著者
星野 伸明
出版者
一般社団法人 日本統計学会
雑誌
日本統計学会誌 (ISSN:03895602)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.1-42, 2017-01-10 (Released:2017-08-30)
参考文献数
41
被引用文献数
3

匿名データについて,個体識別が可能か否かの判定は定義に関わる.しかしこの判定は明確に定式化されていないため,改善のための議論がかみ合わない.従って本論文は,個体識別可能性の判定方式を定量評価に基づいて明確化する.このような判定方式に関する既存研究は存在するが,個体識別可能性の測度について閾値を定める理論が欠けている.この点について本論文では,個体識別が起きていないという観測可能な事実に基づいて統計的に閾値を推定する.このような実証的態度により,匿名データ制度を根拠に基づいて継続的に改善することが出来る.実際に本論文では個体識別可能性審査の改善を提案する.
著者
星野 伸明
出版者
日本統計学会 = Japan Statistical Society
雑誌
日本統計学会誌. シリーズJ (ISSN:03895602)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.23-45, 2010-09-01
参考文献数
72
被引用文献数
1

公的統計のミクロデータ利用を促進する上で大きな課題を二点挙げると,一点目は利用目的制限の緩和,二点目は利用可能な統計調査の拡大である.本稿ではこれらの課題の解決策を検討する.前者については,一般目的汎用ファイルの提供が望ましい.これを実現するには,絶対的な匿名性を持ち有用なデータの作成を目標とするべきである.後者については,事業所・企業調査など匿名化が難しいデータも提供するのが望ましい.匿名化が困難な場合について先進的事例を調査したところ,原データの統計的性質を一部保存するデータの作成が目標となっている.そのようなデータを確率的に生成するのが模造(synthesis)という概念であり,一般目的汎用ファイルの作成でも有用である.従って本稿では,模造手法も整理して紹介する.
著者
星野 伸明
出版者
金沢大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究は実証と理論の両面で進めた。まず実証面では労働力調査個票データを匿名化し、匿名化手法のリスクや有用性を実証研究するための基盤を構築した。また実証の妥当性を確保し、日本の匿名化実務について指針を得るため、外国の先進的事例を調査してまとめた。理論面では、リスク評価の対象として頻出する疎な分割表の挙動を説明するため、極限条件付き複合ポアソン分布族の性質を評価した。特に、ベル多項式に依存した新しい漸近論を提案した。