著者
中西 仁美 土井 健司 柴田 久 杉山 郁夫 寺部 慎太郎
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 = Proceedings of JSCE (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
no.793, pp.73-83, 2005-07-20
被引用文献数
5 3

イギリスでは市民生活の質の向上を国家レベルでのサステイナビリティ実現の前提条件と位置づけ, 政策レビューにQoLインディケータ (QoLIs) を用いている. 本稿は, イギリスにおけるQoLIsシステムの導入経緯とわが国の政策運営への示唆を明らかにしている. イギリスでは, エンドアウトカムに着目して市民生活の改善度を測るQoLIsは, 政策への市民の関心を高め, 行政と市民との対話や自治体間の連携を容易にしたと評価され, QoLIsを政策インプットにフィードバックする方法も考案されている. しかし, 現状のシステムは政策レビューには有効ではあるものの, 事前のアセスメントへの適用には課題を抱える. 本稿ではこのようなQoLIsシステムの限界を捉えた上で, わが国におけるQoLの改善を全体目標とした総合アセスメントの考え方と, QoL最大化のための政策設計の必要性を示唆している.
著者
林 良嗣 土井 健司 杉山 郁夫
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.751, pp.55-70, 2004-01-20 (Released:2010-08-24)
参考文献数
24
被引用文献数
11 3

近年, 社会資本整備に際しては費用便益分析法などの評価手法が定着しつつあるが, 一方で市民が持つ多様な価値観を反映できる総合的な評価指標が必要とされている. 費用や便益の最終帰着先である市民生活の状態を測るための指標である Quality Of Life (QOL) は, 広範囲な分野をカバーする性質上, 要素毎の評価を総合する段階で相互の重み付けを避けて通れない性質を持つ. 本論文ではQOLを5つの評価要素から説明し, これを市民の充足度に基づき計測する方法を提案している. その際, 要素の重みと代替弾力性の推定により充足度の総合化を可能とし, 加えて充足度の変化に伴う重みの補正機能を内包させている点に特徴がある, 本研究ではこの方法を広域交通社会資本の評価に適用し, QOLの with/without 比較に基づく整備効果の計測を試みている.
著者
土井 健司 中西 仁美 杉山 郁夫 柴田 久
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D (ISSN:18806058)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.288-303, 2006 (Released:2006-07-20)
参考文献数
29
被引用文献数
1

都市インフラ整備においては,適切なスコーピングの下で,様々な価値観に照らした総合的な公益性の判断が必要とされる.本研究では,多様な利害グループの共同利益の同時性という視点から,インフラ整備を評価する手法を開発している.これは個人・社会に跨る多元的な共同利益を表わすQoL概念に基づき,主体の価値観の違いに起因した整備効果の違いを可視化することにより,意思決定の透明性と当事者間の公平性の確保を支援するものである.本稿では,2004年に甚大な高潮被害を受けた高松港海岸の整備シナリオの評価に本手法を適用し,グループごとのQoL改善効果の違いを明らかにした上で,安心安全性,経済活動機会,生活文化機会,空間快適性および環境持続性という5つの要素に基づく総合的な公益性に関する分析を行っている.