著者
椎名 豊 本間 康彦 三神 美和 周 顕徳 吉川 広 石原 仁一 佐藤 美智子 東野 昌史 木下 栄治 田川 隆介 玉地 寛光 友田 春夫 中谷 矩章 五島 雄一郎
出版者
The Japan Geriatrics Society
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.21, no.6, pp.573-579, 1984

健常者6名に, 2日間同一の食事を摂取させ, 2日目に毎食時30grの脂肪 (P/S比1.2) を摂取させ, LCAT活性, 血清総コレステロール (TC), トリグリセライド (TG), 遊離コレステロール (FC), HDLコレステロール, 遊離脂肪酸 (FFA), 血糖 (BS), IRI値を, 空腹時, 朝食後, 1, 3時間, 昼食後2, 4時間, 夕食後2, 4時間の7時点で測定し, 日内変動を検討した. 空腹時LCAT活性は, 第1日目59.8±14.2 (平均±標準偏差) nM/m<i>l</i>/hrで, 第2日目58.4±13.3nM/m<i>l</i>/hrであり, 日内変動は認められず, 脂肪負荷の影響も認められなかった. TG値は昼食後2時間がピークで, その後低下する傾向が認められ, 脂肪負荷で食後上昇した. TC, FC, HDL-C値は日内変動, 脂肪負荷の影響とも認められなかった. FFAは, 空腹時最も高く, 食後低下した. 脂肪負荷で昼食後2時間目以後, 負荷前日の値より高値であった. BSの変化は軽微で, 午後わずかに上昇した. IRI値は午後以後高値で推移し, このことがTGの処理を亢進させ, 血清TG値が, 昼食後2時間をピークに低下することの原因と考えられた. LCAT活性と空腹時のTC (r=0.632, p<0.05), TG (r=0.793, p<0.01), FC (r=0.855, p<0.001), HDL-C (r=0.577, p<0.05), と正相関が認められた. 測定全時点で検討すると, LCAT活性はTC (r=0.403, p<0.001), TG (r=0.508, p<0.001), FC (r=0.415, p<0.001), HDL-C (r=0.503, p<0.001), FFA (r=0.266, p<0.02) と正相関が観察されたが, 空腹時のみの場合よりTG, FCとの相関係数は低下した. 脂肪負荷テストのように大量でしかも脂肪のみ負荷した場合とは異なり, 日常摂取しているような食事ではLCAT活性の日内変動はあっても極く軽微と考えられた.
著者
田辺 晃久 本間 康彦 兼本 成斌 日野原 茂雄 五島 雄一郎
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.73, no.3, pp.323-331, 1984
被引用文献数
2 1

試作体位センサーによる体位情報とホルター心電図との同時記録から,虚血ST-T変化と体位ST-T変化との鑑別を試みた.対象は陳旧性心筋梗塞(OMI) 16名,狭心症(AP) 16名,健常例11名の計43名であつた.虚血ST変化はOMIで3/21件(14%), APで29/35 (83%)とAPに多く,体位ST変化はOMIで13/21 (62%), APで5/35 (14%)とOMIに多かつた.最大ST変化に至る時間は体位ST変化では10秒以内が18/25 (72%)と大多数を占めたのに対し,虚血ST変化では1分以上が28/32 (88%)と大多数を占めた.体位T変化についても10秒以内が15/18 (83%)と大多数を占めたのに対し,虚血T変化では10秒以内はわずか2/13 (15%)ときわめて少なかつた. CM<sub>5</sub>誘導における体位ST変化の20/22 (91%), T変化の19/21 (90%)は体位変換前後で標準12誘導心電図のV<sub>4</sub>, V<sub>5</sub>, V<sub>6</sub>のいずれかに対応して変化した.すなわち,これらの変化の原因は心軸回転で説明可能であつた.しかし,体位ST-T変化のうちST変化で2/22 (9%), T変化で2/21 (10%)は心軸回転で説明不能であつた. ST-T変化前に対する変化後の心拍数増加率(HR比)は虚血ST-T変化では高値例が多く,体位ST-T変化では少なかつた.とくにT変化でHR比1.3以上は虚血T変化の12/16 (75%)に対し,体位T変化では3/21 (14%)ときわめて少なかつた.以上より,ホルター心電図法の体位ST-T変化の虚血ST-T変化に対する鑑別点として, (1)ST-T丁変化の最大に至る時間, (2)標準12誘導心電図との比較, (3)心拍数増加の有無などの検討が重要と考えられた.