著者
萩原 千恵 北川 大 堀口 慎一郎 山下 年成 黒井 克昌
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.75, no.8, pp.2130-2135, 2014 (Released:2015-02-28)
参考文献数
22
被引用文献数
1

乳腺matrix producing carcinoma (以下MPC)の2症例を経験したので報告する.症例1は51歳女性.左乳癌T2N0M0 Stage IIAの診断で乳房切除術+センチネルリンパ節生検を施行した.病理診断はMPC,pT2,ER(-),PgR(-),HER2(-),sn0/2.術後TC療法を4コース施行し,術後4年5カ月の時点で無再発生存中である.症例2は48歳女性.左乳癌T1N0M0 Stage Iの診断で乳房部分切除術+センチネルリンパ節生検を施行した.病理診断はMPC,pT2,ER(-),PgR(-),HER2(-),sn0/4.術後,治験(BEATRICE試験)に参加し,EC療法4コースとBevacizumabを投与したが,術後12カ月で多発肺・骨・肝転移が出現した.その後,weekly paclitaxelを開始したが奏効せず術後1年6カ月で永眠された.
著者
谷脇 聡 榊原 堅式 山下 年成 横山 智輝 寺下 幸夫 伊藤 寛
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.66, no.9, pp.2189-2193, 2005
被引用文献数
2

腸回転異常や器質的な異常を伴わない小児の原発性小腸軸捻転症(以下,本症)は稀であり,術前診断は困難である.今回,われわれは新生児の本症3例を経験した. 3例とも男児で,日齢2以内に発症し,出生体重は1,500から2,286grと全例,低出生体重児であった.症状は全例腹部膨満を認め, 2例で,各々,コーヒー残渣様嘔吐と呼吸障害を伴った.注腸造影で大腸の位置異常は認めなかった.開腹手術時,症例1,2では遠位回腸が時計方向に360°.捻転していたが,整復により腸管の色調が回復し腸切除を行わなかった.症例3では近位空腸が, 720°.反時計方向に絞扼し,一部腸管壊死が認められ,腸切除を行っている. 3例とも,術前に確定診断はできなかったが,著明な小腸拡張を伴い,保存的治療では解除困難なイレウスであることから,早期に開腹手術を行い救命している.
著者
谷脇 聡 伊藤 寛 全並 秀司 山下 年成 寺下 幸夫 本多 弓尓 江口 武史
出版者
The Japanese Society of Gastroenterological Surgery
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.34, no.11, pp.1675-1679, 2001
被引用文献数
2

Hirschsprung病(以下, 本症)は, ほとんど, 乳児期までに腹満, 高度の便秘を契機に診断され, 根治手術が施行される. 今回, 我々は本症成人例の2例を経験した. 症例1は23歳の男性. 便秘・腹満の増悪と腹痛により来院. 症例2は47歳の女性. 主訴は発熱, 下痢, 食欲不振. 体重減少(9kg/2か月)を伴い, 来院時, 貧血と, 糞便貯留による閉塞性腸炎の所見が著明で, 他の炎症性腸疾患との鑑別を要した. 2例とも, 幼児期より高度の便秘がみられ, 浣腸, 下剤によりコントロールされていた.注腸造影X線検査で直腸下部にcaliber changeを認め, 直腸肛門管内圧検査では内括的筋弛緩反射は見られなかった. 手術は, Duhamel-池田法を行い, 術後, 症状は著明に改善した. 小児外科が確立された現在, 成人まで本症と診断されない症例は稀であるが, 小児期から持続する難治性の便秘と巨大結腸像を認める症例では, 本症を念頭においた検索が重要であると考えられた.