- 著者
-
杉浦 浩子
- 出版者
- 岐阜大学
- 雑誌
- 若手研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2001
1.精神障害者の「生きる能力」を構造化構造化を試みるために,精神科デイケア利用者に面接調査を行った。調査内容は勝田モデルの枠組みに従い,(1)生産の技術に関する能力(2)人間の諸関係を統制したり調整したり変革したりする能力(3)自然と社会についての認識の能力(4)世界の状況に感応し表現する能力を調査した。デイケア利用者では,(2)の能力不足を感じる人が多く,この能力の向上が社会復帰意識を高めると考えられた。2.一般の人々の精神障害者の「生きる能力」評価一般の人々が精神障害者の「生きる能力」をどのように評価しているかを明らかにするため,4つの能力を細分化し,質問紙を作成した。一作成した質問紙を用い,M大学1年生138名と中高年層94名に調査を実施した。(1)精神障害者の「生きる能力の評価」:全体で評価の低かった能力は,人間関係の能力の中の「協調性がある」「リーダーシップがとれる」「トラブル時の対応」であった。また,生産技術の能力の中の「新たな技能や資格の習得」「長時間の勤務」も低かった。逆に高かったのは,表現する能力の中の「芸術への関心」「芸術的表現」であった。中高年層と大学生を比較すると,中高年層の評価の方が有意に低かったのは,認識の能力の中の「学力」「知能」,生産の技術の中の「家事労働」であった。学生の評価の方が有意に低い項目はなく,中高年層の方が偏見が強いことが明らかとなった。(2)精神障害者との社会的距離と「生きる能力」の関連:「生きる能力」の評価の低い人は,社会的距離の多くの項目で「受け入れにくい」と答えていた。また,人間関係の能力の評価の低い人は,社会的距離の友人・職場で「受け入れにくい」と答えた人が多く,社会的距離での受け入れと「生きる能力」の評価には,関連性がみられた。