著者
坂本 真樹 服部 兼敏 大内 潤子
出版者
電気通信大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

人は,微妙な心身の状態を,「頭がズキズキ痛い」といったオノマトペ(擬音語や擬態語の総称)を使って表現することが多い.本研究では,医療従事者へのアンケートをもとに35尺度を評価尺度として選定し,オノマトペ表現を構成する各音が評価尺度に与える影響を定量化し,オノマトペによって表される心身の状態を形態と音韻の両面から定量的に推定するシステム開発した.また,評価尺度を多言語化することで,海外の病院で日本人が自分の症状を日本語のオノマトペで入力すると,症状が評価尺度ごとに定量化して示され,外国語では伝えにくい微妙な症状を,外国人医師などに伝えられるシステムを開発した.
著者
服部 兼敏 東山 弥生
出版者
医学書院
雑誌
看護研究 (ISSN:00228370)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.315-323, 2010-08-15

看護場面で使われるオノマトペ 「カピカピ」,一体何のことだろう。看護の現場で用いられているこのコトバに初めて接する部外者は,驚くことになるだろう。説明を受けて,「カピカピ」とは,痰というもともと粘稠にあるものが乾燥した傾向に向かうときの状態であることがわかる。では「キンキン」とは。これは,腸閉塞の状態をいう。腸閉塞患者の腹部に当てた聴診器から聞こえる音が,「キンキン」という金属音に聞こえるために,このようにいわれるようになったそうである。さらに,浮腫が現われた状態,これは「プヨってる」と表現される。これらは,言語学でいうオノマトペ(擬音語,擬態語)である。 看護という専門領域では,微妙な患者の状態を表わし,その微妙な状態の変化に対応した手技を喚動(動きを呼び起す)するために,オノマトペが頻繁に用いられているのではないだろうか。患者の生死を左右するという極限状態において,また看護師が自分の生命すらかけなければならないような状況において,極限状態に対峙するに相応しい認知行動がとられているのではないだろうか。看護現場のエキスパートを観察していると,そうとしか考えられない言語行動がみられる。