著者
中島 真如紀 中島 久幸 清原 薫 酒徳 光明 藤森 英希 寺畑 信太郎 野畠 浩司
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.105, no.3, pp.382-390, 2008 (Released:2008-03-11)
参考文献数
19
被引用文献数
1

症例は25歳女性,全大腸炎型潰瘍性大腸炎に対し大腸全摘術施行.術後早期より腹痛·高熱,CTにて十二指腸·小腸の壁肥厚を認め,内視鏡検査で十二指腸·小腸·回腸嚢に原疾患に類似した広範な病変を認めた.その後5回の大量下血をきたし,経皮的血管塞栓術にて止血した.十二指腸·小腸病変は,抗菌剤やプレドニゾロンに抵抗性で,デキサメタゾンにて軽快した.潰瘍性大腸炎に十二指腸·小腸病変を合併した1例を報告する.
著者
神藤 英二 望月 英隆 寺畑 信太郎 古谷 嘉隆 内田 剛史 酒井 優
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.30, no.11, pp.2210-2214, 1997-11-01
被引用文献数
8

盲腸に発生した, 腺癌と偏平上皮癌の成分を含む内分泌細胞癌の症例を経験した. 肉眼的には典型的な2型腫瘍であったが, 組織学的検索から同一腫瘍内に内分泌細胞癌と腺癌の領域を認め, さらに内分泌細胞癌の内部には偏平上皮癌への分化を示す部分を多数認めた. 内分泌細胞癌の診断の過程で行った免疫染色では, neuron-specific enolase に陽性を示したものの, クロモグラニンAには陰性であったため, 電子顕微鏡検査を追加, 内分泌顆粒を認めたことで, 最終的に内分泌細胞癌の診断を得た. 臨床的には悪性度が高く, 肝転移を認めたため肝切除を含む根治度Bの手術を施したが, 残肝再発を来し, 術後9か月目に死亡した. 今回の症例は, 組織学的多様性から, 腫瘍発生母地, およびその分化の過程が注目されるので報告した.
著者
真野 佳典 豊泉 長 藤井 和之 菊池 義公 永田 一郎 堂本 英治 寺畑 信太郎 玉井 誠一
出版者
特定非営利活動法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.239-243, 1999-05-22 (Released:2011-11-08)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

子宮頸部扁平上皮癌のまれな一亜型である子宮頸部乳頭状扁平上皮癌の1例を経験したので, その細胞学的特徴を, ヒト乳頭腫ウイルス (HPV) の検索結果を含め報告する. 症例は36歳女性. 肉眼的には, 子宮頸部からカリフラワー状に外向性発育を示す, 易出血性な腫瘍がみられ, 強く悪性が疑われた. しかしながら細胞学的には, 高度異型成から上皮内癌程度の細胞所見で, 浸潤癌を示唆する細胞所見は得られなかった.摘出標本による組織学的検討では, 狭細な血管線維性間質を伴い, 乳頭状に外向性発育を示すとともに, 一部に間質浸潤がみられ, 乳頭状扁平上皮癌 (FIGO Stage Ib 2) と診断された. またPCR法によりHPVの検索を行ったところHPV 16型 (High-risk type) が検出された. 同症例では細胞診および生検で, 浸潤癌の術前診断が困難な例が多く, 上皮内癌とunderdiagnosisされる可能性が想定される. しかしながら肉眼像およびコルポスコピー所見で, 子宮頸部乳頭状扁平上皮癌を鑑別にあげることができれば, 細胞診における豊富な腫瘍細胞量, 細胞集塊, 個々の細胞異型などの所見と生検を併用することで, 術前に確診に至ることも可能と思われる.
著者
山下 良平 寺畑 信太郎 角田 清志
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.40, no.7, pp.771-775, 2000-12-20

再発時に肺動脈幹内への高度浸潤進展を示した肺原発悪性線維性組織球腫(MFH)の1例を経験した.症例は70歳女性.1995年5月15日, 左肺下葉の長径6.5cmの腫瘍に対して下葉切除術を行い, 病理学的にstoriform-pleomorphic typeのMFHと診断された.術後経過良好であったが, 98年6月, 左肺門部での再発が明らかとなった.画像所見上, 腫瘍が左肺動脈幹内へ浸潤進展している像を認めたが, 遠隔転移の所見がなかったため, 98年7月10日, 残存肺摘除術を行った.切除標本では, 肺門部に暗赤色の充実性腫瘍が, 多結節状に集簇発育しており, その一部は左肺動脈幹内へと連続性に進展していた.術後は呼吸不全を合併したが, 10月17日, 軽快退院した.その後の経過は良好であったが, 99年7月, 造影CT上, 右肺動脈幹内に血栓を思わせる陰影欠損を認め, 再々発腫瘍が, 右肺動脈幹内へ浸潤進展したものと考えられた.99年9月17日, 死亡した.MFHなど肺原発の肉腫は元来まれであるが, これらの腫瘍では本例で見られたような肺動脈内腔への高度の浸潤進展を示すことがある.従って肺腫瘍において肺動脈血栓類似の所見を見た場合には, 鑑別疾患上, MFHなどの肉腫も考慮すべきと考える.