- 著者
-
本島 優子
- 出版者
- 一般社団法人 日本発達心理学会
- 雑誌
- 発達心理学研究 (ISSN:09159029)
- 巻号頁・発行日
- vol.28, no.3, pp.133-142, 2017 (Released:2019-09-20)
- 参考文献数
- 41
本研究では,母親の情動認知と乳児のアタッチメントとの関連性に着目し,母親の敏感性を統制したうえで,母親の情動認知が乳児のアタッチメント安定性を独自に予測するかについて,縦断データを用いて実証的検討を行った。生後2ヵ月に日本版IFEEL Picturesを用いて母親の情動認知を測定し,また母子相互作用場面における母親の敏感性について測定した。そして,生後18ヵ月に家庭での観察に基づき,アタッチメントQ.ソート法を用いて乳児のアタッチメント安定性の評定を行った。階層的重回帰分析の結果,生後2ヵ月にIFEEL Picturesを用いて評定された母親の情動認知の特性が,母親の敏感性とは独立して,生後18ヵ月の乳児のアタッチメント安定性を予測したことが認められた。すなわち,乳児表情写真において喜びや悲しみの情動をより的確に認知していた母親の乳児ほど,後のアタッチメント安定性がより高かったのである。母親の情動認知の特性が乳児のアタッチメント形成に一定の役割を果たしていることが示唆された。