著者
星野 直哉
出版者
東北大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

本研究は、金星雲層(50-70km)起源の大気波動が中間圏(70-110km)・熱圏(>110km)の風速場に与える影響を、大気大循環モデル(GCM)を用いた数値シミュレーションにより解明することを目的としている。この目的達成のため、我々は、1)先行研究で考慮されてこなかった惑星規模の波を考慮した数値シミュレーション、2)風速観測とシミュレーション結果との比較、3)先行研究において取り扱いが不十分だった小規模な大気重力波の取り扱いの改良、及び数値シミュレーション、を達成目標と定め研究を行なってきた。まず、我々は惑星規模の波を考慮した数値計算を行い、金星熱圏では、惑星規模の波の中でケルビン波が最も卓越し伝搬することを世界で初めて示唆した。また、本研究では高度110km付近の風速観測を行っているドイツ・ケルン大学の研究チームと連携し、シミュレーションと風速観測との比較を行なった。その結果、高度約110km付近の数日スケールの風速変動強度は本シミュレーションで示唆されるケルビン波による風速変動強度と整合的であり、従来不明であった熱圏変動の要因の一部がケルビン波にあることを示唆した。続いて、重力波の取り扱いを改善した数値計算を行った。その結果、小規模な重力波が下層から上層に運動量を輸送し、熱圏において100m/sに及ぶ高速東西風を駆動することを示唆した。計算による熱圏高速東西風強度の高度分布は、先行研究の風速の高度分布とよく一致する結果であった。また、本研究では初めて熱圏高速東西風のローカルタイム分布に着目し、高度約100-110kmの熱圏高速東西風強度は昼側より夜側で強いことを示唆した。このような、熱圏高速東西風強度の昼夜依存性は先行研究の観測より示唆されていたものの、数値計算によりその存在を実証したのはこの研究が初めてである。
著者
高橋 幸弘 星野 直哉
出版者
日本惑星科学会
雑誌
遊・星・人 : 日本惑星科学会誌 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.238-241, 2009-12-25

金星における世界初の雷放電観測専用機能と微弱大気光の検出能力を兼ね備えた雷・大気光カメラLACは,ハードウェアの製作・各種試験が完了し,実地観測に備えたパラメータ設定と詳細シーケンスの検討に入った.LACの科学的背景と目標,設計方針,これまで行った試験などについて紹介する.