著者
李 兆華 傅 学保 折橋 伸哉 藤本 隆宏
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.171-208, 2006-03-25 (Released:2018-03-11)

台湾の自動車産業は、完成車の対中国輸出などが制限される、国内市場が小さい、国内での競争が厳しくシェア変動が大きい、1社当たりの生産量が少ないなど、厳しい制約条件の中での操業を強いられてきた。ところが、その台湾の生産拠点で、非常に高度なものづくり能力の構築が観察されている。例えばトヨタ系の国瑞汽車は、数あるトヨタの海外生産拠点の中においても、トヨタ方式(TPS)が最もよく浸透し、ものづくり能力や改善能力のみならず、進化能力(能力構築能力)が高いことで知られている。しかしながら、台湾拠点の売上高は欧米など海外の主要生産拠点に比べれば小さく、その意味ではトヨタ全体にとって戦略的に最重要な海外拠点とは言い難い。とすれば、同社のグローバル戦略の中では比較的目立たない存在であったこの台湾企業が、創業から20年で、ここまでの能力構築を行うことができた理由と経緯は何か。日本からのトヨタシステムの導入のみならず、同社の進化能力を示唆する国瑞汽車オリジナルの工夫について紹介し、今後の課題についても言及する。