著者
神谷 信行 星野 謙一 太田 健一郎
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1987, no.2, pp.140-146, 1987-02-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
19
被引用文献数
2

ヘキサクロロ白金(IV)酸(塩化白金酸)の熱分解過程をTG,DTAを用いて調べ,熱分解法で作製した白金被覆チタン電極の電極性能との関連を検討した。H2PtCl6・6H20,PtCl4・5H20の結晶および水溶液はほぼ同じ温度でPtCl2,Ptへと熱分解し,それぞれの生成する温度は330,530℃ であった。これに対してブチルアルコール(n-BuOH)を溶媒として熱分解を行なうと約400℃ でPtまで還元される。H2PtCl6のn-BuOH溶液をチタン基体に塗布,熱分解する方法により,低温(300℃)でも粗度係数の大きな電極をつくることができるが,高温で焼成するほど粗度係数は小さくなった。白金とチタン基体との接合部の焼結,露出したチタン表面の封孔処理の程度は焼成温度が高いほどよく,高温処理の方が耐久性はよい。n-BuOHのほかにも種々の有機化合物を使い熱分解を調べた結果,Pt(II)に有機物が配位した状態(錯体)を経て酸化還元が進みやすくなり低温でPtoまで分解されるものと思われる。