著者
木村 忠直 永井 真由美 白石 葉子 白石 尚基 猪口 清一郎
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.601-609, 2000-10-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
29

声帯筋を含む甲状被裂筋における横断面の100ポイントから求めた単位面積1mm2あたりの筋線維数は, 男女25例 (♂14, ♀11) の平均値で639.8±48.6であった.収縮機能が異なる筋線維型の比率の平均値は, 緊張性収縮と持久力を有するタイプIの赤筋線維が43.7%で最も高かった.次いでタイプIとIIの両形質を示すタイプIIIの中間筋線維が28.8%, 速動性と瞬発力を発揮するタイプIIの白筋線維が27.6%となり, タイプIの赤筋線維の割合は有意に高かった.また筋線維型の性差を比較すると女性ではタイプIIIの中間筋線維が, わずかに高いのに対し, 男性ではタイプIの赤筋線維とタイプIIの白筋線維が高かったが, それぞれ有意差はみられなかった.また甲状被裂筋と前脛骨筋との比較では, 甲状被裂筋の赤筋線維が有意に高かった.以上の結果よりヒトの発声に関与している声帯筋を含む甲状被裂筋はタイプI型の赤筋線維の比率が多い筋であることが示された.
著者
木村 忠直
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.141-147, 2000

多くの哺乳類における大腰筋は相同形態であるが,長い進化の過程で骨盤の解剖学的な特徴と生態行動の適応を強く受けていることが示唆される.そこで骨格筋を構築している3タイプの筋細胞をヒト,オランウータン,アヌビスヒヒ,ハマドラスヒヒ,ニホンザルの大腰筋をモデルとして,その筋線維構成を比較検討した結果,ヒトの大腰筋は持久力を発揮するタイプI型の赤筋線維の頻度が最も高く,逆にオランウータン,ヒヒ,ニホンザルでは瞬発力を発揮するタイプII型の白筋線維が高いことが示された.この差はヒトの直立二足姿勢とオランウータンやサルの四足姿勢によるロコモショーンの機能分化が筋線維構成に反映していることを示すものである.