著者
望月 由美子
出版者
札幌市立大学
雑誌
札幌市立大学研究論文集 = SCU journal of Design & Nursing (ISSN:18819427)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.3-18, 2016-06-30

本研究は15,16 世紀のイタリア・ルネサンス絵画におけるユダヤ表象について分析を行うものである.イタリアの宮廷都市を代表するマントヴァのゴンザーガ家では代々,ユダヤ人の経済・思想文化に対する寛容策がとられており,その政治経済運営の一側面を特徴づけていた.とりわけ,マントヴァ侯爵フランチェスコ二世と夫人イザベッラ・デステの治世下では異教文化に肯定的な精神思潮が開花し,著名な人文主義者ピーコ・デッラ・ミランドラ,エジディオ・ダ・ヴィテルボ,マントヴァ貴族のパリーデ・チェレザーラ等が再評価したユダヤ神秘主義思想(カバラ)もひとつの流行的な関心を集め,さらにヘブライ語もまたラテン語やギリシア語に並ぶ第三の聖なる言語として崇敬された.その文化的潮流のなかで,ゴンザーガ家の宮廷画家アンドレア・マンテーニャはヘブライ語をモティーフとする絵画制作を行っており,本論ではそれが看取できる四作品《エッケ・ホモ》,《シビュラと預言者》,《ミネルヴァ》,《聖家族と洗礼者ヨハネの家族》の図像分析を行う.分析に当たっては,マントヴァで共有されていたユダヤ文化に対する関心と,従来のユダヤ人に対するキリスト教社会の態度,すなわちユダヤ人をキリストの敵とみなす伝統的な差別の文化形式の双方を鑑みつつ行い,マンテーニャの作品に見るこの時代独特のユダヤ宗教思想に対する知的・精神的態度なるものを明らかにする.This paper aims to examine the representations of Jews in Northern Italy in thefifteenth and sixteenth- centuries, particularly in the dominion of the Gonzaga family, andhighlights the significant diffusion of Hebraic themes in the Gonzaga court. In the historicalcontext of the broad movement to reassess Judaism (the mysticism of Kabbala) by prominenthumanists of the Quattro and Cinquecento, such as Pico della Mirandola, Egidio da Viterboand Johann Reuchlin, the humanists of the Gonzaga court, such as the erudite noblemanParide Ceresara, also affirmed the value of the Hebrew language, not only as the holy tonguebut also as the third source of knowledge beside Greek and Latin. In fact the religioustolerance characteristic of the Gonzaga rule, especially during the reign of FrancescoGonzaga II (mar.1484-1519) and Isabella d'Este, permitted many members of the Jewish elite to form connections within the milieu of the court. Following a brief overview of the socialhistorical-cultural situation confronting Jews in the dominion of the Gonzaga family, aniconographical analysis of Ecce Homo, A Sibyl and a Prophet, Pallas Expelling the Vices fromthe Garden of Virtues and The Family of Christ with the Family of St John the Baptistexecuted by Andrea Mantegna, the primary architect-painter at the Gonzaga court, revealsthat the Judaism representations at the Gonzaga court did not necessarily correspond to thetraditional image of the Jew as the heretic (the enemy of Christianity). Rather, they wereviewed as possessing sublime wisdom; namely, the secret of the God's verbs.
著者
望月 由美子
出版者
札幌市立大学
雑誌
札幌市立大学研究論文集 = SCU journal of Design & Nursing (ISSN:18819427)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.13-28, 2017-07-18

本稿は,初代サッビオネータ公爵ヴェスパシアーノ・ゴンザーガ・コロンナ(1531-91)が居城であるパラッツォ・ドゥカーレ(公爵の宮殿) に造営した肖像ギャラリーについて検証するものである.ヴェスパシアーノは北イタリアのロンバルディア州で勢力を誇ったゴンザーガ家の傍系貴族で, 星形の要塞都市サッビオネータを造営した人物として知られる.また,学術文芸の庇護者,スペイン王フェリペ二世の傭兵隊長としても名声を馳せ,歴代神聖ローマ皇帝の愛顧を受けて地方領主の身分から公爵まで登りつめた人物でもある.本論は,サッビオネータのパラッツォ・ドゥカーレにヴェスパシアーノが設けた「祖先のガッレリーア」(ガッレリーアは「美術品展示室」「ギャラリー」の意)と呼ばれるゴンザーガ家祖先の肖像を飾った部屋の室内装飾プログラムを分析するものである.その際,16 世紀から18 世紀の宮廷文化で重要な側面を担った肖像ギャラリーの機能に配慮しつつ,壁面の祖先たちの肖像群と天井フレスコ画のオリンポスの神々,古代ローマ帝国主題を図像学・考古天文学的視座から検討し,最終的にここがヴェスパシアーノの政治支配の正当性と,サッビオネータのゴンザーガ家による支配の永遠性を祈念する意図から構想された一室であったことを明らかにするものである.
著者
望月 由美子
出版者
札幌市立大学
雑誌
札幌市立大学研究論文集 = SCU journal of Design & Nursing (ISSN:18819427)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.3-18, 2016-06-30

本研究は15,16 世紀のイタリア・ルネサンス絵画におけるユダヤ表象について分析を行うものである.イタリアの宮廷都市を代表するマントヴァのゴンザーガ家では代々,ユダヤ人の経済・思想文化に対する寛容策がとられており,その政治経済運営の一側面を特徴づけていた.とりわけ,マントヴァ侯爵フランチェスコ二世と夫人イザベッラ・デステの治世下では異教文化に肯定的な精神思潮が開花し,著名な人文主義者ピーコ・デッラ・ミランドラ,エジディオ・ダ・ヴィテルボ,マントヴァ貴族のパリーデ・チェレザーラ等が再評価したユダヤ神秘主義思想(カバラ)もひとつの流行的な関心を集め,さらにヘブライ語もまたラテン語やギリシア語に並ぶ第三の聖なる言語として崇敬された.その文化的潮流のなかで,ゴンザーガ家の宮廷画家アンドレア・マンテーニャはヘブライ語をモティーフとする絵画制作を行っており,本論ではそれが看取できる四作品《エッケ・ホモ》,《シビュラと預言者》,《ミネルヴァ》,《聖家族と洗礼者ヨハネの家族》の図像分析を行う.分析に当たっては,マントヴァで共有されていたユダヤ文化に対する関心と,従来のユダヤ人に対するキリスト教社会の態度,すなわちユダヤ人をキリストの敵とみなす伝統的な差別の文化形式の双方を鑑みつつ行い,マンテーニャの作品に見るこの時代独特のユダヤ宗教思想に対する知的・精神的態度なるものを明らかにする.
著者
横田 和子 伊芸 光子 松崎 美保子 望月 由美子 吉岡 守正 内山 竹彦 弥吉 眞澄 荒明 美奈子 鎌形 有祐
出版者
東京女子医科大学学会
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.55, no.10, pp.1027-1028, 1985-11-25

第5回学内免疫談話会 昭和60年7月13日 東京女子医科大学中央校舎1階会議室