殺念慮,自殺未遂はそれぞれ26名(7.5%),33名(9.5%),168名(48.3%),19名(5.5%)にみられていた。各要因ごとに不安・気分障害に関係するオッズ比をベイズ統計により推定したところ,事後期待値[95%確信区間]が高かったのは,精神疾患について誰にも相談できない場合2.40[1.15, 54.77],鳥取県中部地震で被災していた場合12.05[1.15, 54.77],精神科受診歴3.50[1.46, 7.13],自殺念慮17.62[8.30, 35.22],自殺未遂13.86[4.29, 37.04]であった。さらに所属大学および学年を変量効果として投入し,階層2項ロジットモデルで推定したところ,調整オッズ比が高かった要因は,精神疾患について誰にも相談できない場合2.75(1.32)[1.62, 4.73],鳥取県中部地震の被災経験22.67(4.57)[1.67, 669.78]であった。本調査により,日本の獣医学生においてもメンタルヘルスの問題が実在することが明らかとなったが,頻度やオッズ比には選択バイアスの影響が想定される。今後は正確な実態把握を行い,対策を検討することが必要であろう。