著者
奥井 佑 朴 珍相 中島 直樹
出版者
一般社団法人 日本医療情報学会
雑誌
医療情報学 (ISSN:02898055)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.61-72, 2020-10-09 (Released:2021-10-25)
参考文献数
13

診療報酬の改定に伴い向精神薬の多剤併用に対する政策が近年強化されてきているが,その政策効果について十分な検討がなされていない.本研究では,診療報酬改定により多剤処方を受けた患者数がトレンド変化したかを大学病院の電子カルテデータをもとに検証した.2008年4月から2019年3月までに九州大学病院にて向精神薬を処方された患者を対象とし,電子カルテからデータを抽出して用いた.分析手法として,一般化最小二乗法(GLS)とともに,一般化線形自己回帰移動平均モデル(GLARMA)を用いた.分析の結果,各向精神薬のうち,抗精神病薬,抗不安薬については政策の導入以降に多剤処方を受けた患者割合が減少に転じていることがわかった.また,中断時系列解析による検定の結果,抗精神病薬について時点と政策効果の交互作用の推定値が-0.143(95%CI:-0.275,-0.011),抗不安薬では-0.394(95%CI:-0.634,-0.154)となり,診療報酬改定により患者への多剤処方が減少する傾向にトレンド変化したことが示された.
著者
朴 珍相 池田 俊也 南 商尭 武藤 正樹
出版者
一般社団法人 日本医療・病院管理学会
雑誌
日本医療・病院管理学会誌 (ISSN:1882594X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.181-188, 2016

<p>我が国では2014年度診療報酬改定で一入院包括支払い方式(PPS)である短期滞在手術等基本料3が水晶体再建術等に導入され,入退院支援の強化や病棟機能再編の必要性が再認識されている。また,韓国においても同疾患に対して同様のPPSが施行されている。しかし,PPSについて臨床現場でどのように意識されているかに関する調査は両国ともほとんどない。そこで,水晶体再建術の治療・ケアに関わる日本78名,韓国84名の医療者に対し,現行PPSにおける診療の効率性とケアに関する意識調査を実施した。<br>その結果,両国とも現行のPPSに対し,医療の質の低下を懸念する意識を持っていることが明らかになった。また,日本の医療者はPhysician Feeについて出来高払いで評価を求める意識が高かった。PPSにおける医療経済的な側面と医療技術的側面の両方を評価する診療報酬体系の確立及び客観的な質の評価システム構築は,両国が同様に抱えている課題であることが示唆された。</p>