著者
杉ノ原 伸夫 深澤 理郎
出版者
日本海洋学会
雑誌
日本海洋学会誌 (ISSN:00298131)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.315-336, 1988
被引用文献数
23

底層水の生成域を内部に持ち, 南北両半球にひろがる海洋の冷却過程を数値的に研究した. モデル海洋は初期に一様な水温の海水で占められている. 計算の過程では, 表面を一様に加熱する一方, 南半球の最高緯度帯で底層水を生成させた.<BR>計算初期においては, 生成された底層水は, ケルビン波的な密度流の形態を呈しつつ南半球海洋の西端に沿って北上した後, 赤道に沿って東進する. 海洋の東端に達した底層水は, ケルビン波的な密度流の形態で極向きに移動すると同時に, ロスビー波的な密度流を形成することによって西方へも広がり, 内部領域に極向きの流れを引き起こす. 底層水が西端に達すると, そこに西端境界流が形成される. この時から, 南半球海洋の西岸を北上する底層水が, 赤道を越えた北半球海洋の西岸境界流に直接補給されるようになる. 中深層においては, 内部領域および沿岸での湧昇によって下層から順に冷やされて行くが, その過程で, 底層水と周囲の暖かい海水とが混合し, 温度躍層は, 加熱層 (最上層) の下端に留まらず, より深層にまで広がる傾向が見られる. その結果, 湧昇速度は温度躍層の下部で最大となり, ストムメル・アーロンズが示したような内部領域での流れの形態は底層付近にのみ再現される. また, 赤道に沿っては鉛直高次モードの運動が卓越し, 流速場は, 東向流と西向流が互い違いに重なった構造 (ziggy structure) になる.
著者
杉ノ原 伸夫 尹 宗煥
出版者
東京大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1987

暖かい海水で満たされている南, 北両半球にまたがる海洋が, 南半球の南端域で冷たい水を形成することによって, どのように冷やされるかを調べることにより, 深層循環の基本的力学の理解を図った. 深層循環を水平対流として考えることにより, 形成される冷たい水がそれ自身の力学によってどのように深層湧昇を形成するかを理解しようとするものである. 海面では全海洋一様に暖めた. 太平洋を対象としたモデルであり, 以下のような知見が得られた.1.海洋の冷却は, 形成域から冷水がポテンシャル渦度を保存しつつケルビン波形の密度流となってもたらされることから, 赤道域及び東岸域の深層部から始まる. この東岸域の冷水は, ロスビー波型の密度流として内部領域に極向き流を形成しながら西に進み, 西岸に達して, 北半球には北向きの西岸境界流を形成する. このようにして赤道を横切る境界流が形成され, 効率よく北半球が冷やされるようになる. 北半球の北半分に反時計回りの循環が, 東岸, 北岸に沿って進ケルビン波の公課によって形成される.2.残りの海洋は内部領域及び沿岸での湧昇によって深層からより浅い層へと冷却されていく.3.上記過程において, 冷たい水がまわりの暖かい水と混合することによって温度躍層が深層域まで広がる傾向がある. これにより, 深層にも顕著な鉛直構造が存在するようになり, 求まった水平循環パターンは最深層部のみがストメルのものとなる.4.赤道域の冷え方はそれ以外の海域と異なり, 赤道に沿った東西流に"ZIGGY"構造が見られるように, 鉛直高次モードの運動が卓越する.5.循環の強さは, 等温面に直交する意味での鉛直拡散の効果に大きく存在しており, この効果が大きい程循環が活発になる.