著者
本庄 加代子 栗木 契
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.63-72, 2022-09-30 (Released:2022-09-30)
参考文献数
14

企業が不祥事を起こした時,どのように信頼と業績を回復させるのだろうか。ITエンジニアの派遣企業であるアクサス株式会社は,2018年労働局から行政処分を受けた。危機に瀕した同社であったが,インターナルブランディングの取組みにより,リストラをせずに組織の体質改善を図り,長年懸案であったビジネスモデルを抜本的に変えながら,事業の成長基調を取り戻した。2022年現在の同社は,理念・ビジョンの浸透が進み,業績の拡大が続く。本稿では,アクサスの取り組みを時系列で追う中で,Kotter(1995, 2012)の企業変革における段階的プロセスが見出された。とりわけ意図せざる不祥事そのものが,インターナルブランディングを更に加速させていたことを確認した。結論として,(1)組織文化を変革するためのツールとしてインターナルブランディングは有効であり,アクサスでは(2)組織に短期的成果を見せつつ(3)危機を逆手に,求心力を高め(4)現場に理念・ビジョンの解釈の余地や裁量など自由度を与えながら(5)ビジネスモデルの転換による新たな成長機会の獲得へと至っていたことが確認される。
著者
本庄 加代子
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.60-65, 2020-03-31 (Released:2020-03-31)
参考文献数
39

本稿は,消費文化論とブランド研究の架け橋とされるHoltのカルチュラルブランディングについて,問題意識,依拠する学問,ブランドの捉え方に注目し,ブランド研究に対する意義を考察する。同モデルは文化とブランドという超越的な概念とその形成の道筋を扱っている。これは,解釈主義に位置づけられるが,共約不可能とされる伝統的パラダイムを補完し,更に戦略的柔軟性と実践性を備えている。ここでは,ブランドは,強くなればなるほど社会的批判を受けやすくなることが問題として示されている。このことから,ブランドの理想形とは社会的問題の解決手段でもあり,絶対的資質のものではなく,経営目標と合致する“状態”である可能性を示している。その動態性を前提とした理論の更なる洗練が必要であることが指摘できる。
著者
本庄 加代子
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.94-103, 2020-09-29 (Released:2020-09-29)
参考文献数
14

本稿はユニクロのブランド・イメージとそのブランドマネジメントのプロセスを辿る事例研究である。同社は,創業当初からグローバル化を強く意識し,創業30周年目には,確たるグローバルブランドへと成長した。そして今衣服の概念を超え,LifeWearという新しい「服」市場をも創造しつづける。本事例は同ブランドの15年間の事業活動とCIやBIを軸とした情報発信,その結果がどのようにブランド・イメージを形成したのかを追跡し,ブランド価値を発展させるための要諦の導出を試みる。