著者
廣庭 裕
出版者
仙台白百合女子大学
雑誌
仙台白百合女子大学紀要 (ISSN:13427350)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.51-65, 2007

2006年度に施行された障害者自立支援法の目的は、「地域において」「自立した日常生活及び社会生活」の実現である。障害者自立支援法では目的を実現する手段として、ケアマネジメントの導入を図った。既に介護保険法によって導入されたケアマネジメントは、障害者のケアマネジメントにおいてもそのまま導入される危惧がある。その理由には、(1)介護支援専門員の受験資格と同様であり、すなわち、ケアマネジメント業務従事者(相談支援専門員)には多様な資格者が業務に就くこと、(2)高齢者では「自立した日常生活」、障害者では「自立した日常生活及び社会生活」が各法の目的で内容が異なるにもかかわらず、同様のケアマネジメントが展開される可能性がある。加えて、障害者の自立の意味を曖昧にしたまま、自立した生活の実現を図ろうとすることにある。ソーシャルワークは当事者の日々の生活から自己実現までを一環した支援として捉え支援にあたっている。そのため、アメリカにおけるケアマネジメントはソーシャルワークをベースに展開出来るよう、高齢者を対象とした「長期ケア実験プロジェクト」によって実践的な方法について検証を重ねた。その結果から、対象を児童・障害の分野へと拡げていった。精神障害者を対象に、家庭を中心に地域で生活が出来る実践的な支援もソーシャルワークをベースにした実践の1つである。アメリカにおけるケースマネジメントと高次脳機能障害者を対象にしたソーシャルワークによる地域支援の実践から、障害者に対するケアマネジメントに問題があるのではなく、運用の方法に問題があるのではないかと考えた。また、ソーシャルワークをベースとするならば、障害者の自立とは何か、障害者の生活をどのように捉えるべきかについても検証を行い、ソーシャルワークをベースとしたケアマネジメントの展開をすることが、障害者の地域支援に繋がることが分かった。
著者
郡山 昌明
出版者
学校法人白百合学園 仙台白百合女子大学
雑誌
仙白女大紀要 (ISSN:13427350)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.17-29, 2018-07-20

日本における戦後の社会福祉制度の仕組みは、国民の生活に対するニーズの変化に伴い1990年の社会福祉基礎構造改革で大きく変化した。基礎構造改革の理念は、2000年施行の介護保険制度や2006年施行の障害者自立支援法によって具現化された。これらの制度を効果的に遂行するため、援助技術のひとつであるケアマネジメントが導入され、様々な「ツール」を用いなが利用者のニーズに沿った支援が行われた。「ツール」は、利用者の立場にたった社会福祉サービスの提供を促進するために用いられている。保険医療機関の中では、特に、看護の分野でクリティカルパスという「ツール」が、数多く開発され使用されている。わが国の社会福祉や医療の分野では、「インフォームド・コンセント」や「利用者主体」、「自己決定」などの視点の垂要性が指摘されている。しかし、福祉の分野や医療の分野で使用されている「ツール」の内容や「ツール」研究を概観してみてみると、「利用者主体」「自己決定」という項目が反映されているものは極めて少ない状況である。介護保険制度や障害者自立支援法などで利用されている「ツール」または、看護の領域で使用されている「ツール」は、支援する側が情報を収集することが目的であって、利用者の主体性や自己決定を保障するものではないと言っても過言ではないと考える。筆者は、2006年に行った研究において、ソーシャルワークの分野で使用されているフェイスシートやアセスメントシートなど「ツール」の分類と定義を行った。その中で、「ソーシャルワーク過程において効率的に利用者のニーズと社会資源を結びつけ、利用者の選択の行使や自己実現が行われえるための道具」開発の必要性を唱えた。本稿は、看護の分野において使用されているクリティカルパスを検討し、保健医療福祉分野における「ツール」の先行研究を吟味し、不足している点を明らかにし、ソーシャルワーク過程における「ツール」に必要な構成要素を明らかにすることを目的にすすめていくものである。
著者
宮下 ひろみ
出版者
仙台白百合女子大学
雑誌
仙台白百合女子大学紀要 (ISSN:13427350)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.67-80, 2007

若年女性の調理能力について、34種の料理について質問紙法による11年間の調査を行った。総合的には、各料理の調理可能者数の割合の推移は各年若干の上下を繰り返しながら、ほとんど横ばい状態か、または緩慢な上昇状態を示し、調理能力の低下は認められなかった。10年前と最近の比較を行うと、多くの料理で最近3年間の調理可能計数の割合が高くなる傾向にあり、しじみのみそ汁、肉じゃが、ちらし寿司、だし巻き卵、きんぴらごぼう、炊き込みご飯、クリームシチュー(ルー不使用)、酢豚では有意な差がみられた。近年、社会で行われている伝えたい料理の調査類の結果からもわかるように、和食のよさの見直しや伝承の必要性が求められている状況が反映されていることが考えられた。仙台白百合短期大学の家政科人学生(11年間の前半)と仙台白百合女子大学の健康栄養学科入学生(11年間の後半)という対象の集団による違いによる34種の各料理の調理可能割合の比較を行った結果、5種をのぞく29種料理において健康栄養学科大学生の調理可能者数の割合が高く有意差が認められた。しかし、調理可他者数の割合が70%を超える料理はカレーライス、チャーハン、みそ汁、に加えオムレツ、市販ルー使用のクリームシチュー、お好み焼き、ハンバーグの7品に限られていた。調理法分類別にみると焼き物の調理可能者数割合は高く、煮物、蒸し物は前回の調査同様低い結果となった。得意な料理については4位までが主食系で占められ、カレーライス、チャーハンの上位2つは本調査における調理可能者数の割合が80%を超える料理と一致した。