著者
新井 佐知子 伊東 正吾 可知 真奈美 杉山 稔恵 楠原 征治
出版者
日本養豚学会
雑誌
日本養豚学会誌 (ISSN:0913882X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.183-189, 2009-12-25 (Released:2010-04-02)
参考文献数
12
被引用文献数
3 5

豚の運動器疾患で多く見られる脚弱症の原因である骨軟骨症と骨関節症のモデル作成として,5%パパイン液を用いた発生試験と,その臨床症状や軟骨病変の観察を行った。体温や臨床症状は3日ほどで改善したが,軽度の跛行は14日まで観察された。しかし,軟骨の肉眼的な病変は日を追うごとに重篤化し,亀裂や糜爛などの病変の領域は広範囲になった。膝関節へのパパイン液注入の試みは,今後の骨軟骨症や骨関節症による脚弱の診断技術を確立する上で,大きな役割を果たすモデルになりえる可能性が考えられた。
著者
和食 雄一 金子 良則 杉山 稔恵 山田 宜永 祝前 博明
出版者
Japanese Society of Zoo and Wildlife Medicine
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.57-67, 2014
被引用文献数
3

トキ(<i>Nipponia nippon</i>)は 1981年にわが国の野生下から絶滅し,2003年には最後の日本産個体が死亡した。そこで,わが国は,国家プロジェクトという位置づけのもとに,中国の飼育下個体群由来の 5羽をファウンダーとする飼育下個体群を創設している。本研究では,遺伝的多様性を保持するために必要な収容能力と今後導入すべきファウンダー数を予測する目的から,国内飼育下個体群の人口学的パラメーターを推測した。その結果,著しい個体群成長が認められた一方,世代時間および有効集団サイズには低い値が認められた。したがって,これらのパラメーターの上昇を含めた遺伝的多様性の増加と維持のための努力の必要性が示唆された。また,既存の 5羽のファウンダーが非近交個体で相互間に血縁関係がないと仮定し,収容能力を 200羽とした場合には,今後一切中国から個体を導入しない条件下では遺伝子多様性が 100年後に 60%程度にまで低下すると予測された。より信頼性の高いパラメーター値を得るために人口学的分析の継続が必要であるが,本研究の結果から判断する限り,新たなファウンダーの継続的な導入が必須であると考えられた。