著者
石原 里美 有泉 裕嗣 矢持 淑子 塩沢 英輔 佐々木 陽介 瀧本 雅文 太田 秀一
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.71-78, 2011-02-28 (Released:2011-09-01)
参考文献数
28

成人T細胞性白血病/リンパ腫(adult T-cell leukemia/lymphoma; ATLL)は, 臨床的にヒトT細胞好性ウイルス(human T-cell lymphotropic virus type-1; HTLV-1)感染細胞のモノクローナルな増殖を証明しない限り,組織形態学的には末梢性T細胞リンパ腫–非特定型(PTCL-NOS)との鑑別は困難である.しかし免疫組織学的にATLLとPTCL-NOSの発現に違いがあれば,HTLV-1の感染情報がない場合でも,両者の鑑別が可能と考えられる.1983年11月~2009年9月末までに昭和大学病院でWHO造血器・リンパ系腫瘍分類第4版に基づきATLL又はPTCL-NOSと診断された37例のホルマリン固定パラフィン包埋組織切片を免疫組織化学的に以下の抗体を用いて発現の違いを検討した.CD7,CD25,CD56,CCR4,TIA-1においてATLLとPTCL-NOS間で有意差が認められた.ATLL症例は全例でCD7の減弱が見られた.CD25はATLL症例の72%で陽性で,PTCL-NOSより有意に多かった(P=0.005).CCR4はATLL症例の72%で陽性で,PTCL-NOSより有意に多かった(P<0.001).PTCL-NOS症例はATLL症例に比べてCD56,TIA-1陽性例が有意に多かった(CD56,P=0.01; TIA-1,P=0.03).以上より,ATLLとPTCL-NOSを鑑別する上でCD7,CD25,CD56,CCR4,TIA-1の免疫組織化学検索が有用と考えられた.またATLLのCD25およびCCR4発現率は高く,ATLLの治療法として抗CD25抗体,抗CCR4抗体の有効性が期待された.