著者
杉本 佳奈美
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.144, no.2, pp.64-68, 2014 (Released:2014-08-10)
参考文献数
23

高コレステロール血症治療薬である胆汁酸吸着剤は,市販後調査データあるいは臨床試験で2 型糖尿病患者の高血糖改善や体重低下の成績が得られてきており,その新規薬効に注目が集まっている.作用機序については様々な説が提唱されているものの,十分に解明されていない.今回我々は高脂血症およびインスリン抵抗性を呈する高脂肪食負荷apoE3-Leiden transgenic マウスを用いて,胆汁酸吸着剤コレスチランのインスリン感受性増強作用・体重低下作用およびその作用機序について検討した.コレスチランの8 週間混餌投与により体重,脂肪組織重量,血中コレステロールが低下し,肝脂質合成および糞中への脂質排泄が増加した.一方糖代謝に対して,コレスチランは血中グルコースおよびインスリンを低下させ,クランプ試験において末梢のインスリン感受性を増大させた.標識脂肪酸のinfusion 試験によりコレスチランは胆汁中への脂肪酸由来コレステロールおよびリン脂質の排泄を増加させることが見出された.以上の結果から,コレスチランは糞中への胆汁酸,コレステロール,リン脂質の排泄により,肝臓での脂質合成を増加させ脂肪組織の脂肪酸を動員させることにより,内臓肥満の改善および末梢インスリン感受性を増加させることが示唆された.胆汁酸吸着剤は,肥満,インスリン抵抗性および2 型糖尿病の新たな治療薬となる可能性が考えられる.すでに市販されている薬剤の臨床データから得られた新規知見を活用して新たな薬効・作用機序を見出していくことは,新規創薬ターゲット発掘において有用な研究戦略の一つとなりうると考えられる.
著者
井上 絵里香 大窪 綾 杉本 佳奈美 佐野 友恵 益田 理奈 喜多野 宣子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.18, pp.170, 2006

<BR>【目的】近年、社会・経済構造の変化により、家庭における食生活は急速に変化している。その変化の中で、家庭や地域独特の行事食が衰退の一途をたどる懸念がされている。行事食の中でも行事菓子の伝承実態について全国調査されたものは極めて少ないことから、今後の食文化伝承を教育目標とする食育における行事菓子の位置づけや方向を考えるための基礎データを得る目的で、全国の行事菓子の認知度や実施度について調査を行うことにした。<BR>【方法】11都道府県の大学、短期大学、専門学校の学生1309名を対象とし、行事菓子についての認知度や実施度に関するアンケート調査を行った。調査時期は2005年7月、配布、回収は各学校を通して行った。回収率は90.4%、1165名を有効データとした。なお、検定方法はΧ<SUP>2</SUP>検定を用いた。<BR>【結果および考察】アンケートの結果、認知度が高い行事菓子は、実施度も高い傾向となった。しかし、認知度は高いが実施度が低い行事菓子については、衰退が懸念された。 また、全体的に実施度が高い行事菓子は、クリスマスケーキ、バレンタインチョコ、節分豆などの行事自体にイベント性が高いものや、千歳飴や雛あられ、柏餅など、子供に関係のある行事菓子であった。よって、子供のころから慣れ親しんだ行事菓子は、大人になっても継続して食されるのではないかと考えた。今後、学校給食や食育の授業などを通して、幼少期から行事菓子に慣れ親しむ機会を増やすだけでなく、伝承する立場の親世代についても、行事菓子について理解を深め、体験できる機会を提供する必要性があると考えられた。