著者
岩崎 雄一 本田 大士 西岡 亨 石川 百合子 山根 雅之
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.201-206, 2019 (Released:2019-09-10)
参考文献数
21
被引用文献数
1

水生生物保全を目的とした水質環境基準が設定された直鎖アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩 (LAS) の濃度が高い河川地点の特徴を評価するために, 2015年度の水質測定結果を用いて, LAS濃度が0.02 mg L-1 (淡水域の水質環境基準の最小値) を超過する河川地点 (LAS高濃度地点群) とLAS濃度が0.02 mg L-1以下の地点において, ①水面幅 (河川規模の指標) , ②周辺の土地利用, ③有機汚濁 (生物化学的酸素要求量:BOD) の程度を比較した。その結果, LAS高濃度地点群は, ①水面幅の変化が少なく小規模の河川, ②周辺に森林や農地が少なく, 住宅地や市街地が密集している都市域, ③BODが高く有機汚濁が進行した河川, に割合として多くみられることが示唆された。着目する化学物質について高濃度地点の特徴を把握することは, 水生生物の保全効果という観点から管理方策を検討する上で有用な判断材料となるだろう。
著者
本田 大士 トーンクヴィスト マルゲリータ 西山 直宏 笠松 俊夫
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
vol.40, 2013

化学物質とヘモグロビン(Hb)との結合体,Hbアダクトは化学物質の暴露マーカーとして広く活用されており,グリシドール(G)はN-(2,3-dihydroxy-propyl)valine (diHOPrVal)として,Hbアダクトを形成する。今回我々は,G暴露評価指標としてのdiHOPrValの有用性を確認するため,用量相関性,生体内安定性,<I>in vivo</I> dose (AUC)予測性について解析を実施した。まず,用量相関性を確認するため,異なる用量のGをSDラットに単回経口投与し(0-75 mg/kg),投与1日後にdiHOPrValをGC-MS/MSを用いて定量した。diHOPrVal形成量とG投与量の間には,高い相関性が認められた(R<sup>2</sup> = 0.943)。次に,生体内安定性を確認するため,一定用量(12.5 mg/kg)のGをラットに単回経口投与し,投与後10-40日におけるdiHOPrVal量を定量することで,Hbアダクトの消失挙動を解析した。一次消失を仮定したとき,消失速度定数(<i>k<sub>el</sub></i>)は0.000623となり,diHOPrValは赤血球寿命に従って,ほぼ直線的に減少することが示唆され,生体内で安定に維持されると考えられた。最後に,GのHbへの反応性を,ラットおよびヒトの血液を用いて,<I>in vitro</I>条件で解析した結果,二次反応速度定数(<i>k<sub>val</sub></i>)はラットで6.7,ヒトで5.6 pmol/g-globin per &mu;M・hと見積もられ,有意差は認められなかった。さらに,得られた<i>k<sub>val</sub></i>を用いて,Gをラットに単回経口投与したトキシコキネティクス試験のAUCを予測したところ,予測値は実測値に近い値を示した。以上の検討から,diHOPrValは用量相関性に優れた安定な指標であり,AUC予測にも活用可能なことから,Gの生体内暴露評価に有用であると考えられた。