著者
飯島 孝四郎 伊藤 理恵
出版者
金原出版
巻号頁・発行日
pp.123-126, 2021-01-01

35歳,男性。8月下旬,栃木県の湿地滞にてヤマビルに両下腿を吸血された。その12日後より,前腕,背部,大腿部に多形紅斑が出現した。発熱などの全身症状は伴わなかった。ステロイド軟膏を外用し,消退した。ヒル咬傷自体は一般的な吸血害虫被害であるが,咬傷部位は容易に治癒し,その合併症もほとんどないことから医療機関を受診することは少ない。本邦においてヒル咬傷による多形紅斑を生じた症例は自験例のみであり,非常にまれな症例と思われた。しかし,昨今の地球温暖化や各地で頻発する水害によりヒル生息域の拡大が懸念されており,今後,多形紅斑以外にも多彩な皮膚症状を呈するヒル咬傷の症例が増加する恐れもある。
著者
横井 悠加 伊藤 理恵 森 明子 森下 勝行
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.46, pp.H2-19_2-H2-19_2, 2019

<p>【はじめに、目的】</p><p>腹直筋離開(diastasis rectus abdominis:以下DRA)は,左右の腹直筋間に位置する白線の離開とともに,白線の機能障害を呈するものと定義されている(Venes et al., 2005).白線が位置する腹壁の障害は,その協調的作用から,骨盤底機能障害や腰部骨盤帯痛を引き起こすと予測されるが,本研究者らが実施したシステマティックレビューではその関連性を否定する結果が示された(横井ら,2017).この結果の要因として,各先行研究におけるDRAの定義に相異があること,またDRA評価時に腹直筋間距離(inter-rectus distance:以下IRD)のみで判断しており,白線の重要な機能である白線の組織硬度を評価していないことが考えられた.そこで本研究では,DRAを呈する女性のIRDと白線の組織硬度を測定し,それらと骨盤底機能障害との関連性を明らかにすることを目的とした.</p><p>【方法】</p><p>対象は,2017年1月から2017年12月までに出産した産後女性16名(年齢33.1±5.0歳,身長159.1±5.4cm,体重51.6±5.8kg,BMI 20.5±2.5kg/m<sup>2</sup>)である.研究デザインは横断研究を採用し,DRAの評価指標として,超音波診断装置によるIRD(臍部上1cmごとに10cmまで10箇所と,臍部下1cmごとに5cmまで5箇所の計15箇所)と,組織硬度計による白線の組織硬度(IRD測定箇所と同様)を計測した.いずれかの計測箇所にてIRDが25mm以上,または白線の組織硬度が150N/m以下であった場合をDRAと判断した.また,骨盤底筋の機能評価として,超音波診断装置での経腹法による膀胱底部挙上距離を計測し,骨盤底機能障害には,International Consultation on Incontinence Questionnaire-Short Form(以下ICIQ-SF)を用いて尿失禁を評価した.統計解析は,2標本<i>t</i>検定を用い,有意水準は5%とした.</p><p>【結果】</p><p>IRDによる評価では,DRA+群が8名,DRA―群が8名となり,白線の組織硬度による評価では,DRA+群が6名,DRA―群が10名となった.IRD,または白線の組織硬度を基準にした場合,どちらにおいてもDRAの有無による膀胱底部挙上距離(IRD: DRA+群; 1.8±3.2mm, DRA―群; 3.2±5.1mm,<i>p</i>=0.52, 95%IC=-5.95, 3.15, 白線の組織硬度: DRA+群; 3.3±5.2mm, DRA―群; 2.0±3.7mm,<i>p</i>=0.548, 95%IC=-3.36, 6.07)とICIQ-SF(IRD: DRA+群; 3.1±4.9点, DRA―群; 0.4±1.1点,<i>p</i>=0.158, 95%IC=-1.33, 6.83, 白線の組織硬度: DRA+群; 1.8±3.2mm, DRA―群; 3.2±5.1mm,<i>p</i>=0.947, 95%IC=-4.35, 4.08)の結果に有意差を認めなかった.</p><p>【結論(考察も含む)】</p><p>本研究では,DRAの新たな評価指標として白線の組織硬度を計測し,また先行研究よりもIRDの計測箇所を増やすことで,包括的なDRAの評価を試みたが,本結果より,どちらの評価指標を用いても骨盤底機能との関係において否定的な結果が示された.このことから,DRAによるIRDの増加と白線の組織硬度低下は骨盤底機能に影響を及ぼさないことが示唆された.しかし,本研究におけるサンプルサイズは再考の余地があり,今後更なる研究の継続が重要と考える.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究は,城西国際大学倫理委員会の承認を得た上で,対象者には口頭および書面にて説明を行い,同意を得た後に実施している.</p>
著者
杉田 麟也 山中 昇 工藤 典代 伊藤 理恵 川合 基司 大脇 一郎 浅野 哲 永田 傳
出版者
公益財団法人 日本感染症医薬品協会
雑誌
The Japanese Journal of Antibiotics (ISSN:03682781)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.221-241, 2007-08-25 (Released:2013-05-17)
参考文献数
23

β-ラクタマーゼ阻害剤配合ペニシリン系抗生物質製剤であるクラバモックス®小児用ドライシロップ (クラブラン酸カリウム・アモキシシリン) の市販後における安全性および有効性を検討することを目的に2000年2月から9月にかけて本調査を実施し, 127施設の医療機関から470例の調査票を収集し, 安全性解析対象症例455例, 有効性解析対象症例433例について検討を行った。有効性に関しては, 小児中耳炎に対する有効率は95.2% (412/433例), 主要症状である耳痛, 耳漏, 鼓膜発赤および発熱の改善率もすべて95%以上であった。また, 急性中耳炎の3大原因菌であるStreptococcus pneumoniae, Haemophilus influenzae およびMoraxella catarrhalisに対する原因菌別有効率は94.0~100%であり, S. pneumoniaeではペニシリン耐性肺炎球菌 (PRSP), ペニシリン中等度耐性肺炎球菌 (PISP) に対しても95%以上の有効率であった。安全性に関しては, 副作用発現率は23.3% (100/455例) で, そのうち, 最も多い副作用は下痢22.0% (103/455例) であったが, 一般的に低年齢児への抗菌薬投与時にみられる下痢であった。発現した下痢のほとんどが非重篤な下痢であり, 本剤投与継続中または投与終了・中止により回復または軽快し, 脱水症状を伴う下痢, 偽膜性大腸炎などの臨床上問題となるような重篤な下痢は1例も認められなかった。