著者
奥井 佑
出版者
National Institute of Public Health
雑誌
保健医療科学 (ISSN:13476459)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.92-105, 2022-02-28 (Released:2022-04-05)
参考文献数
38

目的:本研究では人口動態統計を用いて,2000年から2015年までの配偶状況別での死亡率の変化を分析する.方法:2000年から2015年までの 5 年ごとの人口動態統計及び国勢調査データを用いた.死亡データとして,全死因,結核,がん,糖尿病,心疾患,脳血管疾患,肺炎,肝疾患,腎不全,老衰,不慮の事故,自殺を用い,がんについては,全がん,胃がん,大腸がん,肝がん,胆のう及び肝外胆管がん,膵臓がん,肺がん,乳がんのデータを用いた.配偶状況として,有配偶,未婚,死別,離別の 4 区分について検討した.配偶状況別での年齢調整死亡率と,有配偶者に対するその他の各配偶状況の年齢調整死亡率比を死因別で算出した.結果:ほとんどの死因において,有配偶者の年齢調整死亡率は他の配偶状況よりも年や性別によらず低かった.一方で,対象期間での全死亡に関する年齢調整死亡率の減少度合いは配偶状況により異なり,未婚者で最も大きかった.他方で,離別者の年齢調整死亡率が7値について,男性では結核で最も率比の値が大きくなり,女性では老衰で最も率比が高かった.男女ともがんでは他の死因と比較して値が小さい傾向であった.結論:2000年から2015年の間において,未婚者と有配偶者の死亡率の格差は減少し,2015年時点では離別者において疾患の予防や治療が特に必要であることが示唆された.
著者
奥井 佑 朴 珍相 中島 直樹
出版者
一般社団法人 日本医療情報学会
雑誌
医療情報学 (ISSN:02898055)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.61-72, 2020-10-09 (Released:2021-10-25)
参考文献数
13

診療報酬の改定に伴い向精神薬の多剤併用に対する政策が近年強化されてきているが,その政策効果について十分な検討がなされていない.本研究では,診療報酬改定により多剤処方を受けた患者数がトレンド変化したかを大学病院の電子カルテデータをもとに検証した.2008年4月から2019年3月までに九州大学病院にて向精神薬を処方された患者を対象とし,電子カルテからデータを抽出して用いた.分析手法として,一般化最小二乗法(GLS)とともに,一般化線形自己回帰移動平均モデル(GLARMA)を用いた.分析の結果,各向精神薬のうち,抗精神病薬,抗不安薬については政策の導入以降に多剤処方を受けた患者割合が減少に転じていることがわかった.また,中断時系列解析による検定の結果,抗精神病薬について時点と政策効果の交互作用の推定値が-0.143(95%CI:-0.275,-0.011),抗不安薬では-0.394(95%CI:-0.634,-0.154)となり,診療報酬改定により患者への多剤処方が減少する傾向にトレンド変化したことが示された.
著者
奥井 佑
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.67, no.12, pp.892-903, 2020-12-15 (Released:2020-12-31)
参考文献数
44

目的 本研究では就業状況による各年齢・時代・コホートでの日本人女性における婚姻率・出生率の違いを明らかにする。方法 1995年から2015年までの人口動態職業・産業別統計と国勢調査のデータを用い,20歳から49歳まで5歳おきの就業有無および配偶有無別で婚姻数・出生数データを取得した。ベイジアンAPCモデルをもとに無配偶婚姻率・有配偶出生率の変化を年齢,時代,コホートの3効果に分離するとともに,各年齢,時代,コホートにおける就業者の非就業者に対する無配偶婚姻率比および有配偶出生率比を算出した。結果 非就業者における無配偶婚姻率の時代効果は期間を通して減少し続けたが,就業者では2005年から上昇に転じていた。有配偶出生率に対する時代効果は就業状況によらず上昇したが,就業者の方が上昇率が大きかった。無配偶婚姻率のコホート効果は非就業者では1960年代,就業者では1970年代から減少しており,非就業者の方が減少率が大きかった。それにより,就業者の非就業者に対する無配偶婚姻率比は1946-1950年生まれで0.46(95%信頼区間:0.21,0.90)であったが,1991-1995年生まれで1.00(95%信頼区間:0.45,1.92)となっていた。一方,就業者の非就業者に対する有配偶出生率比は1946-1950年生まれで0.31(95%信頼区間:0.12,0.69)であったが,1991-1995年生まれで0.38(95%信頼区間:0.14,1.81)となっていた。結論 就業者と非就業者における無配偶婚姻率および有配偶出生率の差は時代が経過するほど,または若いコホートになるほど縮小する傾向にあり,とくに無配偶婚姻率に関する差の減少率が大きかった。一方で,有配偶者出生率については依然としてコホートを問わず就業有無により統計学的に有意な差があることがわかった。
著者
奥井 佑
出版者
応用統計学会
雑誌
応用統計学 (ISSN:02850370)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1-2, pp.1-16, 2019 (Released:2019-11-02)
参考文献数
27

近年,細菌の検出数を示す16S rRNAデータを用いて, 疾患等の臨床アウトカムと関連する菌種を 特定する統計解析が広く行われるようになった. それに対応して解析手法も多く提案されるようになり, 解析手法の一つとして潜在ディリクレ配分モデル(LDA)が用いられている. 教師情報を利用したLDAとして, 教師ありトピックモデル(SLDA)やディリクレ多項回帰モデルを 伴うLDA(DMR)が提案されている一方で, それら手法は細菌データに対して応用されていないとともに, 一定の割合を持つトピックが抽出されないことが多くある. これら問題に対処するため,本研究ではDMRを 拡張したノンパラメトリックベイズトピックモデルを提案し, 既存のDMRやSLDAと予測性能を比較評価した. ノンパラメトリックベイズモデルでは, 潜在変数について無限の値を仮定し, 各潜在クラスが占める割合に傾斜性を 持たせることが可能となる.本研究では共変量値を もとに棒折り過程を生成する手法を トピックモデルに応用することで,共変量と関連するトピックを 抽出するノンパラメトリックベイズトピックモデルを考案した. 提案法について実際の細菌データに適用し性能を 評価したところ,トピック割合が比較的大きくなおかつ アウトカムと関連するトピックが抽出されるとともに, アウトカムに対して既存の手法を上回る予測性能を 持つことが示された.
著者
奥井 佑 中路 重之
出版者
日本計量生物学会
雑誌
計量生物学 (ISSN:09184430)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.37-54, 2018-08-01 (Released:2019-04-04)
参考文献数
32

In recent years, analysis methods of microbiome data are developing rapidly, and many methods for the microbial compositional data which uses the 16S ribosomal RNA gene (16S rRNA data) are proposed. But, methods of association analysis for longitudinally measured 16S rRNA data are not studied well. Latent dirichlet allocation model (LDA) which is used mainly in natural language processing and has high expansion possibilities came to be applied to 16S rRNA data analysis in the past few years. Then, we propose an association analysis method by modifying existing LDA: topic tracking model for longitudinal 16S rRNA data. As the result of predictive performance evaluation, proposed method showed superior performance compared with topic tracking model with regard to perplexity. We applied this method to microbial data of rural Japanese people and identified topics associated with obesity.