著者
佐々 友章 西岡 亨 舞原 文女 本多 泰揮 山根 雅之 森田 修 西山 直宏
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第42回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.P-208, 2015 (Released:2015-08-03)

国際的な化学物質管理に関する戦略的アプローチ(SAICM)に沿って化学物質を適正に管理するためには、化学物質の有害性と暴露を定量的に評価し、ヒト健康と環境影響に関するリスクを科学的に解析することが重要である。直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(LAS)は、衣料用洗剤に配合される陰イオン性界面活性剤である。LASは近年、化審法優先評価化学物質に指定されたほか、環境省の水生生物保全環境基準に追加されたことにより、その河川水中濃度や環境影響への関心が高くなっている。一般に、河川などに存在する化学物質の実態把握はモニタリング調査により行われるが、環境濃度推定モデルを用いることでより広範囲かつ短時間に環境濃度を把握することが出来る。今回演者らは、(独)産業技術総合研究所が開発した水系暴露解析モデル AIST-SHANEL (以下、SHANEL) を用いてLASの河川水中濃度を日本国内全ての一級河川109水系を対象に推定した。SHANEL によって得られた推定値とモニタリング値はFactor 10(10分の1から10倍の範囲)で良好に一致することを確認した。一致性の低かったごく一部の地点については、同一地点における継続的な環境濃度の推移や汚水処理施設の普及状況などから要因を調査した。その結果、得られたLASの推定値は、水生生物に対する予測無影響濃度や環境省が定めた水生生物保全環境基準値を下回ることが明らかとなった。暴露実態の解析手法および解析結果に基づくヒト健康および環境リスクアセスメントについて議論する。
著者
本田 大士 トーンクヴィスト マルゲリータ 西山 直宏 笠松 俊夫
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
vol.40, 2013

化学物質とヘモグロビン(Hb)との結合体,Hbアダクトは化学物質の暴露マーカーとして広く活用されており,グリシドール(G)はN-(2,3-dihydroxy-propyl)valine (diHOPrVal)として,Hbアダクトを形成する。今回我々は,G暴露評価指標としてのdiHOPrValの有用性を確認するため,用量相関性,生体内安定性,<I>in vivo</I> dose (AUC)予測性について解析を実施した。まず,用量相関性を確認するため,異なる用量のGをSDラットに単回経口投与し(0-75 mg/kg),投与1日後にdiHOPrValをGC-MS/MSを用いて定量した。diHOPrVal形成量とG投与量の間には,高い相関性が認められた(R<sup>2</sup> = 0.943)。次に,生体内安定性を確認するため,一定用量(12.5 mg/kg)のGをラットに単回経口投与し,投与後10-40日におけるdiHOPrVal量を定量することで,Hbアダクトの消失挙動を解析した。一次消失を仮定したとき,消失速度定数(<i>k<sub>el</sub></i>)は0.000623となり,diHOPrValは赤血球寿命に従って,ほぼ直線的に減少することが示唆され,生体内で安定に維持されると考えられた。最後に,GのHbへの反応性を,ラットおよびヒトの血液を用いて,<I>in vitro</I>条件で解析した結果,二次反応速度定数(<i>k<sub>val</sub></i>)はラットで6.7,ヒトで5.6 pmol/g-globin per &mu;M・hと見積もられ,有意差は認められなかった。さらに,得られた<i>k<sub>val</sub></i>を用いて,Gをラットに単回経口投与したトキシコキネティクス試験のAUCを予測したところ,予測値は実測値に近い値を示した。以上の検討から,diHOPrValは用量相関性に優れた安定な指標であり,AUC予測にも活用可能なことから,Gの生体内暴露評価に有用であると考えられた。
著者
山本 昭子 西山 直宏 吉田 浩介 山根 雅之 石川 百合子 三浦 千明
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.1-10, 2010 (Released:2010-01-10)
参考文献数
58
被引用文献数
3 12

Linear alkylbenzene sulfonate (LAS) is an anionic surfactant widely used in laundry detergents. The environmental safety of LAS has been extensively reviewed in various chemical safety assessment programs worldwide. In this paper, we report an LAS aquatic environmental risk assessment of Japanese rivers using a high-tier assessment approach. For the exposure assessment, river water monitoring data of more than 400 samples were used to determine predicted environmental concentrations (PECs) which were then verified with the AIST-SHANEL exposure model. For the effect assessment, a statistical extrapolation approach using chronic ecotoxicity data was used. Toxicity data were normalized to the average alkyl chains found in the environment (C11.3) and to that of commercial LAS average alkyl chains in Japan (C11.8). Mesocosm data were also normalized to determine the predicted no-effect concentration (PNEC) in the environment. The 95th percentile PECs for detected concentrations in Japanese rivers were 32 to 45 μg/L, and the PNECs were 270 (C12) to 530 (C11.3) μg/L based on mesocosm data with an assessment factor of 1 and supported by data from the statistical extrapolation approach. The PEC was about 10 times lower than the PNEC. From the result of the risk characterization, it was concluded that the aquatic environmental risk posed by LAS in Japan is low.