著者
杉田 麟也
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.23-35, 2010 (Released:2010-09-01)
参考文献数
10
被引用文献数
3

上咽頭炎は多彩な症状を呈するが診断が難かしい. 従来は上咽頭に触った時の痛みの有無, 出血の有無で診断した. 著者は最初に耳下頸部を触診し圧痛及び硬結感の有無で病変の有無を推測し内視鏡検査, 接触痛, 接触出血の有無により上咽頭炎を診断する事を提案した. 治療は1%塩化亜鉛溶液塗布, ベタメタゾン1.5mg (分2) 4日間が種々の症状軽減に有効である. 咽頭痛が主訴の患者の約90%は責任部位が上咽頭であった. 上咽頭炎検出菌は70%が常在細菌であり, 主な検出菌はインフルエンザ菌, カタル球菌であった.
著者
杉田 麟也 山中 昇 工藤 典代 伊藤 理恵 川合 基司 大脇 一郎 浅野 哲 永田 傳
出版者
公益財団法人 日本感染症医薬品協会
雑誌
The Japanese Journal of Antibiotics (ISSN:03682781)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.221-241, 2007-08-25 (Released:2013-05-17)
参考文献数
23

β-ラクタマーゼ阻害剤配合ペニシリン系抗生物質製剤であるクラバモックス®小児用ドライシロップ (クラブラン酸カリウム・アモキシシリン) の市販後における安全性および有効性を検討することを目的に2000年2月から9月にかけて本調査を実施し, 127施設の医療機関から470例の調査票を収集し, 安全性解析対象症例455例, 有効性解析対象症例433例について検討を行った。有効性に関しては, 小児中耳炎に対する有効率は95.2% (412/433例), 主要症状である耳痛, 耳漏, 鼓膜発赤および発熱の改善率もすべて95%以上であった。また, 急性中耳炎の3大原因菌であるStreptococcus pneumoniae, Haemophilus influenzae およびMoraxella catarrhalisに対する原因菌別有効率は94.0~100%であり, S. pneumoniaeではペニシリン耐性肺炎球菌 (PRSP), ペニシリン中等度耐性肺炎球菌 (PISP) に対しても95%以上の有効率であった。安全性に関しては, 副作用発現率は23.3% (100/455例) で, そのうち, 最も多い副作用は下痢22.0% (103/455例) であったが, 一般的に低年齢児への抗菌薬投与時にみられる下痢であった。発現した下痢のほとんどが非重篤な下痢であり, 本剤投与継続中または投与終了・中止により回復または軽快し, 脱水症状を伴う下痢, 偽膜性大腸炎などの臨床上問題となるような重篤な下痢は1例も認められなかった。
著者
杉田 麟也
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.76, no.4, pp.432-440, 1973
被引用文献数
1

1. 目的:小脳疾患においては,いわゆる小脳症状が病巣と同側にあらわれ,しかも症状が著明であるために,診断はさほど困難ではないとも一般にいわれている.<br>このたび,われわれは,小脳症状は企図振戦以外には著明なものがなく,反対に神経耳科学的に興味ある小脳半球腫瘍を経験したので報告する.<br>2. 症例:K.S,23♂,:右利き<br>主訴:歩行障害,右耳鳴(ガーン)<br>現病歴:約5ヵ月前,全身倦怠感,38.5°C発熱.数日後より運動の後や,頭部前後屈時に右後頭部より項部の拍動性の痛みを覚え徐々に増強.3ヵ月前,海水浴後,3~4目間右耳鳴.約1.5ヵ月前,食思減退し,嘔気,嘔吐が発現,夕食後時に多い傾向.約20日前より歩行障害が発現.階段下降時着しく,ある時には転落.また右手がふるえ,箸を持てない,歩行時右足のスリッパが脱げる.2週前,舌を主とした雷語障害に気付く.<br>検査結果:右上肢企図振戦著明,V,VII脳神経症状,脳脊髄液;初圧140mmH<sub>2</sub>O,蛋白90mg/dl,Pa-ndy陽性,自発並びに注視眼振は,単に麻痺性というよりはdysmetricな水平性眼振,上方,下方,左方注視でいずれも水平性眼振,頭位検査で方向交代上向性,一部固定性眼振.頭位変換検査ではStenger法で下眼瞼向き垂直性眼振.視標追跡検査では追跡運動がsaccadic pursuit.視運動性眼振はfusion limitが著しく障害され,視運動性後眼振は左向きによく解発され,しかも時々firingしている.温度刺激眼振反応では右側外側半規管機能がやや低下.椎骨動脈写:脳底動脈はunrcllingし後下小脳動脈にごく軽慶のforaminal sign.<br>3. 考察<br>1) 小脳症状は企図振戦以外著明でなかった.すなわち小脳半球障害でも肝臓障害に似て無症状なことが少なくない.<br>2) 脳圧亢進がみられない.小脳半球の実質性腫瘍は一般に脳室を圧迫して早期から脳圧は上昇するというのが常識であるが,腫瘍の性質や部位,あるいは患者の年令によつては脳圧亢進をきたさないことが珍しくない.<br>3) 注視眼振がpareticプラスdysmetricで,小脳障害には特徴的なものであつた.これは眼筋の共同運動失調,あるいは眼筋自体の企図振戦と考えられる.<br>4) 視運動性眼振解発不良にもかかわらず,視運動性後眼振は非腫瘍存在測が優性なのに加わえてfiringを示し,前庭系に対する小脳の抑制の脱落現象を思わす所見がみられた.<br>5) 眼振はすべて非腫瘍存在側に向う傾向があり,破壊性病変においては,この考え方は正しいのではないかと思われる.