著者
橋口 浩之 山本 真之 森 修一 高橋 幸弘
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

降水メカニズムの解明には、降水量だけでなく、雨滴粒径分布(DSD)の計測による降水物理量の定量的把握が重要である。東西5000kmにわたり多様な地形を持つインドネシア海洋大陸では、インドネシア全体に跨る観測網が不可欠である。本研究では、コトタバン(スマトラ島)・ポンティアナ(カリマンタン島)・マナド(スラウェシ島)・ビアク(ニューギニア島近傍の小島)にディスドロメータを整備し、DSDの連続観測を実施した。経度・降水雲タイプ・MJO・雷活動などとDSD特性との関連について明らかにした。
著者
中村 正人 山崎 敦 田口 真 岩上 直幹 佐藤 毅彦 高橋 幸弘 今村 剛
出版者
日本惑星科学会
雑誌
日本惑星科学会誌遊星人 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.4-7, 2016

金星探査機「あかつき」は2015年12月に金星周回軌道に入った.日本初の惑星周回機の誕生である.観測機器の初期チェックは順調に進んでいる.中村プロジェクトマネージャーと観測機器担当者が所感を記す.
著者
大谷 栄治 倉本 圭 今村 剛 寺田 直樹 渡部 重十 荒川 政彦 伊藤 孝士 圦本 尚義 渡部 潤一 木村 淳 高橋 幸弘 中島 健介 中本 泰史 三好 由純 小林 憲正 山岸 明彦 並木 則行 小林 直樹 出村 裕英 大槻 圭史
出版者
日本惑星科学会
雑誌
遊・星・人 : 日本惑星科学会誌 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.349-365, 2011-12-25
被引用文献数
1

「月惑星探査の来たる10年」検討では第一段階で5つのパネルの各分野に於ける第一級の科学について議論した.そのとりまとめを報告する.地球型惑星固体探査パネルでは,月惑星内部構造の解明,年代学・物質科学の展開による月惑星進化の解明,固体部分と結合した表層環境の変動性の解明,が挙げられた.地球型惑星大気・磁気圏探査パネルは複数学会に跨がる学際性を考慮して,提案内容に学会間で齟齬が生じないように現在も摺り合わせを進めている.本稿では主たる対象天体を火星にしぼって第一級の科学を論じる.小天体パネルでは始原的・より未分化な天体への段階的な探査と,発見段階から理解段階へ進むための同一小天体の再探査が提案された.木星型惑星・氷衛星・系外惑星パネルは広範な科学テーマの中から,木星の大気と磁気圏探査,氷衛星でのハビタブル環境の探査,系外惑星でも生命存在可能環境と生命兆候の発見について具体的な議論を行った.アストロバイオロジーパネルでは現実的な近未来の目標として火星生命探査を,長期的な目標として氷衛星・小天体生命探査を目指した観測装置開発が検討された.これらのまとめを元に「月惑星探査の来たる10年」検討は2011年7月より第二段階に移行し,ミッション提案・観測機器提案の応募を受け付けた.
著者
森 修一 服部 美紀 山中 大学 橋口 浩之 高橋 幸弘 濱田 純一
出版者
国立研究開発法人海洋研究開発機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

落雷被害の社会的影響が大きいインドネシアのジャカルタ首都圏の雷雨を対象とし,長期現業地上観測データに基づく気候学的解析を行うと共に,レーダー等による特別観測を実施した.その結果,雷雨は対流季節内振動(MJO)の東進と共に大きく変動し,MJO活発域の到来直前(Phase 3)に最も激しくなる.また,雷雨の季節進行は多くの地点で雨季直前(4月,11月)に活発となるが,赤道越え北風モンスーンサージ(CENS)が影響し,ジャワ海沿岸のみ2月が最盛期となるなど地理的差異も大きい.さらに,雷雨はジャワ島南部の山岳域で発生し,北部沿岸のジャカルタ都市部へ移動する日周期移動が顕著であること等が明らかとなった.
著者
松本 淳 久保田 尚之 藤部 文昭 林 泰一 山本 晴彦 財城 真寿美 寺尾 徹 村田 文絵 高橋 幸弘 山下 幸三 赤坂 郁美 遠藤 伸彦 森 修一 釜堀 弘隆 高橋 洋 山根 悠介 大塚 道子 遠藤 洋和
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-11-18

日本を含むアジア諸国における紙媒体や画像での日降水量データや台風経路等をデジタル化したデータセットを作成し、モンスーンアジア域における降雨強度の長期変化を解析した。その結果、日本では1930年以降、東北日本を中心に降雨強度が大きくなっていた。フィリピンでは1950年以降の夏季には強雨の増加傾向が、冬季には西海岸で乾燥の強化傾向がみられた。1940年代以前の傾向はこれらとは異なり、近年の変化傾向は数十年スケールでの変動の一部とみられる事、エルニーニョと地球温暖化の影響の両方の影響を受けている可能性が高い事がわかった。中部ベトナムでも近年の傾向と1940年以前の傾向に違いがみられた。
著者
土岐 剛史 高橋 幸弘 山田 嘉典 福西 浩 中村 卓司 TAYLOR Michal J.
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙科学研究所報告. 特集 (ISSN:02859920)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.83-91, 1998-03

1996年8月に実施されたSEEKキャンペーンにおいて, 地上からの高感度イメージャーによる大気波動の観測が鹿児島県内の内之浦, 山川, 大隅と信楽の計4ヵ所で実施された。キャンペーン期間中の鹿児島地方は天候に優れない日が多かったが, 8月9日から22日の間に, 内之浦, 山川, 大隅でそれぞれ, 4夜, 7夜, 1夜, 大気光イメージデータが取得された。信楽での観測は8夜であった。今回の地上からの大気光観測の主な目的は, レーダーで観測される電離圏における準周期的イレギュラリティーと大気光に見られる中性大気中の重力波の特性を, ロケットによる観測とあわせてそのメカニズムを検討解明することにある。各観測データと比較する上で, 大気光の発光高度を正確に決定することは極めて重要な課題である。我々は鹿児島の3ヵ所の観測から, 三画法を用いてOH大気光の発光高度の推定を計画した。残念ながらロケット打ち上げ時は天候に恵まれず同時観測データは得られなかったが, キャンペーン期間中内之浦と山川に設置された2台の大気光全天イメージャによる同時観測に成功した。8月19日の晩, 2台のイメージャで同時に顕著なOH大気光の波状構造を観測した。これら2地点で同時に取得された画像に, 大気波動構造の発光高度決定としては初めて, FFT及び精密な三角法を用いて解析を行った。その結果, 波状構造の発光高度は89±3kmと求められた。これはロケット観測などによる従来の結果とほぼ一致する。MFレーダーによって, この高度の数km上空で回時に強い南向きの風速シアーが観測されており, 重力波の発生原因の有力な候補と考えられる。
著者
田口 真 吉田 和哉 中西 洋喜 高橋 幸弘 坂野井 健
出版者
国立極地研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

惑星大気・プラズマの光学的リモートセンシングを目的とした気球搭載望遠鏡システムを開発した。アルミ角材で構成されるゴンドラを設計・製作した。望遠鏡、太陽電池パネル、PC及び高圧電源を収納する気密容器、ジャイロ(CMG)を収納する防水容器、デカップリング機構がゴンドラに取り付けられる。CMGとデカップリング機構の制御によって、目標精度である約0.2°でゴンドラの姿勢を制御できることが確認された。望遠鏡の光路を波長帯で分け、中心波長400nm及び900nmのバンドパスフィルターを通して別々のCCDビデオカメラで撮像する。経緯台制御によって星像を約0.01°の精度で追尾できることを実験で確認した。望遠鏡視野に天体を捉えたのちは、星像位置検出用光電子増倍管からの出力をフィードバックして2軸可動ミラーマウントを制御することで、星像を視野中心に安定化できることを確認した。追尾性能向上のため、サンセンサーの視野をやや広くし、ガイド鏡の視野をやや狭くする改良を施した。ゴンドラ重量は約300kgとなった。電源は太陽電池から約250Wを供給するが、ニッケル水素充電池でノミナル消費電力を2時間まで供給することが可能である。ニッケル水素充電池の低温特性を測定し、性能に問題ないことを確認した。太陽電池と組み合わせた充放電回路を設計・製作した。熱真空試験を実施し、成層圏環境下で問題なく動作することを確認した。将来、北極で本格的な実験を実施するための調査として、ESRANGEの気球実験担当者と打ち合わせた。10月には実際にスウェーデン・キルナにある気球実験フィールドを視察した。これまでの開発成果を国際学会や国内学会・シンポジウムで発表した。また成果をまとめてAdv.Geosci.誌に投稿し受理された。
著者
吉田 純 高橋 幸弘 福西 浩 堤 雅基 牛尾 知雄
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.1-54, 2005-03

現在,金星大気超回転の解明を主目的とした金星気象衛星(VCO:Venus Climate Orbiter)を打ち上げるPlanet-Cミッションが宇宙航空研究開発機構/宇宙科学研究本部を中心として進行中である.我々はVCOに搭載する雷・大気光カメラ(LAC:Lightning and Airglow Camera)の開発を行っている.LACは金星夜面における雷放電発光・大気光を2次元で高速イメージングする観測器である.雷放電観測では,まずこの現象の存在の決定的な証拠を得て,長年の論争を収束させることを目標とする.さらに,その電荷生成・分離メカニズムの解明や硫酸雲物理学の理解,惑星メソスケール気象学の発展,金星大気中における熱的・化学的寄与の見積もりなど,様々な分野に貢献することが期待される.大気光観測では,発光強度の緯度・経度分布から金星超高層大気の運動を継続的にモニターし,さらに波状構造をイメージングすることで,金星下部熱圏と下層大気の力学的結合過程の解明,金星熱圏大気大循環メカニズムの理解の進展が期待される.さらに近年,地上望遠鏡で発見された558nm[OI]の連続観測も実施し,その発光強度分布や時間変動を捉え,オーロラとも解釈できるこの発光現象の解明を目指す.LACのセンサーとしては,高感度を有し,かつ高速サンプリングが可能なものが要求される.また本観測器は,雷放電発光観測用に波長777nm[OI]の干渉フィルタを採用し,50kHzプレトリガーサンプリングでデータを取得する.一方,大気光観測時には波長551nm[O_2Herzberg II],558nm[OI]で連続サンプリングを行い,積分時間10secで1枚の画像を作成する.VCOは金星低緯度を周回する長楕円軌道をとるが,LACはこのうち近金点(高度300km)付近から金星より3Rv離れた地点までの高度範囲で運用する.その際,雷放電発光観測に関しては距離3Rvの地点から地球の平均的発光強度のものを,1000kmの高度からはその1/100レベルのものまでを検出することを目標とする.一方,大気光に関しては発光強度100Rのものを,SN比=10を確保して検出することを目標とする.上記の性能を達成するため,我々は第一に,LACのセンサーとして光電子増倍管(PMT:Photo Multiplier Tube)とアバランシェ・フォトダイオード(APD:Avalanche Photo Diode)の2つを検討した.いずれも8×8の2次元配列素子である.絶対感度校正実験から得られた出力電流値と,暗電流測定試験から得られた暗電流値から,本観測器で100Raylieghの光源を観測した場合の暗電流統計揺らぎによるSN比が10以上であることを確認した.しかしながらAPDについてはバックグラウンドレベルの温度安定性が低く,光量の小さい大気光観測は適さないことがわかった.またPMTに関しては波長777nmにおける量子効率がAPDに比べて小さく,雷放電発光観測は困難であることが判明した.第二に,金星夜面観測の際に視野内に混入することが予想される迷光(太陽直達光,金星昼面光)の量を見積もり,迷光減衰要求量11桁を達成する高い遮光技術を有する光学系の設計・開発を行った.衛星側面に設置し片側を宇宙空間に暴露させ,対物側に4枚の遮光板(vane)と1段バッフルを取り付けた光学系を設計した.本光学系を採用する際,衛星表面を覆う金色のサーマルブランケットや設置面上にある突起物を介して,迷光が観測視野内に混入することが懸念されるため,我々は暗室内で精密な模型実験を行った.その結果,衛星突起物がベーン陰影内にある場合,その迷光量はカメラ部の1段バッフルから検出器間の遮光対策で十分減衰可能な量であることを定量的に示した.第三に,高速サンプリング時におけるデータ取得方法の考案・検討を実施した.忘却係数という概念を用いてトリガーサンプリング方法を考案し,地上フォトメータで捉えられた地球雷放電発光の波形で試験した結果,ノイズと分離して信号を検出することに成功した.本研究成果により,LAC開発に必要不可欠な基礎技術の活用に見通しを立てることができた.
著者
高橋 幸弘 星野 直哉
出版者
日本惑星科学会
雑誌
遊・星・人 : 日本惑星科学会誌 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.238-241, 2009-12-25

金星における世界初の雷放電観測専用機能と微弱大気光の検出能力を兼ね備えた雷・大気光カメラLACは,ハードウェアの製作・各種試験が完了し,実地観測に備えたパラメータ設定と詳細シーケンスの検討に入った.LACの科学的背景と目標,設計方針,これまで行った試験などについて紹介する.