著者
岩尾 俊兵 前川 諒樹
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
vol.15, no.6, pp.341-350, 2016-06-25 (Released:2017-02-25)
参考文献数
25

Thompson (1965) は、既存の官僚制組織が仕事を細分化・専門化させることで企業の生産性を向上させると同時に、仕事の過度な細分化を生じさせイノベーションを阻害する可能性があると指摘した論文である。しかしながら、Thompsonの議論は官僚制組織 (官僚的な組織) と創造性を単なる対立関係にあると想定したものではなく、官僚制組織にいくらかの修正を加えることで生産性と創造性が両立できるのではないかと論じている。たとえば、この論文では、官僚制組織において創造性を担保する役割がプロフェッショナルに求められており、イノベーティブな活動に従事するそのようなプロフェッショナルを処遇するには単線評価でなく総合評価がよく、仕事自体の面白さによって内発的動機づけが行われる必要があるという。
著者
大木 清弘
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
vol.15, no.10, pp.509-522, 2016-10-25 (Released:2017-02-25)
参考文献数
18

本稿は経営学分野の学術論文における「筋が悪い」リサーチクエスチョンを説明したものである。まず、学術的ではないビジネスレポート的リサーチクエスチョンを取り上げる。次に、学術的だが筋の悪いリサーチクエスチョンとして、(1)「無知」によるリサーチクエスチョン、(2)「無謀」なリサーチクエスチョン、(3)「無理矢理」なリサーチクエスチョンをとりあげる。その上で、「筋が悪い」リサーチクエスチョンに陥らないために考慮すべきことを議論する。
著者
高橋 伸夫
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
pp.0200515a, (Released:2020-05-30)
参考文献数
92

1990年代以降、日本でも経営・組織のシミュレーション研究が行われるようになってきた。本稿は、研究者間の関係も重ね合わせて、1990年代以降の日本の経営・組織のシミュレーション研究をレビューする。世界の研究の潮流は、シミュレーションの結果だけを、多くはメタファーとして引用するというものである。しかし、日本の一連の研究は、それとは異なる次のようなユニークな研究群である:(1) 既存モデルを批判的に検証した上で、(2) 自分でもシミュレーションを実施し、(3) シミュレーションの結果が実際に存在するのか現実の調査データで検証する。こうした研究がシミュレーション研究の可能性を切り開く。

11 0 0 0 OA 経営史と社史

著者
粕谷 誠
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
vol.15, no.6, pp.331-340, 2016-06-25 (Released:2017-02-25)
参考文献数
21

日本の社史は、社内に社史編纂委員会・社史編纂室が設けられ、社内で執筆され、著者が明示されず、会社が刊行するが、出版はされない、という例が多い。社外の専門家が執筆する場合も、奥付に名前が出ることは珍しい。ただし正史の社史の他に、普及版が刊行される場合は、著者名が奥付に明記されることが多い。これに対し、欧米の社史は、外部の専門家が執筆し、著者名が明記され、出版社から出版されるのが一般的である。ただし会社で原稿をチェックし、会社が意見を付けられるようになっている。さらに山一証券100 年史の事例にもとづき、社史がどのように刊行されるかを述べる。
著者
會澤 綾子
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
pp.0190925a, (Released:2019-10-18)
参考文献数
51

Ashforth and Anand (2003) は、組織の中で複数人によって行われるグループレベルの集合的不正行為 (collective corruption) に着目し、その発生メカニズムについてフレームワークを提言した。そして、組織内で複数人によって不正行為が行われ継続していくことを「不正行為が常態化する (normalized)」と表している。常態化するまでの要因は、(1) 制度化、(2) 合理化、(3) 社会化の三つに分けられる。リーダーシップにより始まった不正行為は組織内で埋め込まれルーティン化することで制度化されていく。そしてその行為は合理化されることで関わる人々の概念を再構成していく。本来であれば誤りに気付くはずの新規加入者も、不正行為を行う組織に取り込まれ社会化されていくため、常態化した不正行為を止めることは非常に難しい。Ashforth and Anand (2003) の提言は、企業における不正行為が組織ゆえに発生し、かつ継続してしまうということを改めて認識することになるだろう。
著者
高橋 伸夫
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.9-40, 2004-01-25 (Released:2018-03-18)
参考文献数
18
被引用文献数
1

経営分野の若手研究者・大学院生を念頭に、英文論文を執筆するというプロセスを通して、研究の進め方、論文の書き方、さらには学界事情など、研究者の世界について解説する。
著者
牧野 司
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.161-165, 2017-06-25 (Released:2017-06-25)
参考文献数
3

人工知能、生命工学、製造技術などのテクノロジが、現在の延長線上では考えられないようなスピードで進化を始める時点を「技術的特異点 (テクノロジカル・シンギュラリティ) と呼ぶ。シンギュラリティに到達すると、あらゆる社会生活およびビジネスに大きな変化が生じると考えられている。「人工知能が人類を滅ぼしてしまうのではないか」という懸念がある一方、「幾何級数的に進化するテクノロジにより、世界の抱えている課題はそのほとんどが解決可能である」という明るい未来予測もある。「テクノロジカル・シンギュラリティ」という言葉を初めて提唱した未来学者レイ・カーツワイル氏は後者の考えで、カリフォルニアのシリコンバレーに「シンギュラリティ大学」を創設した。世界中から優秀な頭脳を集めて世界の問題解決に挑むと同時に「エグゼクティブ・プログラム」などを通じてその考えを全世界に広めようとしている。本講演では、講師が本年7月に米国シンギュラリティ大学・エグゼクティブ・プログラムで学んできた内容をベースに未来はどうなるのか、私たちは何をすべきか等について述べていく。
著者
柴田 友厚 児玉 充 鈴木 潤
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.1-22, 2017-02-15 (Released:2017-02-25)
参考文献数
27

探索と活用という目的と性質が違う二種類の活動を、企業内で分離させながらも共存させる二刀流組織の考え方が提示されてきた。しかし、企業内の探索と活用の関係性は状況に応じて異なるにもかかわらず、先行研究はその違いを考慮していないために有効性と妥当性に限界がある。本稿は、探索製品と主力製品の製品代替性に注目して、二刀流組織を共食い型と補完型の二つに類型化し、各々経営課題と有効なマネジメントが異なることを議論する。そして富士フイルムの詳細な事例分析から、デジタル化の波を生き延びた要因の一つは、状況適合的な二刀流組織のマネジメントを行った点にあることを主張する。
著者
秋池 篤 吉岡 (小林) 徹
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
pp.0171112a, (Released:2018-07-24)
参考文献数
82

本稿は富士フイルムのFinePix700の事例をもとに、技術変化と既存のデザインの踏襲の関係性について探求し、大きな技術変化はときに優位性のある既存デザインの実現を困難にする場合があることを確認した上で、そのような場合にデザインと技術を高いレベルで達成するためのマネジメント方法について分析を行った。その結果、新奇性は高いものの、技術的な合理性に基づいたデザインを活用することで、技術とデザインの両立を達成し、競争力のある製品を生み出すことができたことを指摘した。これは、技術とデザインの関係性について、消費者行動論のみならず技術経営論の視点から両者を捉える必要性を示す点で大きな貢献を有する。
著者
岸本 千佳司
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
pp.0180920a, (Released:2019-04-16)
参考文献数
75

本研究は、サービスロボット・メーカー、テムザック (tmsuk) 社の事例研究である。同社は中小企業でありながら、オープンイノベーション活用を通して大企業を超える製品開発力を発揮し、同業界の先駆者のひとつとなっている。同社は、高度なメカトロニクス技術を土台とするインテグレーション (統合化) と実用化 (製品化) の能力を武器に、大学研究者を中心とする多数のパートナーを引き寄せ大規模なイノベーション・ネットワークを形成している。それに惹かれ大企業や公的機関も含む多数の顧客・ユーザーからも製品開発依頼が寄せられている。中小企業の制約を外部パートナーの活用で補い、大学のシーズと現場のニーズが出会う場となることで、多種多様なロボットの開発を実施しているのである。人材育成でも、一見粗放的な (しかし、実は理にかなった) 方法で、ロボット全体の構想力を持ち多様な専門分野に跨るロボット開発プロジェクトを管理できる「プロデューサー」的人材の成長を促していることが明らかにされる。
著者
大槻 智洋
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.205-210, 2017-08-25 (Released:2017-08-25)

シャープがついにフォックスコン (Foxconn、鴻海) 社から巨額投資を受けることになった。飲み込まれる恐怖は尽きないが、フォックスコン社にも投資をしなければならない理由がある。互いの背景を知り、未来志向で手を取り合えば、両社は民生機器産業に新たな成長モデルを提示できるはずである。カリスマCEO の郭台銘氏の背景を推察する。さらにEMS/ODM 企業のビジネスモデルや、それを支える台湾の社会情勢、あるべき民生企業の経営方針にも言及する。
著者
柴田 友厚
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
vol.13, no.12, pp.477-498, 2014-12-25 (Released:2015-12-26)
参考文献数
22

本稿は、日産CMF 開発過程の事例分析を通して、モジュール化研究で残されてきた課題であるデザイン・ルールの策定過程を明らかにする。新たな三つの知見を導出した。第一に、最初にデザイン・ルールを明確に策定し、その後初めて製品設計を始めるという順番を厳守すること、第二にデザイン・ルールの是非は、設計能力だけではなくて市場要件など前提条件の解決度合いの影響を大きく受けること、第三にそれゆえにデザイン・ルールの策定は戦略的な課題であり、技術者のみならずシニアマネージャーの関与が必要だということである。これらの点で、モジュール化の製品開発プロセスは従来の製品開発プロセスとは異なる。
著者
藤本 隆宏
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
pp.0190416a, (Released:2019-08-08)
参考文献数
42

本稿では、工場、開発拠点、店舗、サービス拠点など、付加価値が流れる場所及びその組織を広義のものづくり現場 (以下「現場」) と規定し、ひとつの現場、たとえばある地域に立地した工場の生成・発展・持続・衰退・消滅などの動態を長期的に分析する「現場史」の可能性を探索的に論じる。まず歴史的分析としての現場史の特徴 (空間的・時間的限定性、多面性、創発性、学際性) を指摘し、それが、必ずしも産業史や企業史 (特に大企業の社史) には還元できない独自の学術的価値を持つ可能性を指摘する。次に、地域に根差す社会的存在でもある現場が、資本主義的な利益最大化企業とは異なる目的関数系を持つ経済主体である可能性を論じ、特に冷戦後のグローバル競争時代において、高賃金先進国である日本の貿易財系の生産子会社や中小企業の多くが、「現場指向企業」として、現場自体の存続と雇用維持を目的とした生産性向上や需要創造の継続的努力を行ってきた歴史的事実を確認する。これは、この時期に一部の大企業が低賃金国への生産シフトを加速化しようとしたのとは対照的な産業行動であった。それを踏まえ、新興国との極端な国際賃金差が存在したポスト冷戦期が終わりつつある2010年代に、冷戦終結後の日本の国内現場あるいは「現場指向企業」を対象とした「現場史」を研究することの意義を強調する。また、現場史の前提となる「現場」の多面性、主体性、能力構築努力、需要開拓努力など、現場の諸特性を論じ、最後に、ポスト冷戦期を含む現場指向企業に関する具体的な略史の事例をいくつか手短かに紹介する。
著者
佐藤 千洋
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
pp.0170607a, (Released:2018-06-11)
参考文献数
29

業績不振に陥っている電機産業とは対照的に、電子部品産業は好調な業績を維持している。しかし、電子部品産業の収益性は企業によって大きく異なり、専業メーカーと総合メーカーを比較した場合、専業メーカーのほうが高い傾向にある。総合のシナジー効果を持つ総合メーカーに対して、なぜ、専業メーカーは競争優位性を築くことができるのか。本稿ではこの疑問に対して、専業メーカーのアーキテクチャ戦略と製品開発体制との適合関係について検討した。そして、イリソ電子の事例分析から、専業メーカーの競争力や高い収益性は、必ずしも一つのアーキテクチャ戦略にもたらされているわけではなく、複数のアーキテクチャの位置取り戦略を持ちながら、それらの位置取りに適合した製品開発組織・プロセスが構築されていることが示された。