著者
坪井 知則 平野 義男 木下 一次 大島 光子 本水 昌二
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.309-314, 2004 (Released:2004-09-13)
参考文献数
14
被引用文献数
7 9

化学的酸素要求量(COD)の迅速定量についてフローインジェクション/吸光光度定量の検討を行った.過マンガン酸カリウムを酸化剤として用い,この酸化反応の反応時間を促進させ,短縮するため触媒を用いる方法について検討した.その結果,白金チューブを反応コイルとして用いることにより,酸化反応が促進され測定時間を大幅に短縮できることが分かった.白金チューブ反応コイルのフローインジェクション分析(FIA)法への適用について詳細な検討を行った結果,D-グルコースを標準物質としたとき,検量線は0~100 ppmの範囲で良好な直線性を示した.S/N=3に相当する検出限界は0.01 ppmであり,5,10,20,50,100 ppmのD-グルコースに対する相対標準偏差は,それぞれ0.9,0.8,0.8,0.5,1.4% であった.本FIA法は,排水のCOD迅速定量に適用可能であり,またCODモニターとして利用できる.
著者
樋口 慶郎 井上 亜希子 坪井 知則 本水 昌二
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.253-259, 1999-02-05
参考文献数
15
被引用文献数
4 13

ガス透過分離におけるガス透過の長期間の安定性と高効率化, 更にガス透過効率の長期間の再現性を向上させた, 新しいオンラインガス透過システムを構築した. このシステムでは新しく設計・製作したガス透過ユニットを組み込み, ユニット中を溶液が下方から上方に流れるようにし, 気泡の発生を防ぐ工夫がほどこされ, 更に測定後にガス透過ユニット内に滞留する溶液を排除するために2個の六方切り替えバルブを内蔵させている. ガスの安定的透過のために温度制御できる小型恒温槽を装着した. この装置中にガス透過ユニット, アンモニウムイオン定量用の反応コイルなどを組み入れ, 精密測定の向上を目指した. ガス透過ユニットは, 多孔質ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)チューブとガラス管からなり, 接続には樹脂製フェラル及びO-リングを用い, 組み立てを容易にし, デッドボリュームも小さくした. ガス透過ユニット, 反応コイル及び試料注入器などを恒温槽の中で一定温度に保つことにより, 安定した再現性の良い測定が可能となった. ガス透過ユニット内に滞留する溶液を簡単かつ迅速に強制排除する機能も備えており, 測定後はガス透過ユニット中の溶液を除いておくことにより, 多孔質チューブの透過性能が長期間維持され, 再活性化の操作をすることなく, 高いガス透過効率を維持することができた. 本システムを用いると, 検量線は0〜10, 0〜1.0ppmの範囲で良好な直線性を示し, 1時間当たり80試料の分析が可能となった. 実際に, 河川水中のアンモニウムイオンの定量を行ったところ, インドフェノール誘導体/FIA/吸光光度法による定量値と良く一致し, 試料に対する相対標準偏差は0.51, 0.83%で, 回収率は97〜98%と良好であった.
著者
高 雲華 本水 昌二
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.45, no.12, pp.1065-1082, 1996-12-05
被引用文献数
16 11

水溶液でのイオン性界面活性剤の定量について研究した.発色反応試薬系としては, 酸性染料のテトラブロモフェノールフタレインエチルエステル(TBPE), 陰イオン性アゾ染料のメチルオレンジ系及びフェニルアゾフェノール系試薬について検討した.これらの試薬陰イオンを用いて陽イオン界面活性剤とのイオン会合定数及び陽, 陰イオン界面活性剤間のイオン会合定数を求め, 反応性について考察した.これらのイオン会合反応に基づき, バッチ法による吸光光度定量, フローインジェクション吸光光度定量, 光度滴定について検討した.特に新しい試みとして, イオン会合滴定法について詳細な検討を行った.イオン会合滴定における滴定曲線を, 試料イオンと滴定イオン間のイオン会合定数, 指示薬とのイオン会合定数を用いてシミュレーションし, 微分による滴定終点と当量点との整合性について考察した.本滴定法では, 10^<-6>Mまでの陽イオン界面活性剤及び陰イオン界面活性剤が定量できる.又, 実際試料の滴定結果は二相滴定法のJIS法及び溶媒抽出吸光光度法とよく一致した.
著者
弘中 孝志 大島 光子 本水 昌二
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.36, no.8, pp.503-507, 1987-08-05
被引用文献数
5 13 6

吸光光度検出器を用いたイオンクロマトグラフィーによる,河川水中の総炭酸(炭酸,炭酸水素イオン及び炭酸イオンの合量)の定量法が検討された.吸収を示す溶離イオンとしては,トリメリット酸イオン(1,2,4-ベンゼントリカルボン酸イオン)を用い,陰イオン交換カラム(TSK gel IC-Anion-PW,4.6mm i.d.×50mm)を用いた.試料中のカルシウム,マグネシウムイオンは,溶離イオンのカルボン酸イオンと反応し,総炭酸の定量に影響を与える. この妨害は,Na型に変えたイオン交換型試料前処理カートリッジカラム(Toyopak IC-SPM)に試料を通すことにより完全に除くことができた.試料中の陰イオンにより,追い出されてきたトリメリテートイオンの吸収は炭酸水素イオンのピークに影響を与え,負の誤差を生じる.この誤差は,試料中に共存する陰イオンのピークの面積の和を用いることにより補正可能であることが分かった.阿川水中の総炭酸の定量を行ったところ, FIAにより得られた値と良く一致した.
著者
本水 昌二
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.147-170, 1989-04-05
被引用文献数
29 33

イオン会合を利用する新しい分離法と分析法の開発に関する研究を行った。イオン会合の概念をより明確にするための基礎検討を行い、イオン会合のしやすさ,抽出のされやすさについて考察した。イオン会合の様式を静電引力型と疎水構造型に分け、それぞれ静電引力型イオン会合性試薬と疎水構造型イオン会合性試薬を対応させた。疎水構造型イオン会合性試薬を用いる抽出分離法において、イオン会合体の抽出性に及ぼす抽出溶媒の影響、イオン会合性試薬の影響について検討し、それらを基に抽出定数 (log K_<ex>)の推算法について考察した。四塩化炭素を基準にした場合の溶媒の抽出能(イオン会合体の抽出のしやすさ)は万丁値と良好な直線関係を示す。抽出定数はlog K_<ex>=C+A(C:対陽イオンの抽出性の尺度、A:対陰イオンの抽出性の尺度)で表されるものとし、各種陽、陰イオンのC値、A値を決定した。又イオン骨格と置換基の寄与(π値)を用いるC値、A値の概算法も示した。log K_<eX>を推算し、あるいは実測値を用いて、新しい抽出分離法と吸光光度法を設計し、実際にも有用な方法多数を'開発した。溶媒抽出を用いない方法についても検討した。水溶液での疎水構造型イオン会合体生成に基づく新規定量法として、酸一塩基反応を伴う吸光光度法2方法を検討した。一つはイオン会合体の可溶化現象を用いるもので、リン、ケイ素の定量例が示された。もう一つはイオン会合体のミセル抽出現象を用いるもので、アルキルアミン、第四級アンモニウムイオンについての検討例を示した。更に、イオン会合の概念が適用できる例として、逆相分配クロマトグラフィー及びイオン交換クロマトグラフィーによる疎水構造型イオンの分離定量例も示した。
著者
本水 昌二 大島 光子 胡 焔
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.42, no.11, pp.667-672, 1993-11-05
被引用文献数
1

2,3,4位にアルキル基を持つN-アルキルピリジニウム塩(アルキル基 : CH_3-, C_2H_5-, C_3H_7-)26種を合成し, イオン会合抽出性について検討した.水-クロロホルム抽出系で, 対イオンとしてエチルオレンジのジクロロ誘導体(Cl_2-EO^-)を用いて抽出定数(log K_<ex>)を求めた.アルキル基の炭素数が増すと抽出性も増し, 抽出定数への寄与分は2,3,4位の置換基では平均0.59,N-置換基では平均0.54であった.アルキル基が同じ場合には, 抽出定数は4位>3位>2位置換体の順に小さくなる.2位置換体は隣接のN-置換基との重なり効果の結果, 3,4位置換体よりも小さくなる.基本骨格(C_5H_5N^+-)の抽出性の尺度(C : >N^+<を基準C=0とする)は約2.2となり, メチレン基の数から単純計算した値(0.59×5=2.95)よりも0.75小さい.これはベンゼン環(-C_6H_5)の単純計算値と実測値との差(0.64)とほぼ一致しており, 閉環効果による抽出性(疎水性)の減少分と見なされる.
著者
本水 昌二 桐栄 恭二
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.213-218, 1978
被引用文献数
5 9

第4級アンモニウムイオンと金属錯陰イオンとのイオン対の溶媒抽出系に適当な1価陰イオンを加えることにより,過剰の試薬を有機相から水相に移し,目的とする金属錯陰イオンのみを選択的に抽出することができる.これにより,今まで不可能であった波長での吸光光度定量も可能となり,又感度,再現性もよくなる.この原理により,2-ニトロソ-1-ナフトール-4-スルホン酸(ニトロソーNW酸)を用いる銅の吸光光度定量法を確立し,鉄鋼試料中の銅の定量に応用した.<BR>すなわち,鉄鋼試料を王水で溶解し,過剰の酸を加熱除去した後定容とし試料溶液とする.この一定量を抽出管に取り,アスコルビン酸で銅を還元し,塩化物イオンの存在下,ゼフィラミンークロロホルム溶液と振り混ぜて銅(I)-クロロ錯体を抽出する.有機相に希過酸化水素水とニトロソ-NW酸溶液を加え振り混ぜて銅(II)-ニトロソ-NW酸錯体を抽出する。有機相を0.35M塩化ナトウリム溶液(pH9)と振り混ぜ過剰の試薬を除去した後,307.5nmで吸光度を測定する.この波長におけるモル吸光係数は4.5×10<SUP>4</SUP>1mol<SUP>-1</SUP>cm<SUP>-1</SUP>である.この方法により,NBS鉄鋼標準試料中の(0.06~0.35)%程度の銅が定量された.
著者
本水 昌二
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.31-36, 1984-01-05
被引用文献数
9 16

ホークロロホルム系でのイオン会合抽出におけるイオンの抽出性の相対的尺度として,陽イオンに対しC直,陰イオンに対しA直を割り当てた.これらの値の算出の際の基準にはアルキル鎖及び水素原子を全く持たない仮想的な陽イオン[-N-]^^^<|+>___|をとった.C直,A値と抽出定数(1ogD_<ex>)の関係は,logK_<ex>=C+Aで表される.陽イオンとして14種の第四級アンモニウムイオン,テトラフェニルホスホニウム(アルンニウム)イオン,5種のアゾ系染料陽イオン,7種のトリフェニルメタン系染料陽イオン及びメチレンブルーのC直を決めた.又π値(置換基の寄与)を用いるC値の計算方法についても考察した.C値を用い,無機,有機陰イオンのA値も決定した.得られたC値及びA値を用いて約150種のイオン会合体の抽出定数を推定し,既報の実測値との比較をしたところ,±0.3log単位程度の誤差であった.又著者以外により報告されている抽出定数との一致も良好であった.
著者
後藤 晃範 大島 光子 高柳 俊夫 本水 昌二
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.53, no.9, pp.919-923, 2004 (Released:2004-12-24)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

水溶液一相系でイオン会合反応を利用する陰イオン界面活性剤直接定量のための陽イオン性染料を新規に合成した.基本骨格はシアニンとし,二つのNに炭素数の異なるn -アルキル鎖を導入した四級塩染料を合成した.アルキル鎖の炭素数4と6のものは新規合成化合物であり,pKaを求めた.炭素数2と3の市販品と合成した陽イオン試薬を用い,吸光光度法により陰イオン界面活性剤(DBS)との最適反応条件を検討した.3,3'-ジヘキシル-2,2'-チアシアニン(DHT,C6の試薬)を用いて,10-6 MオーダーのDBSを定量することができ,検出下限は4×10-7 Mであった.また,疎水性相互作用により,非イオン性界面活性剤,陽イオン界面活性剤とも反応することが分かり,DHTとのイオン会合定数を求めた.