- 著者
-
木下 充代
- 出版者
- 日本比較生理生化学会
- 雑誌
- 比較生理生化学 (ISSN:09163786)
- 巻号頁・発行日
- vol.23, no.4, pp.212-219, 2006-11-20 (Released:2007-10-05)
- 参考文献数
- 48
我々ヒトは, 感覚情報の8割を視覚に頼っているといわれている。視覚の大切な機能のひとつに色覚がある。色覚は, 多くの動物に共有される感覚であると考えられている。ある動物の見ている色世界は, 行動実験によってのみ示すことができる。著者は, これまで鱗翅目昆虫であるナミアゲハの色覚能力について, 求蜜行動を指標にした学習弁別実験によって明らかにしてきた。アゲハは, 色覚だけでなく, 色の恒常性を持つ。単色光を学習したアゲハで測定した求蜜行動の感度は, 網膜にある色受容細胞の感度の高い波長域で高くなる。さらに, Y迷路を用いてアゲハが色を知覚できる最小サイズを測定すると, 学習した色に限らず約1度であった。複眼の空間分解能を規定する個眼間角度が約1度であることを考えると, アゲハの色覚では個眼ひとつが色知覚の最小ユニットになっているのかもしれない。