著者
片上 幸美 田中 俊行 本間 隆満 横山 淳史 朴 虎東
出版者
日本陸水学会
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.1-12, 2004-04-20 (Released:2009-06-12)
参考文献数
55
被引用文献数
4 7

富栄養湖である諏訪湖に端を発する天竜川の上流域では,造網性トビケラの一種,ヒゲナガカワトビケラStenopsyche marmorataが多数生息している。春から秋にかけて諏訪湖で発生した有毒藍藻のMicrocystisや,その細胞に含まれる肝臓毒microcystinが大量に天竜川に流下することがある。天竜川に生息するヒゲナガカワトビケラ幼虫のmicrocystin濃度の季節変化と,ヒゲナガカワトビケラからのmicrocystinの排出について研究を行った。幼虫のmicrocystin含有量は,河川水に含まれる有機懸濁物質中のmicrocystin濃度と相関を示した。また若齢個体ほどmicrocystin含有量が高い傾向が見られた。これは幼虫の成長に伴う食性の変化と関係していると考えられる。さらに前蛹,蛹,成虫からも低濃度ながらmicrocystinが検出された。Microcystin排出実験では,5日間microcystinが幼虫の組織内に残留した。これらの結果は河川生態系においでヒゲナガカワトビケラがmicrocystinのベクターとなり,さらに陸上生態系へもmicrocystinが移行する可能性を示唆している。
著者
中村 剛也 本間 隆満 宮原 裕一 花里 孝幸 朴 虎東
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.851-862, 2013 (Released:2013-09-17)
参考文献数
31
被引用文献数
1 1

諏訪湖の Microcystis の見かけの比増殖速度や最大現存量に対して湖水回転率が与える影響を 1992 年から 2003 年で調査した。20% day−1 以上に達するようなフラッシング時に加えて対数増殖期の回転率の上昇が 2% day−1 以上に達すると,Microcystis の見かけの比増殖速度は抑制され始めた。6 月から 7 月の回転率が Microcystis の最大現存量に強い影響を与えていることが示唆された。本研究は短期・長期的な湖水回転率が Microcystis に影響を与えていることを示すものである。