著者
石川 百合子
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.74, no.1, pp.1-18, 2001-01-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
25

日本における過去の酸性雨の状況を調べるため,最も古くかっ長期間にわたって降水分析が行われていた鯨西ヶ原の農事試験場における1913~1940年の観測データを解析した.酸性雨問題の観点から,降水中繕難カロリー肖酸イオンと非海塩性硫酸イオンおよびアルカリの指標であるアンモニウムイオンの湿性沈着量を推定した. 観測方法に関する文献調査から,この降水分析データには乾性沈着の一部が含まれていたことが明らかに・なったたあ・各イオンのデータから乾性沈着の影響を取り除いた年間の湿性沈着量を求めた.その結果,観測された沈着量のうち湿性沈着の割合は,アンモニウムイオンが60%, 硝酸イオンが80%, 硫酸イオンが20%程度であったことが示された. さらに,本観測データから降水の酸性化にっいて考察するため,推定したアンモニウムイオン,硝酸イオン,非海塩性硫酸イオンの年平均濃度から,降水の年平均pHの指標となるものを定量的に求めた.現在は1913~1940年の降水のpHよりも約0.5~1.0低くなっていることが示唆された.
著者
石川 百合子 川口 智哉 保高 徹生 東野 晴行
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.29-43, 2014 (Released:2014-03-10)
参考文献数
27
被引用文献数
2 1

本研究では2011年3月の福島第一原発事故により放出された放射性セシウムによる河川流域における河川水濃度と流域土壌に蓄積した量(本論文では,蓄積量と表記する)の残存状況の推定を目的とした数値シミュレーションモデルを構築した。産総研-水系暴露解析モデル(AIST-SHANEL)をプラットフォームとし,流域における懸濁物質の流出ポテンシャルと放射性セシウムの動態を考慮したモデルを導入し,阿武隈川水系を対象にケーススタディーを実施した。その結果,本モデルの妥当性を検証し,降水による出水に伴う放射性セシウムの総流出量は僅かであることが示された。特に,セシウム137は自然崩壊が少ないことも相まって流域における蓄積量を減少させるのは困難なことが考えられ,除染をはじめ総合的な対策を検討することの必要性が示唆された。本モデルは放射性セシウムの河川流域での挙動解析や汚染対策の評価を可能にするものと考えられる。
著者
岩崎 雄一 本田 大士 西岡 亨 石川 百合子 山根 雅之
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.201-206, 2019 (Released:2019-09-10)
参考文献数
21
被引用文献数
1

水生生物保全を目的とした水質環境基準が設定された直鎖アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩 (LAS) の濃度が高い河川地点の特徴を評価するために, 2015年度の水質測定結果を用いて, LAS濃度が0.02 mg L-1 (淡水域の水質環境基準の最小値) を超過する河川地点 (LAS高濃度地点群) とLAS濃度が0.02 mg L-1以下の地点において, ①水面幅 (河川規模の指標) , ②周辺の土地利用, ③有機汚濁 (生物化学的酸素要求量:BOD) の程度を比較した。その結果, LAS高濃度地点群は, ①水面幅の変化が少なく小規模の河川, ②周辺に森林や農地が少なく, 住宅地や市街地が密集している都市域, ③BODが高く有機汚濁が進行した河川, に割合として多くみられることが示唆された。着目する化学物質について高濃度地点の特徴を把握することは, 水生生物の保全効果という観点から管理方策を検討する上で有用な判断材料となるだろう。
著者
山本 昭子 西山 直宏 吉田 浩介 山根 雅之 石川 百合子 三浦 千明
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.1-10, 2010 (Released:2010-01-10)
参考文献数
58
被引用文献数
3 11

Linear alkylbenzene sulfonate (LAS) is an anionic surfactant widely used in laundry detergents. The environmental safety of LAS has been extensively reviewed in various chemical safety assessment programs worldwide. In this paper, we report an LAS aquatic environmental risk assessment of Japanese rivers using a high-tier assessment approach. For the exposure assessment, river water monitoring data of more than 400 samples were used to determine predicted environmental concentrations (PECs) which were then verified with the AIST-SHANEL exposure model. For the effect assessment, a statistical extrapolation approach using chronic ecotoxicity data was used. Toxicity data were normalized to the average alkyl chains found in the environment (C11.3) and to that of commercial LAS average alkyl chains in Japan (C11.8). Mesocosm data were also normalized to determine the predicted no-effect concentration (PNEC) in the environment. The 95th percentile PECs for detected concentrations in Japanese rivers were 32 to 45 μg/L, and the PNECs were 270 (C12) to 530 (C11.3) μg/L based on mesocosm data with an assessment factor of 1 and supported by data from the statistical extrapolation approach. The PEC was about 10 times lower than the PNEC. From the result of the risk characterization, it was concluded that the aquatic environmental risk posed by LAS in Japan is low.