著者
砂川 紘之 武士 甲一 亀山 邦男 木村 栄 白石 圭四郎 安藤 芳明
出版者
Japanese Society of Food Microbiology
雑誌
食品と微生物 (ISSN:09108637)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.123-128, 1986

1984~1985年に北海道内で発生した3件のウェルシュ菌集団食中毒事件の概要と分離菌株の性状について述べた.<BR>事件1は, 1984年9月22日稚内市内の某療養所において発生した. 患者は23名 (発病率24.0%) で, 下痢, 腹痛を主徴とし, 原因食品は病院内給食が疑われたが確定できなかった. 患者8名中5名, 健康者18名中6名からエンテロトキシン産生, カリウム型発芽芽胞形成菌が検出された. これらの菌は, Hobbs血清型別不能であった.<BR>事件2は, 1984年9月28日札幌市内の某鉄工団地において発生した. 患者は769名 (発病率45.6%) で, 下痢, 腹痛が主症状であった. 原因食品は, 鉄工団地内の給食センターが供給した弁当中の「コンニャクのタラコあえ」であった. 患者19名中11名, 従業員6名中2名, 原因食品2検体中1検体よりHobbs血清型4型に型別されるエンテロトキシン産生, カリウム型発芽芽胞形成菌が検出された.<BR>事件3は, 1985年4月19日網走市内の小, 中学校各1校において発生した. 患者数は, 686名 (発病率51.9%) で, 下痢, 腹痛が主症状であった. 原因食品は, 同市内某食品会社が供給した「給食弁当 (ミルクファイバーライス) 」であった. 患者26名中16名からウェルシュ菌が検出され, そのうち試験した13名中9名からエンテロトキシン産生菌が検出された. また, 従業員4名中3名, 原因食品3検体中3検体からエンテロトキシン産生菌が検出された. これらのエンテロトキシン産生菌はHobbs血清型5型, カリウム型発芽芽胞形成菌であった.