著者
谷脇 聡 伊藤 寛 全並 秀司 山下 年成 寺下 幸夫 本多 弓尓 江口 武史
出版者
The Japanese Society of Gastroenterological Surgery
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.34, no.11, pp.1675-1679, 2001
被引用文献数
2

Hirschsprung病(以下, 本症)は, ほとんど, 乳児期までに腹満, 高度の便秘を契機に診断され, 根治手術が施行される. 今回, 我々は本症成人例の2例を経験した. 症例1は23歳の男性. 便秘・腹満の増悪と腹痛により来院. 症例2は47歳の女性. 主訴は発熱, 下痢, 食欲不振. 体重減少(9kg/2か月)を伴い, 来院時, 貧血と, 糞便貯留による閉塞性腸炎の所見が著明で, 他の炎症性腸疾患との鑑別を要した. 2例とも, 幼児期より高度の便秘がみられ, 浣腸, 下剤によりコントロールされていた.注腸造影X線検査で直腸下部にcaliber changeを認め, 直腸肛門管内圧検査では内括的筋弛緩反射は見られなかった. 手術は, Duhamel-池田法を行い, 術後, 症状は著明に改善した. 小児外科が確立された現在, 成人まで本症と診断されない症例は稀であるが, 小児期から持続する難治性の便秘と巨大結腸像を認める症例では, 本症を念頭においた検索が重要であると考えられた.