- 著者
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服部 重昭
- 出版者
- 森林総合研究所
- 雑誌
- 森林総合研究所研究報告 (ISSN:09164405)
- 巻号頁・発行日
- no.362, pp.p1-34, 1992-01
- 被引用文献数
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28
近年,関西地域では,人工造林面積に占めるヒノキ植栽面積が高率で推移している。ヒノキ造林の拡大は,造林不適地にまで延びることが危惧されるので,造林適地区分法の開発や適地選定指針の提示が行われている。一方,ヒノキ林の表土流亡に起因する地力減退の防止については,林床植生やA0層の効果が指摘されているが,その効果の定量的評価は進んでいない。そこで,ヒノキ純林へのアカマツの混交と林床のササが,土砂とリターの流亡防止に及ぼす影響を定量的に把握した。これに加え,落葉堆積量と侵食土砂量の関数関係を実験的に検討し,リター堆積の効果を数量化した。ヒノキ純林にアカマツやササが侵入すると,年間侵食土砂量は1/4~1/8,流亡リター量は1~1/2程度まで減少した。また,A0層の一部を除去すると,侵食土砂量と流亡リター量が大幅に増加した。これにより,アカマツの混交やササの侵入は,土砂とリターの流亡防止に効果があることを実証した。土砂とリターの移動は,斜面を流下する地表流よりも降雨因子,特に10分間最大降雨強度と降雨エネルギーに強く依存すると推察された。つぎに,許容限界侵食土砂量の概念を提示し,花崗岩地帯のA層生成速度から,これを1~3t/ha/年と見積もった。これらの結果に基づいて,ヒノキ林の侵食防止を考慮した施業の目標を具体的に示すため,人工降雨実験から推定された侵食土砂量と落葉堆積量の指数関数式を援用し,ヒノキ・アカマツ混交林において許容限界侵食土砂量を維持するのに必要なリター堆積量が,5~7t/haであることを導いた。