著者
村上 典子 小笹 裕美子 村松 知子
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.46, no.7, pp.655-660, 2006-07-01
参考文献数
4
被引用文献数
2

当院心療内科は,1995年1月の阪神淡路大震災・被災地での心身医学的ケアを目的に,1996年に開設された.また,震災から約10年後の2004年10月の新潟県中越地震では,心療内科スタッフは日本赤十字社の災害救護の一員として,全員被災地に赴いた.その際,感冒,高血圧,不眠・不安,便秘など,被災というストレスフルな背景に配慮した心身医学的ケアが必要とされた.震災10年後の心療内科受診患者を対象としたアンケート調査では,39%が「震災と今の自分の病気は関係がある」と考えており,特に,転居,失職(転職),家族構成の変化など震災後生活変化の大きかった者に限ると,その割合は68%にも達した.災害においては,急性期から復興期にれたり,身体的,精神的,社会的,スピリチュアルな全人的ケアが必要とされ,今後の心身症を防ぐためにも,長期的視野に立った心身医学的介入が災害直後の急性期から必要と考える.
著者
村上 典子
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.227-233, 2017 (Released:2017-03-01)
参考文献数
15
被引用文献数
2

大災害においては, 災害そのものによるトラウマティック・ストレス, 災害による喪失体験による悲嘆反応, その後の生活環境の変化に伴うストレスなど, さまざまな要素がからみあい, 心身症が発症したり, さまざまな身体症状が現れると考えられる. 急性期には心身医学的視点をもちながら身体症状・身体疾患中心のケアを行い, 心のケアのニーズが顕在化する慢性期には身体医療から入り心のケアもともに行い, 復興期には長期にわたるストレスや喪失悲嘆が身体症状化した被災者へのケアを行うなど, 災害のあらゆるフェイズにおいて 「心身医学的支援」 のニーズは高い. 来たるべき災害に備えて, われわれ心身医学専門家にも準備が必要である.