著者
本間 照雄
出版者
東北社会学会
雑誌
社会学年報 (ISSN:02873133)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.25, 2018-08-30 (Released:2019-11-08)
参考文献数
6

東日本大震災の避難者は,被災から6年経った今,全国で75,206人.避難先は47都道府県1,052市区町村に広がり,宮城県内では9,795人が避難生活を送っている(平成30年1月16日現在,復興庁). 東日本大震災は,被災規模が甚大であることだけではなく「避難生活の期間が非常に長い」ことが被災者の困難さを増している.この長期間に渡る避難生活を支えているのが生活支援員である.東日本大震災では,被災者自身も生活支援員となって被災者支援に携わり,日々,応急仮設住宅/災害公営住宅での生活を見守り続けている. 本稿では,宮城県南三陸町を事例にして,この長期間の避難生活で生じた新たな支援ニーズとしてのコミュニティづくりに関わる生活支援員に注目し,彼らがいかにして養成されたかを被災者支援センターの制度設計から見いだし,当事者性と市民的専門性を持って活動してきたかを報告する. また,住民が生活支援員となって被災者支援を担い,その支援者としての仕事を終えた後に地域社会の一員に戻っていく.そうした一連の過程の中で,被災者支援という一時的・臨時的であっても,その関わり方如何により,地域福祉の推進に資する人財に育つことを示したい.
著者
本間 照雄
出版者
東北社会学会
雑誌
社会学年報 (ISSN:02873133)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.49-64, 2014-07-25 (Released:2015-08-24)
参考文献数
12
被引用文献数
3

本稿の目的は,東日本大震災で甚大な被害を受けた宮城県南三陸町を中心にして,被災地で見えてきた災害ボランティア活動の様相を取り上げ,災害ボランティア活動に関わる新たな課題について考察することにある.巨大津波で街を失った沿岸部被災地のボランティア活動は,阪神・淡路大震災以降積み重ねてきた活動とは異なる新たな課題に直面している.特に,長期間に渡って開設されている災害ボランティアセンター,漁業や農業への支援及び組織化されたボランティア団体と地元社会福祉協議会との連携・協働は,新たな不具合として表面化してきた内容と従来から現場で感じていた課題が重なり合い,東日本大震災から学ぶべき課題として,その具体的対応を迫っている. 本稿では,これまでボランティア活動側に視点を置いた議論が多い中にあって,同時に支援を受ける側の力「受援力」の向上も併せて行うことの必要性を問うている.この受援力は,支援力と地域力を編む力と言い現し,支援力と地域力を編む力としての受援力を高めることで,被災直後の緊急援護から復旧復興期支援,そしてその先にある地域福祉へつながっていく支援を目指す力となる.このことへの着目は,東日本大震災で得た教訓を新たな震災への備えとして活かす道ではないかと提案する.