著者
飯田 雅絵 菅野 愛美 木島 明博
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.78, no.5, pp.934-944, 2012 (Released:2012-10-11)
参考文献数
26
被引用文献数
3 6

ヤマトシジミ種内の地域集団構造を調べるため,東アジアから採取したヤマトシジミおよび対照群において mtDNA-COI領域のシーケンス分析を行った。その結果,ヤマトシジミ種内では,1)ロシア・北海道・本州日本海側グループ,2)太平洋側グループ,3)朝鮮半島北東グループ,4)朝鮮半島南西グループの 4 つの明確なクラスターに分かれ,地理的分化による地域集団構造が示唆された。一方,利根川と桑名の 2 地域から採取したサンプルは地理的関係を反映しておらず,過去の移植放流の影響が推測された。
著者
木島 明博 藤尾 芳久
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.287-295, 1979-03-25 (Released:2008-02-29)
参考文献数
9
被引用文献数
1 4

The chum salmon populations collected from 21 rivers in Japan were analyzed by using as markers the three genes, Idh-A2, Idh-B2, and Ldh-Al, controlling IDH and LDH isozymes. (1) No differences in gene frequencies at the three loci were found between the sexes or between the years of catch. (2) Any two of the 21 river populations showed clear differences of gene frequencies, indicating that they are independent of each other. (3) The chum salmon populations in Japan could be divided into at least 3 groups: Hokkaido group, and the Pacific Ocean and Japan Sea groups of Honshu. (4) A geographical cline of gene frequencies was observed in each of the Pacific Ocean and Japan Sea groups of Honshu, the phenomenon suggests that there has been a mixing of chum salmon individuals between neighboring rivers, though on a small scale.
著者
木島 明博
出版者
東北大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

母系遺伝をし、交又しないとされている核外遺伝子のミトコンドリアDNAは、核内遺伝子(アイソザイム)と遺伝様式が異なることから、集団の世代を越えた繁殖構造を母系の観点から捉えることができる遺伝標識として近年脚光を浴びてきている。しかし、集団構造の解析に効果的に応用するためには、多くの個体の分析を簡単に行える手法の開発と、魚類のmtDNAの基本となる制限酵素切断地図の作成を行い、切断型の変異が塩置換によることを確認しなければならない。本研究はヤマトゴイおよびサクラマス類を対象として以下のことを明らかにした。(1)ヤマトゴイとサクラマス類のmtDNA精製度の高い簡易単離法として、木島ら(1990)のアルカリ処理法にグラスビ-ズによる精製法を加えた一連の手法を開発した。(2)ヤマトゴイのmtDNAを15種類の制限酵素で切断し、5種類のハプロタイプの存在を明らかにした。(3)これらの制限酵素切断型変異から5種類のハプロタイプの制限酵素切断地図を二重消化法によって作成した。(4)作成した制限酵素切断地図の比較によってヤマトゴイの制限酵素切断型の変異が単純な塩基の置換によって起こっていることを示唆した。(3)(2)によって、制限酵素切断片の長さの比較(RFLP)によってヤマトゴイのmtDNA分析による比較ができることを確認できた。また、魚類においても同様にRFLP法によってmtDNAの制限酵素切断型変異の比較ができることを示唆した。(4)そこで6塩基認識の6種類の制限酵素を用いてサクラマス2系統、ヤマメ1系統、アマゴ1系統の養殖集団のmtDNAの切断型変異を明らかにし、特別な選択を行っていないサクラマスとヤマメは天然からいくつかの母系が起源となって繁殖されているが、パ-に選択を重ねたアマゴは単一母系から生産されているという繁殖構造が推定された。