著者
谷本 照巳 星加 章 三島 康史 柳 哲雄
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.10, no.5, pp.397-412, 2001-09-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
38
被引用文献数
5 4

大阪湾と紀伊水道における水質観測結果に基づいて, 大阪湾における懸濁・溶存態物質の収支をボックスモデルにより解析した。その結果, 夏季, 冬季ともに表層では懸濁物質(TSM), 懸濁態有機炭素(POC), 懸濁態有機窒素(PON)および懸濁態リン(PP)の生成量は分解を上回り, 中層と底層では分解が生成を上回っていた。表層におけるPOC, PONおよびPPの生成量の夏季と冬季の平均はそれぞれ1, 300, 175および27td-1であり, 河川等からの負荷量と比較してそれぞれ約10, 8および16倍大きい。表層で多量の懸濁態有機物が生成されるにもかかわらず, これらのうち約60%は大阪湾内で分解され, 湾外への流出は20~30%であった。一方, 溶存態無機窒素(DIN)と溶存態無機リン(DIP)は両季節ともに表層で消費, 中層と底層では生成が上回っていた。表層で栄養塩が消費されて懸濁態の有機物が生成され, 中層と底層では懸濁態有機物が分解を受けて溶存態の栄養物質へと移行し, 海水中へ回帰している。夏季では, 下層の栄養塩が再び表層に輸送されて基礎生産に利用される循環が認められた。
著者
三島 康史 星加 章
出版者
日本海洋学会 沿岸海洋研究会
雑誌
沿岸海洋研究 (ISSN:13422758)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.145-150, 2002
被引用文献数
4

瀬戸内海(伊予灘,大阪湾)で採取された魚類のδ^<13>C,δ^<15>N値を測定した.特に,伊予灘で採取されたマダイ(Chrysophrys major)のδ^<13>C・δ^<15>N値からマダイの体内での炭素・窒素のターンオーバータイムを評価した.また,大阪湾および伊予灘で採取された魚類のδ^<13>C,δ^<15>N値から見た特徴について議論を行った.1995年9月11日に放流したマダイのδ^<13>C,δ^<15>N値が,放流後約1ヶ月間で天然魚とほぼ同じ値となった.これらの結果から,マダイの体内での炭素・窒素のターンオーバータイムは,1ヶ月以内であると推測された.大阪湾で採取されたカタクチイワシ(Engraulis japonica)とマイワシ(Sardinops melanosticta)のδ^<13>C・δ^<15>N値は(マイワシ:δ^<13>C=-15.8‰,δ^<15>N=13.8‰,カタクチイワシ:δ^<13>C=-15.9‰,δ^<15>N=13.7‰)それぞれほとんど同じ値であったことから,同じ栄養段階であることが予想された.今回採取された魚類のδ^<13>C,δ^<15>N値から,魚類の栄養段階を推測するにはいたらなかった.今後,植物プランクトンの増殖速度による効果,漁業生産に及ぼす炭素源としての海草類および海藻類の重要性等,検討を行う必要がある.