著者
神谷 拓磨 松橋 珠子 細井 美彦 松本 和也 宮本 圭 本上 遥 久米 健太 樋口 智香 奥野 智美 山本 真理 越智 浩介 井橋 俊哉 辻本 佳加理
出版者
日本繁殖生物学会
雑誌
日本繁殖生物学会 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.111, pp.P-54-P-54, 2018

<p>【目的】分化した体細胞核を未受精卵子内に移植することにより,リプログラミングが誘導され,クローン動物の作出が可能となる。未受精卵を用いてクローン胚を作成する場合,細胞分裂やDNA複製を経て,移植された体細胞核から胚性遺伝子が発現を開始するため,細胞分裂やDNA複製は転写のリプログラミングに不可欠な要素の一つと考えられてきた。そこで本研究では,転写リプログラミングにおける細胞分裂やDNA複製の寄与を明らかにするため,マウス初期胚を用いて細胞分裂及びDNA複製非依存的に体細胞核の転写リプログラミングを誘導する核移植法の開発を目指す。【方法】C57BL/6雌マウスとDBA/2雄マウスを用いてIVFを行い,その後mKSOM培地で4細胞期胚まで培養した。4細胞期胚をDemecolcine添加培地に移し,細胞周期をG2/M期に停止した。G2/M期停止4細胞期胚にTransgeneによりトレース可能な細胞株を移植し,24時間後に免疫染色を行い,共焦点顕微鏡下で移植細胞核の構造的な変化を観察した。また,G2/M期停止4細胞期胚にC2C12筋芽細胞を核移植し,α-amanitinによって転写を阻害した区と非添加区に分け24時間培養後,RNA-seqによって遺伝子発現を調べた。【結果】免疫染色の結果,移植した細胞核が24時間以内に急速なリモデリングを受け,胚由来の核と似た構造を示すことが分かった。移植核中には2番目のセリンがリン酸化を受けたRNA PolIIが確認され,移植後の細胞核は転写活性を有することが分かった。次にRNA-seqの結果,初期胚で高発現する遺伝子の多くが核移植した4細胞期胚から新たに転写されることが分かった。さらに,Utf1やEsrrbなど4細胞期からES細胞にかけて発現の高い遺伝子の転写も確認した。以上の結果より,マウス4細胞期胚を用いた新規核移植法を示した。また,本実験で発展した核移植法により,細胞分裂及びDNA複製非依存的に体細胞核の転写リプログラミングが誘導できる可能性が示唆された。</p>