著者
本間 佑介 平石 武士
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1313, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】成長期のスポーツ選手では,その身体特性より外傷・障害発生が問題となっている。本研究の目的は,成長期の中学生軟式野球選手に,疼痛についてアンケート調査を実施しその特徴を明らかとすることである。【方法】2015年1月に,T市中体連軟式野球部所属の19チーム(55名)に自己記入形式でアンケート調査を行った。アンケート内容は学年,ポジション,野球歴,既往歴・現病歴,過去,現在の肘・肩・膝関節疼痛の有無,1週間の練習日数(以下練習日数),1週間の練習時間(以下練習時間)の合計とした。過去,現在に肘・肩・膝関節の疼痛(以下,肘痛,肩痛,膝痛)を有する者を疼痛経験あり群,疼痛を有さない者を疼痛経験なし群とし,野球歴,練習日数・練習時間の合計の群間比較を対応のないT検定を用い分析した。解析はDr.SPSSIIfor windowsを用い,有意水準は5%とした。【結果】全回答者数55名(回収率100%)中,有効回答者数は54名(回収率98%)であった。内訳は2年生49名,1年生5名であった。ポジションは,投手13名(24%),投手と複数ポジション兼務20名(38%)であった。肘痛経験者は34名(63%)で現在「疼痛あり」と回答した選手は7名(13%)であった。肩痛経験者は28名(52%)で現在「疼痛あり」と回答した選手は7名(13%)であった。膝痛経験者は28名(52%)で現在「疼痛あり」と回答した選手は8名(15%)であった。肘・肩・膝痛経験あり・なし群の野球歴の平均値は(肘痛経験あり/なし:肩痛経験あり/なし:膝痛経験あり/なし)5.2±1.8年/5.3±1.9年:4.8±2.1年/5.7±1.4年:4.9±1.8年/5.7±1.8年で,肩痛経験に有意な差を認めた。練習日数の合計の平均値は6.4±0.6日/6.2±0.8日:6.3±0.6日/6.3±0.7日:6.3±0.8日/6.3±0.5日で,各群間で有意な差を認めなかった。練習時間の合計の平均値は18.2±5.9時間/16.3±6.3時間:18.7±6.5時間/16.3±5.4時間:17.8±7.2時間/17.2±4.5時間で,膝痛経験に有意な差を認めた。【結論】今回,肘・肩・膝関節の疼痛経験を有する者が半数以上であった。成長期の骨端は力学的にも脆弱で,疼痛が成長期特有の障害発生に起因することから,集団講習会等で障害予防の啓発が必要と考える。野球歴は肩痛経験あり群で有意に短く,その他の疼痛経験あり群において有意ではないが短かった。このような野球経験の不足により,疼痛経験あり群の投球動作が未熟な可能性が考えられる。また,対象者の過半数が投手や投手と複数ポジション兼務の選手であり投球過多が予想される。ゆえに,投球動作の未熟さと年間投球数等の量的因子が疼痛発生に関係すると考える。練習時間は膝痛経験あり群で有意に長く,その他の疼痛経験あり群において有意ではないが長かった。古賀(2007)らは成長期のスポーツ障害は膝関節を中心に下肢に多いと報告している。成長期では膝関節障害が発生し易いことから,練習量の過多が膝痛に起因している可能性が考えられる。
著者
本間 佑介 宇賀 大祐 菅谷 智明 阿部 洋太 遠藤 康裕 中澤 理恵 坂本 雅昭
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1033, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】日本臨床スポーツ医学会は,1995年に少年野球による重篤な障害を防止する為の提言を行っている。少年野球において,選手自身の投球数や練習時間等の自己管理を徹底するのは困難であり,チームの監督・コーチや保護者に委ねる部分が多いと考える。本研究の目的は,少年野球チームの指導者に対し,投球障害予防に関連するアンケート調査を実施することで,指導者の障害予防に対する認識を明らかとすることである。【方法】2014年6月にT市の野球連盟学童部に所属した48チームの監督48名,コーチ89名の計137名に対し,集合調査法にてアンケート調査を実施した。アンケート内容は年齢,指導年数,少年野球指導者講習会参加の有無,予防教室の参加回数,野球経験の有無と経験年数,部員数,指導者数,1週間の練習日数・練習時間,投手数,1日の投球数,一人の投手が投げる連続試合数,年間試合数,ウォーミングアップ・クールダウンの実施状況・必要性,臨床スポーツ医学会による練習日数と練習時間の制限および投球制限についての認識,練習日数と練習時間の制限の必要性,投球障害予防教室の必要性,指導者の医学的知識の必要性とした。【結果】全回答者数131名(回収率95.6%)中,有効回答者数は101名(回収率77.1%)であった。内訳は監督30名,コーチ71名であった。対象者の平均年齢は41.3±5.6年指導年数は4.2±3.6年であった。部員数は,「15名以下」が36名(36%),「16名~30名以下」が65名(64%)であった。投手数は「3人」という回答が最も多く43名(42%)で,「1人」という回答は1名(1%)であった。92名(92%)の指導者に野球経験があり,そのうち高校野球経験者が64名(70%)であった。ウォーミングアップの実施率は101名(100%)で実施時間は30.1±12.3分であった。クールダウンの実施率は101名(99%)で実施時間は13.8±5.7分であった。1週間の練習日数は3.9±0.6日であった。練習時間は,平日2.3±0.8時間,休日6.2±1.4時間であった。練習日数と練習時間の制限の提言について,48名(48%)が知らなかったと回答した。練習日数と練習時間の制限の必要性は,7名(7%)が「必ず必要だと思う」,61名(60%)が「必要だと思う」,32名(32%)が「あまり必要ないと思う」,1名(1%)が「全く必要ないと思う」と回答した。投球数は,全体の60%が「51~100球」であった。投球制限の提言について94名(93%)が「知っている」と回答した。投球制限の必要性について,48名(48%)が「必ず必要だと思う」,51名(50%)が「必要だと思う」,2名(2%)が「あまり必要ないと思う」と回答した。指導者の医学的知識の必要性は,14名(14%)が「必ず必要だと思う」,83名(82%)が「必要だと思う」と回答した。【考察】船越ら(2001)は,小学生の1週間の練習日数の平均は4.6日であり,提言で推奨する1日の投球数50球未満を守っているのは20%程度と報告している。本研究において,1週間の練習日数は3.9±0.6日で,提言で推奨する週3日以内を上回る結果となった。練習時間は,平日2.3±0.8時間,休日6.2±1.4時間で,提言で推奨する1日2時間以内を上回る結果となった。現在,1日の練習時間や練習日数の管理は各チームに委ねているのが現状である。今回の結果を踏まえ,傷害予防の観点から1日の練習時間や練習日数について,野球連盟スタッフ主導のもと指導者が適切に管理する体制を構築し,指導者に啓発していく必要があると考える。投球制限の提言について94名(93%)が「知っている」と回答し,投球制限の必要性については殆どが必要性を感じていた。背景には,T市野球連盟学童部が大会にもよるが,投球制限やイニング制限を設けている為このような結果になったと考える。一方で,投球数について,61名(60%)が「51~100球」と規定数を超える傾向にあり,認識と実際の指導に乖離が認められた。具体的な投球内容等について詳細な聞き取り,分析が必要と考える。投球数については船越らの報告と同程度の結果であった。指導者の医学的知識の必要性について,9割以上の指導者が必要と回答している。指導者の多くは選手の父親であり,指導年数は4.2±3.6年であることから,一定期間で指導者が入れ替わることが予想される。以上より,指導者ライセンス制度の導入やメディカルスタッフとして理学療法士の介入の必要性が示唆された。【理学療法学研究としての意義】少年野球指導者の投球障害に対する認識を把握し,理学療法士として障害予防の観点から指導者の投球障害に対する認識向上を図ることで,学童期の少年少女の健康・安全の一助となる。
著者
本間 佑介 平石 武士
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2015, 2016

【はじめに,目的】成長期のスポーツ選手では,その身体特性より外傷・障害発生が問題となっている。本研究の目的は,成長期の中学生軟式野球選手に,疼痛についてアンケート調査を実施しその特徴を明らかとすることである。【方法】2015年1月に,T市中体連軟式野球部所属の19チーム(55名)に自己記入形式でアンケート調査を行った。アンケート内容は学年,ポジション,野球歴,既往歴・現病歴,過去,現在の肘・肩・膝関節疼痛の有無,1週間の練習日数(以下練習日数),1週間の練習時間(以下練習時間)の合計とした。過去,現在に肘・肩・膝関節の疼痛(以下,肘痛,肩痛,膝痛)を有する者を疼痛経験あり群,疼痛を有さない者を疼痛経験なし群とし,野球歴,練習日数・練習時間の合計の群間比較を対応のないT検定を用い分析した。解析はDr.SPSSIIfor windowsを用い,有意水準は5%とした。【結果】全回答者数55名(回収率100%)中,有効回答者数は54名(回収率98%)であった。内訳は2年生49名,1年生5名であった。ポジションは,投手13名(24%),投手と複数ポジション兼務20名(38%)であった。肘痛経験者は34名(63%)で現在「疼痛あり」と回答した選手は7名(13%)であった。肩痛経験者は28名(52%)で現在「疼痛あり」と回答した選手は7名(13%)であった。膝痛経験者は28名(52%)で現在「疼痛あり」と回答した選手は8名(15%)であった。肘・肩・膝痛経験あり・なし群の野球歴の平均値は(肘痛経験あり/なし:肩痛経験あり/なし:膝痛経験あり/なし)5.2±1.8年/5.3±1.9年:4.8±2.1年/5.7±1.4年:4.9±1.8年/5.7±1.8年で,肩痛経験に有意な差を認めた。練習日数の合計の平均値は6.4±0.6日/6.2±0.8日:6.3±0.6日/6.3±0.7日:6.3±0.8日/6.3±0.5日で,各群間で有意な差を認めなかった。練習時間の合計の平均値は18.2±5.9時間/16.3±6.3時間:18.7±6.5時間/16.3±5.4時間:17.8±7.2時間/17.2±4.5時間で,膝痛経験に有意な差を認めた。【結論】今回,肘・肩・膝関節の疼痛経験を有する者が半数以上であった。成長期の骨端は力学的にも脆弱で,疼痛が成長期特有の障害発生に起因することから,集団講習会等で障害予防の啓発が必要と考える。野球歴は肩痛経験あり群で有意に短く,その他の疼痛経験あり群において有意ではないが短かった。このような野球経験の不足により,疼痛経験あり群の投球動作が未熟な可能性が考えられる。また,対象者の過半数が投手や投手と複数ポジション兼務の選手であり投球過多が予想される。ゆえに,投球動作の未熟さと年間投球数等の量的因子が疼痛発生に関係すると考える。練習時間は膝痛経験あり群で有意に長く,その他の疼痛経験あり群において有意ではないが長かった。古賀(2007)らは成長期のスポーツ障害は膝関節を中心に下肢に多いと報告している。成長期では膝関節障害が発生し易いことから,練習量の過多が膝痛に起因している可能性が考えられる。