著者
森下 正修 本島 優子 Masanao MORISHITA Yuko MOTOSHIMA
出版者
京都府立大学福祉社会学部福祉社会研究会
雑誌
福祉社会研究 (ISSN:13471457)
巻号頁・発行日
no.4, pp.41-51, 2004

本研究では、親が子どもについて日常的に抱いている発達への期待と、子どもに対する叱る行為、および子どもの行動実現の三者の関係について検討した。設定された7領域の行動のすべてにおいて、当該行動についての親の発達期待が高いほど子どもの行動実現も進んでいることが明らかとなった。ただし、親の発達期待の高さは叱る行為の増加には必ずしもつながらないこと、また叱る行為の持つ行動実現への効果はほぼ認められないかもしくは負の影響を及ぼすことが示された。こうした結果から、親が子どもに対して抱いている素朴な発達期待は、ある行動ができないことを叱るという行為を媒介せずに、他の何らかの意識的・無意識的な方法を通じて、子どもの行動の獲得を促進させることがわかった。
著者
本島 優子
出版者
京都大学大学院教育学研究科
雑誌
京都大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13452142)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.299-312, 2007-03-31

本稿では、妊娠期の母親の表象世界の中でも特に重要とされる、お腹の子どもや母親としての自己についての表象に関して、主にアタッチメント研究領域で蓄積されてきた、これまでの実証的知見を概観・整理し、論考することとする。
著者
本島 優子
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.133-142, 2017 (Released:2019-09-20)
参考文献数
41

本研究では,母親の情動認知と乳児のアタッチメントとの関連性に着目し,母親の敏感性を統制したうえで,母親の情動認知が乳児のアタッチメント安定性を独自に予測するかについて,縦断データを用いて実証的検討を行った。生後2ヵ月に日本版IFEEL Picturesを用いて母親の情動認知を測定し,また母子相互作用場面における母親の敏感性について測定した。そして,生後18ヵ月に家庭での観察に基づき,アタッチメントQ.ソート法を用いて乳児のアタッチメント安定性の評定を行った。階層的重回帰分析の結果,生後2ヵ月にIFEEL Picturesを用いて評定された母親の情動認知の特性が,母親の敏感性とは独立して,生後18ヵ月の乳児のアタッチメント安定性を予測したことが認められた。すなわち,乳児表情写真において喜びや悲しみの情動をより的確に認知していた母親の乳児ほど,後のアタッチメント安定性がより高かったのである。母親の情動認知の特性が乳児のアタッチメント形成に一定の役割を果たしていることが示唆された。