- 著者
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有本 建男
- 出版者
- 国立研究開発法人 科学技術振興機構
- 雑誌
- 情報管理 (ISSN:00217298)
- 巻号頁・発行日
- vol.58, no.8, pp.623-634, 2015-11-01 (Released:2015-11-01)
- 参考文献数
- 28
20世紀末から始まった急速なグローバリゼーションと,デジタル技術の飛躍的発達,気候変動などグローバルな課題の急増によって,近代が築いてきた政治経済社会システム,人々の価値観,ライフスタイルが大きく変容している。ニューヨーク世界貿易センタービルのテロによる崩壊,リーマンショックによる世界経済恐慌,エボラ出血熱などの感染症,東日本大震災と福島原発事故は,いずれも,近代科学技術と近代文明の光と影,限界を私たちに明らかにした。科学技術への市民の信頼は大きく損なわれ,科学技術の目指す価値,制度体制は,今大きな見直しを迫られている。人々は,地球の有限性を強く感じ始めている。この時機,科学技術関係者は日常に流されることなく転換期を自覚して,自らの社会的役割と責任について,歴史的,社会的,哲学的な思考を深める必要がある。本稿は,科学技術と政治の関係について,歴史の中で政治リーダー,科学者,その共同体が考え発言し行動してきた事例をまとめたもので,今後の政策形成とグローバルネットワーク構築に向けて示唆を得ることができると考える。