著者
多田 邦尚 西川 哲也 樽谷 賢治 山本 圭吾 一見 和彦 山口 一岩 本城 凡夫
出版者
日本海洋学会 沿岸海洋研究会
雑誌
沿岸海洋研究 (ISSN:13422758)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.39-47, 2014 (Released:2020-02-12)
参考文献数
24
被引用文献数
6

瀬戸内海東部海域における過去40年間の海水中の栄養塩濃度減少の検証とその低次生物生産過程への影響について,著者らのグループが得た知見を総合して考察した.瀬戸内海では過去,高度経済成長期には著しく富栄養化が進行していたが,1973年に施行された瀬戸内法により,P の発生負荷量は1980年以降,N は1990年後半以降削減された.しかし,播磨灘東部海域の海水中のTN,TP 濃度には直接反映されていない.一方,栄養塩濃度は1970年以降確実に低下しており,特にDIN 濃度は1990年以降も減少傾向にある.これは,主には瀬戸内法の効果と考えられるが,それだけでは説明できない.おそらく,海底堆積物からの栄養塩の溶出量の減少が大きく関与している可能性が考えられた.この栄養塩濃度減少に対する植物プランクトン群集の応答については,その生物量の低下傾向は認められないが,その種組成の変化が認められた.
著者
磯口 治
出版者
日本海洋学会 沿岸海洋研究会
雑誌
沿岸海洋研究 (ISSN:13422758)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.11-16, 2016 (Released:2020-02-12)
参考文献数
10
被引用文献数
1

合成開口レーダ(SAR)は高解像度で海面粗度を画像化するセンサであり,沿岸域の海上風,波浪,潮目等を高解像度 で検出可能である.本報告ではそれらのパラメータの検出メカニズムおよび,沿岸域への応用事例について紹介する.
著者
原島 省 呉 在龍 姜 聲舷
出版者
日本海洋学会 沿岸海洋研究会
雑誌
沿岸海洋研究 (ISSN:13422758)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.79-90, 2001

海洋環境の変動をモニターするプラットフォームとして,定期航路船舶の連続取水系の利用が有効な手段となっている.主な理由は,観測専用船と異なり,維持経費がかからないことや,多様なフロースルー型の計測手法が適用できることなどであるが,最も本質的な点は,計測頻度が高いこと,長期間持続することが可能なこと,計測の空間的密度を高くできることから,植物プランクトンのブルームなど重要な海洋変動のスペクトルに対応する時空間スケールをカバーできることである.本報告では,国立環境研究所のフェリーによる海洋環境モニタリングの実行例(1991~現在),韓国海洋研究所による同様の実行例(1998年~現在),および諸外国の実行例や計画例を紹介し,フェリーの利用による特記的な成果を示すとともに,今後の課題や発展の可能性について述べる.
著者
松原 賢 三根 崇幸 伊藤 史郎
出版者
日本海洋学会 沿岸海洋研究会
雑誌
沿岸海洋研究 (ISSN:13422758)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.139-153, 2018

珪藻類のSkeletonema 属およびEucampia zodiacus,渦鞭毛藻類のAkashiwo sanguinea,ラフィド藻類のFibrocapsajaponica は有明海奥部においてノリ漁期にブルームを形成し,ノリの色落ち被害を与える有害な植物プランクトンである.これら植物プランクトンの現場海域における増殖特性を明らかにするため,有明海奥部の塩田川河口域において,2008年4月から2013年3月にかけて植物プランクトンの出現動態と各種環境要因の変動を調査した.珪藻類については,Skeletonema 属は6~9月と1~3月に,E. zodiacus は主に2~3月にブルームを形成した.鞭毛藻類については,渦鞭毛藻類のA. sanguinea は主に9~11月の秋季に,ラフィド藻類のF. japonica は8~9月および11月にブルームを形成した.冬季におけるSkeletonema 属およびE. zodiacus のブルームのきっかけはともに水柱における透過光量の増加であることが示唆された.鉛直循環期であっても,出水や小潮により成層が形成されれば,透過光量が増加することも確認された.A. sanguinea およびF. japonica は競合生物である珪藻類が少ない時にブルームを形成する傾向が確認された.
著者
堤 裕昭
出版者
日本海洋学会 沿岸海洋研究会
雑誌
沿岸海洋研究 (ISSN:13422758)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.165-174, 2012 (Released:2020-02-12)
参考文献数
79
被引用文献数
1

有明海では1990年代後半より赤潮が頻発し,奥部海域では1998年より秋季~初冬に発生する赤潮が急に大規模化した.赤潮の頻発や大規模化は,海底への有機物負荷量の大幅な増大につながり,夏季の貧酸素水発生の主要な原因となる.そこで,有明海奥部における赤潮の発生のメカニズムと原因について,近年の水質,潮流,海底環境などに関する調査・研究の成果をレビューした.赤潮の頻発や大規模化は,陸域からの栄養塩負荷量の増加を伴わない条件下で起きていた.実際には,塩分成層が形成された時に,低塩分・高栄養塩濃度化した表層で赤潮が発生していた.したがって,赤潮の頻発や大規模化は,塩分成層が形成される頻度や継続期間に依存すると考えられる.塩分成層が形成されやすくなる原因としては,潮汐振幅の減少を通したことによる水柱の鉛直混合エネルギーの減少では説明がむずかしく,むしろ潮流自体の変化によって生じた可能性が指摘される.
著者
関口 秀夫
出版者
日本海洋学会 沿岸海洋研究会
雑誌
沿岸海洋研究 (ISSN:13422758)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.69-78, 2021 (Released:2021-09-07)
参考文献数
28

前報での議論を踏まえ,①「豊かな海」と海洋生態系の関係,②「豊かな海」をめぐる利害関係者の衝突,③水産業の社 会的位置と問題点,④「豊かな海」と里海と漁業の関係,⑤「豊かな生態系」(豊かな海)の価値および評価,の5つの課題 を検討する.
著者
谷川 亘 村山 雅史 井尻 暁 廣瀬 丈洋 浦本 豪一郎 星野 辰彦 田中 幸記 山本 裕二 濱田 洋平 岡﨑 啓史 徳山 英一
出版者
日本海洋学会 沿岸海洋研究会
雑誌
沿岸海洋研究 (ISSN:13422758)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.21-31, 2021 (Released:2021-09-07)
参考文献数
34

高知県須崎市野見湾では,白鳳地震によって水没した村『黒田郡』の伝承が語り継がれているが,その証拠は見つかっ ていない.そこで本研究では,野見湾内で海底調査を行い『黒田郡』の痕跡を探索した.その結果,海底遺構の目撃情報 がある戸島北東部の海底浅部(水深6m~7m)に,面積約0.09km2の沖側に緩やかに傾斜する平坦な台地を確認した. 台地表層は主に薄い砂で覆われており,沿岸に近づくにつれて円礫が多くなった.また,砂層の下位は硬い基盤岩と考え られ,海底台地は旧海食台(波食棚)と推定される.海水準変動と地震性地殻変動を踏まえると南海地震により海食台は 約7m 沈降したと推定できる.本調査では黒田郡の痕跡は発見できなかったが,水中遺跡研究に対する多角的な調査手 法を検討することができた.特に,インターフェロメトリソナーの後方散乱強度分布による底質観察とStructure from Motion(SfM)技術を用いた海底微地形の構築は,今後浅海における水中遺跡調査に活用できる.
著者
須賀 利雄 齊藤 寛子 遠山 勝也 渡邊 朝生
出版者
日本海洋学会 沿岸海洋研究会
雑誌
沿岸海洋研究 (ISSN:13422758)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.103-118, 2013 (Released:2020-02-12)
参考文献数
32

亜熱帯循環の通気密度躍層下部(σθ=26.3~26.6kg m-3)の等密度面が冬季にアウトクロップする亜寒帯前線帯では,主に移行領域モード水(TRMW ; S<34.0)が形成されることをArgo データの解析から示した.さらに,密度変化を補償し合う水温・塩分前線を横切る鉛直シアー流がソルトフィンガー型二重拡散対流を引き起こし,TRMW は形成後速やかに高温・高塩分化して,その一部が重い中央モード水(D-CMW ; S>34.0)に変質し得ることを示した.また,シノプティックなXCTD 断面の解析から,亜寒帯前線帯から沈み込んだTRMW やD-CMW などの低渦位水の一部は,中規模渦によって平均流を横切って南に運ばれた後に,亜熱帯循環の通気密度躍層内に広がっていることが示唆された.この輸送過程は,亜寒帯前線帯の深い冬季混合層と亜熱帯循環内に広がる等密度面上の低渦位舌が気候値の流線で直接結ばれていない理由を説明し,TRMW の変質過程とともに,亜寒帯前線帯起源の水塊が亜熱帯密度躍層の維持に寄与するメカニズムを担っている可能性がある.
著者
三島 康史 星加 章
出版者
日本海洋学会 沿岸海洋研究会
雑誌
沿岸海洋研究 (ISSN:13422758)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.145-150, 2002
被引用文献数
4

瀬戸内海(伊予灘,大阪湾)で採取された魚類のδ^<13>C,δ^<15>N値を測定した.特に,伊予灘で採取されたマダイ(Chrysophrys major)のδ^<13>C・δ^<15>N値からマダイの体内での炭素・窒素のターンオーバータイムを評価した.また,大阪湾および伊予灘で採取された魚類のδ^<13>C,δ^<15>N値から見た特徴について議論を行った.1995年9月11日に放流したマダイのδ^<13>C,δ^<15>N値が,放流後約1ヶ月間で天然魚とほぼ同じ値となった.これらの結果から,マダイの体内での炭素・窒素のターンオーバータイムは,1ヶ月以内であると推測された.大阪湾で採取されたカタクチイワシ(Engraulis japonica)とマイワシ(Sardinops melanosticta)のδ^<13>C・δ^<15>N値は(マイワシ:δ^<13>C=-15.8‰,δ^<15>N=13.8‰,カタクチイワシ:δ^<13>C=-15.9‰,δ^<15>N=13.7‰)それぞれほとんど同じ値であったことから,同じ栄養段階であることが予想された.今回採取された魚類のδ^<13>C,δ^<15>N値から,魚類の栄養段階を推測するにはいたらなかった.今後,植物プランクトンの増殖速度による効果,漁業生産に及ぼす炭素源としての海草類および海藻類の重要性等,検討を行う必要がある.
著者
堤 裕昭
出版者
日本海洋学会 沿岸海洋研究会
雑誌
沿岸海洋研究 (ISSN:13422758)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.165-174, 2012

有明海では1990年代後半より赤潮が頻発し,奥部海域では1998年より秋季~初冬に発生する赤潮が急に大規模化した.赤潮の頻発や大規模化は,海底への有機物負荷量の大幅な増大につながり,夏季の貧酸素水発生の主要な原因となる.そこで,有明海奥部における赤潮の発生のメカニズムと原因について,近年の水質,潮流,海底環境などに関する調査・研究の成果をレビューした.赤潮の頻発や大規模化は,陸域からの栄養塩負荷量の増加を伴わない条件下で起きていた.実際には,塩分成層が形成された時に,低塩分・高栄養塩濃度化した表層で赤潮が発生していた.したがって,赤潮の頻発や大規模化は,塩分成層が形成される頻度や継続期間に依存すると考えられる.塩分成層が形成されやすくなる原因としては,潮汐振幅の減少を通したことによる水柱の鉛直混合エネルギーの減少では説明がむずかしく,むしろ潮流自体の変化によって生じた可能性が指摘される.
著者
清野 聡子 宇多 高明
出版者
日本海洋学会 沿岸海洋研究会
雑誌
沿岸海洋研究 (ISSN:13422758)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.117-124, 2002
被引用文献数
2

現在,「環境修復」や「環境復元」が注目され,沿岸域についても人工干潟や藻場の造成なども行われている.本研究では,大分県の守江湾を対象として絶滅危惧生物カブトガニ(Tachypleus tridentatus)の生息と守江湾の環境変遷の関係について考察し,生息場の修復のためのミティゲーションについて述べた.干潟の環境調査では,一般に干潟が空間的に広くしかも干潮時にのみ出現するために網羅的調査には限界がある.このことから,空中写真を利用した効果的な環境調査法を開発した.空中写真により干潟の微地形分類を精度よく行うことができた.また洪水が干潟に及ぼすインパクトを調べるために,洪水前後に詳細測量を行って干潟の地形変化量を把握し,それと生物の生息条件の関係について調べた.守江湾への流入河川である八坂川では,2000年に河口から2~4km区間に残されていた感潮域蛇行部の捷水路事業が行われたが,河川改修による下流への影響として洪水時の流速の増大が見込まれ,それに起因して河口部のカブトガニ産卵地砂州の流出可能性が指摘された.そこで産卵地の代替適地を選定し養浜を行った.環境対策のために,他の流域や沿岸からの土砂の使用を極力避けるという思想のもと,養浜材料には近傍の河道掘削土砂を活用した.
著者
梅澤 有 福田 秀樹 小針 統
出版者
日本海洋学会 沿岸海洋研究会
雑誌
沿岸海洋研究 (ISSN:13422758)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.3-10, 2017 (Released:2020-02-12)
参考文献数
17

地方の都道府県に立地する大学の多くは,18歳人口の減少と大学進学率の停滞によって,地元からの大学進学者の割合が低下し,大都市圏から多くの学生が集まるようになっている.学生は卒業後に出身地に戻って就職をすることも多いため,今後も続くこの傾向は,地方大学の人材育成方針にも影響を与えうる.一方で,卒業生が,水産・海洋系の専門を活かして,大学院への進学や,公的機関に就職するだけでなく,多様な民間企業へと就職していく現在,専門に特化した教育だけでなく,応用力,問題解決能力,語学を含むコミュニケーション能力等を持ち,多方面で活躍できる人材の育成が一つの鍵となっている.アクティブラーニングの活用,地域だけに特化しない総合的な水産・海洋教育,大学間連携と いった大学教育に加えて,地域の小学生から社会人を対象とした教育活動など,広範な視野をもった教育が,今後の水 産・海洋分野の発展には必要と考えられる.
著者
小松 輝久 大瀧 敬由 佐々 修司 澤山 周平 阪本 真吾 サラ ゴンザル 浅田 みなみ 濱名 正泰 村田 裕樹 田中 潔
出版者
日本海洋学会 沿岸海洋研究会
雑誌
沿岸海洋研究 (ISSN:13422758)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.117-127, 2017 (Released:2020-02-12)
参考文献数
41

2011年3月11日の東日本大震災は,東北地方の沿岸に甚大なる被害を与えた.津波は,沿岸漁業の社会的インフラである,港,市場,漁船,養殖筏はもちろんのこと,魚介類の再生産の基盤である沿岸のエコトーンであり自然的インフラである藻場など(本論文ではブルーインフラと定義)にも被害を及ぼした可能性があった.そこで,岩手県大槌湾および宮城県志津川湾において,藻場の被害状況とその後の変化を調べた.海藻藻場の被害は大きくなかったが,2014年からは震災後に加入したウニによる磯焼けが生じており,積極的な駆除を行う必要がある.砂地に生育するアマモでは,津波の波高が大きくなったために壊滅的な被害を受けた湾奥部では,2011年6月に埋土種子から実生に生長しており,アマモ場の回復が始まっていた.また,地形的に津波による被害を受けにくい湾央や湾口にあるアマモ場は残っていた.これらのアマモ場は種子供給源になるため,次の大津波に備えて保護することが望ましい.津波と地盤沈下により埋め立てで失われていた塩性湿地や干潟というブルーインフラは再生したが,復旧の埋立や巨大防潮堤などの工事で消滅した.繰り返される将来の大津波に備え,次世代のために持続的で健全な海洋環境および社会を育む沿岸域を実現するという視点から,ブルーインフラの回復を織り込んだグランドデザインを平時につくる必要がある.