著者
朝倉 充彦
出版者
東北福祉大学教職課程支援室
雑誌
教職研究
巻号頁・発行日
no.2018, pp.1-11, 2019-03-31

2011年の滋賀県大津市の中学生いじめ自死事件を契機に,いじめ問題への国の取り組みは,いじめ防止対策推進法の制定,いじめ防止のための道徳教育の充実,その具体化としての道徳科の設置,および検定教科書の作成使用というようにすすめられてきた。そして,いじめ問題を主題とする道徳の授業では,弱さを克服しいじめや不正を許さない強い正義感を持つことをねらいとすることが期待されている。文部科学省が作成したいじめ問題を扱った教材「卒業文集最後の二行」を活用した授業では,いじめの被害者加害者の立場について考えることを通して,いじめを止めさせる仲裁者の出現を目指す。しかし,それは容易なことではない。むしろ仲裁を躊躇う弱さを恥じるのではなく,生徒皆が弱さを共有していることを認識し,集団の力でいじめに対峙していくことこそが今求められている。