- 著者
-
木島 英夫
- 出版者
- バイオフィリア リハビリテーション学会
- 雑誌
- バイオフィリア リハビリテーション学会研究大会予稿集
- 巻号頁・発行日
- vol.2013, pp.265, 2013
本調査研究の当初計画は,歩行器を用い,高齢者の歩行能力を維持し日常生活の自立をすすめるであった. 在宅での歩行器利用によるADL向上について,顕著な成績を上げ,終了したことは,高齢化が進み老後を心配する国民の不安を一部でも和らげるために,喜ばしい.テクノエイド協会から指導があり,「脳血管障害や下肢骨折を受傷した後でも,高齢障害者が自分で生活できる健康を取り戻すことを可能にする,老健施設で実施されているタキザワプログラムによる創動運動の実施に係る評価研究」を今回の研究に追加した.追加により,「介護・依存から自立へ」と題した我々の進めている研究を,研究助成の下で実施できたことは価値が高い. 研究結果が国民福祉向上に寄与できることを確信している. 藤沢市民病院開院以来高い効果を上げ続けてきた訓練手法の実施を,受傷後慢性期廃用性の後期高齢者に対し,藤沢市機能訓練会で藤沢の整形外科医師らが見てきたのと同様に,リハ医師をはじめ10人以上の専門家が実施現場で確認した. そしてその効果を,定性的評価とはいえ,評価し得たことは画期的である. 今後の研究の方向性,普及の必要性を公的に報告できたことは研究の進度に大きな影響を与える. 過去30年にわたる経験から,福祉用具研究開発実施(進捗)状況報告書に報告の通り,この手法は中枢性の麻痺にたいして痙性発生を予防し,改善する効果があるものと考えられ,その機序の解明が望まれる. 我々は特定の一施設に入所している入所者のみが,「インペアメントレベル(解剖学的機能損傷)からの日常生活自立」のためのリハビリテーションを実施でき,受益できるのではなく,日常生活を自立したいと願う全ての高齢障害者に提供できるよう願い研究している. テクノエイド協会の指導で研究し得たことにより,現在実施している我々の研究に新たな研究者の参加が可能になり,そして新たな研究者の参加は,研究をさらに促進するに違いない. 終わりに,滝沢茂男氏は,政治家として大成することを嘱望された藤沢市の青年議員であった. 高齢社会への深い洞察を持ち,広い視野を持っていたからこそ,誰も気づく事のなかった訓練結果と手法の特異性,そして手法のシステム化・プログラム化が可能なほどの合理性に気づき,市会議員の座を投げ打ち,引退する県会議長の出馬要請に応じることなく,この研究に取り組んだ. そして氏がこのプログラムを社会に提供するため持てる全ての手段を用いて奮闘する姿に感銘を受け,協力を惜しまず研究を共にしてきた多くの同志がいた. これら無私の活動の成果として,公的報告が可能になったとも言える. 氏の願いであり,我々の願いである「団塊世代高齢化による社会崩壊を防ぐ」を実現する為に,本年アムステルダムで開催される第一回世界リハビリテーション医学会(The International Society of Physical and Rehabilitation Medicine)において,我々は共に,「創動運動による寝たきりからの歩行再獲得と,団塊世代高齢化による社会崩壊を防ぐ為の方法の提案」(Re-acquirement of walking from bedridden by motivative exercise and proposition of the solution to the aging crisis)を発表する. 我々の研究が本研究報告を契機に今後ますます実りあるものになる事を確信している.