著者
朝倉 隆太郎 Asakura Ryutaro
巻号頁・発行日
2000

筑波大学博士 (学術) 学位論文・平成13年1月31日授与 (乙第1687号)
著者
朝倉 隆太郎
出版者
The Geographic Education Society of Japan
雑誌
新地理 (ISSN:05598362)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.52-55, 1982

地理教育は地理学と教育学との交界領域にあり, これまで地理学又は教育学の応用面とみなされてきたが, 1960年代以来地理教育を学問として定立させようとする機運が高まってきた。<br>地理教育の研究方法には, 理論的研究法, 歴史的研究法, 調査的研究法, 実験的研究法, 比較的研究法の5者があり, これらは相互に補完し合うものである。<br>理論的研究では, 地理教育の目標・内容構成・カリキュラム・学習過程・学習形態・評価, 地理科担当教員の養成, 児童生徒の地理的意識の発達などが対象になる。<br>歴史的研究では, 明治以後の地理科教授要目・教科書戦後の社会科学習指導要領, 地理教育思想に関する歴史的研究が多くの成果をあげている。<br>調査的研究は, 一般に実態把握調査と解決策発見調査に2分されるが, 地理教育に関しては前者が多い。国研・文部省などで全国的規模での学力 (社会科地理を含む) の調査が行われるようになったのは戦後になってからである。また, 読図力, 地名に関する知識, 好きな国と嫌いな国などについて, 小学生から高校生まで各地で多くの調査が行われてきている。しかしまだその結果を体系化するまでにはいたっていない。<br>実験的調査法は地理の指導法・学習形態・学習過程の問題に適用される。1955年ごろから実験の信頼性を高めるための手続きについての論議が積み上げられ, 現在ではさらに統計学の実験計画法が導入されて, 教育実験におけるデータの科学的処理を向上させる努力が続けられている。日本国内ユネスコ委員会『国際理解のための教育実験』の「他国の理解」は, 地理教育の実験的研究の一礎石である。<br>教育の比較研究は, 教育における各種の事象を国, 地域, 学校等の間で比較することによって, 類似性と相違性を発見し, それらの相違を生む原因を究明し, 共通に見られる原理の発見を目指すものである。<br>昭和33年度改訂の小学校学習指導要領第4学年の内容に, イギリスの Sample studies が導入され, 昭和52年度の改訂でその考え方が第5学年の内容にまで広げられた。アメリカ合衆国のHSGP, イギリスの New Geography に採用されている games and simulation の指導法は, 一部を除いてまだ普及していない。小学校低学年の合科教授の参考として西ドイツの「事実教授」, フランスの「めざまし活動」は, 比較的研究からみた目下の研究対象である。<br>国際教育情報センターの外国教科書に関するこれまでの業績は高く評価すべきであり, 教科書研究センターは, 米・英・仏・独・ソ5か国を対象に, 教育課程 (教科書を含む) の国際比較研究を進行中である。